【2012年 第11回 】 山陰のお仕事事情 ~地域:四国中国
キムラ ミキ
地方の元気がなくなったと言われて久しいですが、ここ山陰も例外ではなく、賑やかだった商店街がいわゆるシャッター街になっているエリアもありますし、企業本体の業績不振のため工場が閉鎖されたエリアもあります。 とはいえ、このところ、新たに大手企業が誘致されたり、賑わいのあるエリアが新しくできたり、と活気のある話題が多いようにも感じられる、ここ山陰。実際のところはどうなのか、お仕事事情を考えてみましょう。
山陰の完全失業率
まず、山陰両県の完全失業率と全国平均の完全失業率の推移を比較してみると、両県ともに全国平均より完全失業率が低いことが分かります。補足をしておきますと、完全失業率の算出に使う完全失業者とは、働く意志はあるけれども就業できない求職者の数をいいます。完全失業者人数と就業者人数の合計が労働力人口で、この労働力人口に対する完全失業者の割合の事を完全失業率と言います。
この完全失業率というデータを考える上で、注意しておかなければならないことが2点あります。1点目は、完全失業者の中に、仕事探しをあきらめてしまった人、そもそも仕事探しをしていない人は含まれていないという事。2点目は、フリーターやパートタイマーも就業者の方に含まれてしまうという事。
この2点を合わせて考えてみると、一般的には景況が悪いとされる地方山陰において完全失業率が全国平均に比べて低いのは、仕事も少なく、いわゆる非正規労働での就労が多いからなのではと仮説が頭に思い浮かびました。しかし、鳥取県の調べによると、パートタイム労働者の比率は5人以上の事業所で約20%。30人以上の事業所で約18%。なお参考として全国調査におけるパートタイム労働者の比率結果も付記されていましたが、5人以上の事業所では約28%、30人以上の事業所で約24%という結果と比較すると、先ほどの仮説は打ち消されることになります。
参考)鳥取県 毎月勤労統計調査 平成23年年報
山陰の産業構造は?
ここで視点を変えて平成22年の国勢調査の結果から、山陰両県の産業構造を見てみますと、全国平均に比べて第一次産業(主に農業)に従事する人の割合が多いことが読み取れました(全国が約4%である一方、山陰は約9%)。また、第一次産業に従事する者の割合は年齢が上がるにつれ大きくなっています。加えて、農業以外を主な仕事とする兼業農家が多いのも山陰の特徴です。ここに山陰の完全失業率が低い要因があるかもしれませんね。
相談のご予約を頂く折にも、春先になりますと、田植えの予定が入ってしまったので相談日の変更をお願いできないでしょうか?という問い合わせを頂くこともしばしば。分かりましたと快諾した後、「あれ?この人サラリーマンだったよね?」と「?」が浮かんだことは、山陰でFP活動をスタートさせて、初めて遭遇した出来事のひとつ。
先ほど、完全失業率のデータをみる際にも注意点として挙げましたが、就業者は完全失業者には含まれません。兼業で農業に従事していて、サラリーマンとしての主な仕事について、失業および退職した場合も農業に継続して従事していた場合も就業者に変わりがありません。つまり、完全失業率の数字上には現れません。
また、平成24年現在、山陰両県における有効求人倍率は全国平均を下回っていることを考えますと、県内での就職にこだわらず県外へ求職のアンテナを伸ばし、県外で就業することを選択しているケースも少なくないでしょう。
山陰の目指す方向性
数字が表わすほど、状況が芳しいとはいえない山陰のお仕事事情。とはいえ、冒頭にお話したように新しい風が少しずつですが吹きこんできている感覚を覚えます。都市部に比べて利便性は劣るかもしれませんが、様々な素晴らしい資源の宝庫である山陰。ぜひ既存の考えにとらわれないで、山陰の目指す方向性を新しい力で創造し、さらなる活気があふれる街になることを期待したいと思います。
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