【 2010年 第 6 回 】フランスの教育システム フランス気分
横川 由里(ヨコカワ ユリ)⇒プロフィール
大きな違いは留年制度
基本的に日本でもフランスでも学校システム(たとえば、何歳で幼稚園、次が小学校など)に大きな違いはありせん。しかし、内容や教育費が大きく異なります。大学は公立しかないため、学校教育費は教科書代のみです。
1番大きな違いは留年制度。日本の義務教育において、病気で長期欠席などよっぽどの理由がないと留年することはありません。
しかし、フランスでは成績の悪い生徒は上に進むことができません。
毎年6月に次年度の選抜試験があり、成績が悪ければ留年。逆に成績がよければ飛び級をすることができます。
たとえ、小学校1年生であっても例外ではありません。友人の娘さんのクラスは7歳の初級科のクラスを留年するように、言い渡された生徒が学年の5分の1もいたそうです。100人いたら、20人!
成績は絶対評価ですから、ある一定の水準に達していないと留年します。
10歳児のクラスで、12歳の子どもが一緒に勉強していることも珍しくはないのです。
弊害として、留年することに対して、恥ずかしいという気持ちが希薄になってきています。
統一国家試験バカロレア
留年しながら無事に進級していったとしても、また大きな壁が立ちふさがります。
「バカロレア」といって、学生にとって一番の勝負となる試験です。これは日本のセンター試験と似ているといわれますが、根本的にまったく違う制度です。
バカロレアは、大学の入学資格を得るための統一国家試験。バカロレアを取得すると、原則として、どの大学にも入学することができます。
有名なソルボンヌ大学だって、フランスにある大学の1つに過ぎなく、バカロレア取得すればソルボンヌ大学であろうが、リヨン大学であろうが、ボルドー大学であろうが、どこにでも入学することができます。
つまり、パリ大学やソルボンヌ大学などはいわゆる名門校ではありません。
フランスでは、いわゆる中間層が大学に進学するのです。
エリートが進むグランゼコール
フランスの上層部を支配しているエリートは、大学の出身者ではなく、バカロレアの取得後に予備コースに2年間通った後“グランゼコール(高等専門教育機関)”に進んだ人たちです。
グランゼコールは200校ほどありますが、いずれも難易度が高いのが特徴です。
大学での教育方針は、学問的な理論が中心となり企業との接点がほとんどありません。
一方、グランゼコールは実務を教える教育機関で、企業の採用先はグランゼコール卒業者に集中しているのが現状です。
グランゼコールの卒業生は、政財官界の要所を占めて、とても強い利益集団を形成しているのが現状です。
フランスの政界は、グランゼコール・国立行政学院(ENA)出身者が主流を占めています。シラク前大統領、ドビルパン前首相、ロワイヤル前大統領候補など国立行政学院の出身です。
革命記念日にシャンゼリゼ通りを行進
国立行政学院の生徒たちの顔は、フランスじゅうに知れ渡ります。
なぜなら、革命記念日である7月14日に行進をするからです。
この日は朝からシャンゼリゼ通りをフランス各地から集まってきたフランス軍が行進。空軍、陸軍、海軍はもちろんのこと山の軍隊(みんな髭を生やして皮のエプロンを付けている)、本当にいろんな部隊があります。
この軍隊行進の1番最後を歩くのがグランゼコール・国立行政学院に新しく進んだフランスの将来を担う子どもたちです。
その誇らしげなことといったら!
このように日本と違ってどの学校で学ぶのかによって、将来の仕事が決まってしまいます。日本のように途中での方向転換や、やり直しのきかない厳しい制度となっているのです。
この記事へのコメントはありません。