時代とともに変わりゆく「受験」を考える【2012年 第2回】

【2012年 第2回時代とともに変わりゆく「受験」を考える 地域:東京

岡本 典子 ⇒プロフィール

2月は中学受験、高校受験、大学受験と、人生を左右する大事な受験シーズンです。
一口に受験といっても、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、大学院と、それぞれ様相が異なります。
私立受験が浸透している首都東京でも、幼稚園、小学校受験は少数なので、ここでは、過熱化する中学受験と、秋入学問題が出てきた大学受験を取り上げていきます。

 

2月1日早朝、東京の中学受験生親子は、一斉に受験校へ向かいます!

 少子化、不況で2009年をピークに中学受験者数は減少しています。さらに、震災により帰宅難民と化した私立中学生が出てしまったことから、遠距離通学回避が新たな学校選びの要因になってきました。

首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)における受験者数は、2011年度で45,600人。
私立中学校に通う子どもの割合は全国平均で6.7%ですが、都道府県別に見ると、断トツ1位は東京の25.6%で、2位神奈川の12.35%を大きく引き離しています。(文部科学省「学校基本調査」平成17年度) 

都内の一部では、クラスの半分以上が受験し私立中学に進学するエリアもあります。東京は私立学校の歴史が長く、全国の私立中学700校中179校が東京に集中していることが大きな要因でしょう。

子どもを私立中学に入れるには多額な教育費を払い続ける覚悟が必要です。
多くは4年生から進学塾に通わせ、家族一丸となり、進学塾のスケジュールに合わせて受験生応援生活を送ることになります。中学受験から卒業までの3年間で平均400万円(東京都「平成19年度、都内私立中学校の学費について」)、公立中学校平均134万円(文部科学省)の3倍にも達します。
子どもの長い人生にとっての費用対効果を、どのように考えていけばよいでしょうか。

大学受験、学問のメッカは、やはり東京

日本には大学が700校以上ありますが、そのうち120校ほどが東京に集中しています。
学生数の多いマンモス大学も多く、1~3月は東京に受験生が集まってきます。

大学受験の傾向として、推薦入学が増えてきています。
推薦入学でも受験料は必要。ただし1校分ですみ、直前講習などを受けなくてもいい分だけ費用が安くすみます。

受験の流れの一例としては、センター試験、私立大学を数校・数学部受験し、国公立へ。
受験料を見ると、センター試験(3科目以上受験)18,000円、国公立2次試験17,000円。
センター試験、2次試験の前期・後期を合わせると52,000円かかります。
私立大学の受験料はさまざまですが、平均35,000円。5校(学部)受ければ175,000円。
受験料だけでも相当な金額になります。

東京近郊在住の方は、東京近辺の大学を受験するケースが多く、交通費だけですむので恵まれていますが、地方からの受験生は、宿泊費や交通費もプラスして考えなければなりません。

近年、宿泊施設・試験会場までの送迎・受験日のお弁当の手配・勉強用電気スタンドのレンタルなどが「受験生パック」となったサービスも利用されています。

東京の看板大学といえば、「天下の東大」!

東京大学はいわずと知れた日本一アカデミックな大学。誰しもが憧れる最高峰。
研究費は断トツに多く、研究に明け暮れたい人にも最高の環境です。

1・2年は駒場、3・4年は本郷ですが、今回は本郷3丁目から赤門前を通り過ぎ、正門をくぐって本郷キャンパスを探訪してみます。

自転車が行き交う銀杏並木を進むと、有名な安田講堂。
その地下には中央食堂という学食があります。地下鉄の入口のような階段を降りると渡り廊下があり、その下が大食堂という不思議な空間です。

私は「市民後見人養成講座」で一昨年3月まで1年間、東大本郷キャンパスに何度か通学しました。その時は一般にも開放されているこの中央食堂を利用しました。
メニューは豊富でお手頃価格。土日祝日もランチタイムはオープン。勉学に熱心な学生を応援する支援体制がこんなところにも整っているようで、心配りがされた食事を楽しんでいました。

安田講堂を西に進むと、夏目漱石の『三四郎』の舞台となった三四郎池があり、東大のオアシスといった憩いの場です。さらに進むと、講座でお世話になった医学部総合図書館や医学部研究棟があります。
研究棟の13Fにはイタリアン・レストランがあり、東側の眼下には不忍池が、その先にはスカイツリーがくっきり。贅沢な教育環境です。

東大出身の方に、東京大学コミュニケーションセンターへ案内してもらいました。ここは東大オフィシャルグッズの紹介・販売センター。オフィシャルネクタイやステーショナリーの他、お酒や泡盛もあり、これがまたおいしいそうです。
カデミックな一面が感じられる落ち着いたキャンパスです。

「東大秋入学」は、ライフプラン見直しの好機!

東大は5年後をめどに入学時期を春から秋に全面的に変更する方針を発表し、波紋を呼んでいます。これは、優秀な人材の海外流失を防ぎ、国際競争力向上をめざし学生を海外に送り出すことが目的です。3月受験後の数カ月間を上手く利用し、海外体験をしてもらおう、また、海外の優秀な学生が入学しやすくする方策です。

まさに東大がグローバリゼーション推進の旗振り役を買って出た形ですが、京大、阪大など数校が検討を表明しています。

これは、FP的にも非常に興味のある変革です。
今までは主に受験料や入学金、大学4年間の学費を想定してプランニングしてきましたが、今後は海外留学費用(サマースクールや語学留学など)、子どもの卒業が1年間伸びることも考慮しなければなりません。教育費の家庭負担はさらに増加!

「教育資金の賢い作り方はありますか?」とよく聞かれますが、残念ながら奇策はありません。お子さんがなるべく小さい時から、コツコツと貯めていくことが大切です。

財政破綻の日本はいろいろな制度が変遷していきますので、情報キャッチのアンテナを高く張りめぐらしておきましょう。
「受験」を切り口に、教育資金のみならず、ライフプラン全体の見直しをしてみませんか?

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