【2011年 第6回】新 商品先物取引のしくみ 投資コラム
三次 理加(ミツギ リカ) ⇒プロフィール
商品先物取引の仕組み(2)
前回は、商品先物取引の仕組み(1)として、上場商品、限月、立会・売買仕法について説明しました。
今回は、取引単位、値段の表示単位、値動きと損益など、実際に売買をする際に必要となる基礎知識について説明しましょう。
○取引単位
株式の場合、売買数量の単位は「株」です。たとえば、「NTTドコモを1株買い」「日立製作所を1,000株売り」というように数えます。また、一般的な 株式取引では最低売買単位が決められています。たとえばNTT ドコモは1株単位、日立製作所であれば1,000株単位です。そのため、NTTドコモを0.5株だけ、日立製作所を100株だけ売買するということは、原 則としてできません。
一方、商品先物の場合、売買数量の単位は「枚」です。たとえば、「金を5枚買い」「大豆を10枚売り」というように数えます。また、商品先物取引の最低 売買単位は1枚、「枚」単位の取引です。そのため、東京金を0.5枚、東京一般大豆を0.5枚だけ売買するということはできません。
ただし、枚の中身(数量並びに数量の単位)は商品により異なります。たとえば、金1枚は1,000グラム、東京一般大豆1枚は10トンです。
ちなみに、この「枚」という数え方は、商品を保管する倉庫に由来します。たとえば大豆を買ったまま納会日(=最終取引日)を迎えた場合、ある日突然、自宅に大量の大豆が配達されてきた、などということになったら大変!
実際には、買った大豆は倉庫会社の倉庫に保管してあります。そのため、自宅に直接、大豆が届くということはありません。その代わりに、納会日の後にくる受 渡日に、買った人の手元に「○○倉庫に大豆10トンを保管しています」という証書が届きます(注1)。この証書のことを「倉荷証券」といいます。倉荷証券 を1枚、2枚と数えることから、商品先物取引では売買単位を「枚」と数えるようになったそうです。
注1 受渡方法は商品により異なる。倉荷証券による授受のほか、受渡期間内に取引所が認めた方法により商品を引き渡す方法がある。
○値段の表示単位
ニュースや新聞で報道される株価は、NTTドコモは146,700円、日立製作所は452円というように1株あたりの値段が表示されます。
しかし、商品先物取引の場合は、1枚あたりの値段表示ではありません。前述したように、商品によって1枚あたりの数量、数量の単位が異なるからです。同 じ1枚でも、たとえば金は1,000グラム、東京一般大豆は10トンです。これらを1枚あたりの価格で表示しようとすると、数十万から数百万円と大きな金 額になってしまいます。そこで、わかりやすくするために、1枚あたりの金額ではなく、数量の単位ごとの値段表示となっています。
たとえば、1枚1,000グラムの金は1グラムあたり、1枚10トンの大豆は1トンあたりの値段が表示されます。この値段を表示する単位のことを「呼値(よびね)」といいます。
また、株式の場合、たとえばNTTドコモは1株あたり100円刻み、日立製作所は1株あたり1円刻みで価格が変動します。つまり、銘柄により値動きの単位 が異なります。商品先物取引の場合も同様です。たとえば金は1円刻み、ゴムは10銭刻みと、商品により値動きの単位が異なります。この値動きの刻みを「呼 値の単位」といいます。(図1)
○値動きと損益
株の場合、総取引金額の計算方法は「1株あたりの値段×最低売買単位×セット数」です。たとえば売買単位が1,000株の日立製作所を1株あたり452円で2,000株買う場合、
452円×1,000株×2=904,000円 が総取引金額となります。
商品先物取引の場合も同様に、表示されている値段に1枚あたりの数量と枚数を乗じれば総取引金額が計算できます。たとえば、東京金をグラムあたり3,950円で1枚買う場合、
3,950円×1,000g×1枚=3,950,000円 が総取引金額となります。
商品先物取引では、この1枚あたりの数量を「倍率」と呼びます。倍率と前述の呼値の単位(=値段の刻み)を覚えておくと、損益を簡単に計算することができます。たとえば東京金の場合、呼値の単位が1円で倍率が1,000倍です。
1円×1,000倍=1,000円
つまり、値段が1円動くと1,000円の損益が発生することになります。
この「±○円の価格変動で±○円の損益」は覚えておくと便利です。(図1)
次回は、商品先物取引を売買する際に必要となる資金について説明します。
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