親が借金を遺して死亡してしまったら? – 大学生のためのパーソナル・ファイナンス 【2012年 第10回】

【2012年 第10回】親が借金を遺して死亡してしまったら? – 大学生のためのパーソナル・ファイナンス

横川 由理(ヨコカワ ユリ)⇒プロフィール

あまり考えたくはないけれど、順番からいくと親の方が先に死亡します。通常、親の財産は、相続人である子どもが引き継ぐことになります。では、借金はどうなるのでしょうか?

「そんなバカな……」

ご両親が会社員の場合は、借金がたくさんあるというケースはあまり聞きませんが、会社を経営していたり、自営業の場合は、財産よりも借金が多いというケースもあるかもしれません。

債権者:「あなたのお父さんにお金を貸していたので、返してください」
子ども:「え? お金を持っていないのですが……」
債権者:「大丈夫ですよ。就職したら払ってくださいね。待っていますから。でも、利子もかかりますよ」
子ども:「そんなバカな……」

このように思う人がほとんどですよね。

「しかたがない。親の借金は、子どもである私の責任です。今は学生なのでお金がないのですが、将来就職して必ず払っていきます」

と考える人は少数派でしょう。

実は親が借金を残して死亡した場合、子どもはその借金を払っていく必要があるのです。
とはいえ、払いたくなかったら払わなくても大丈夫。
そのためには、一定の手続きが必要となります。

相続とは

親の財産を引き継ぐことを相続といいます。
相続はプラスの財産も、マイナスの財産も両方とも引き継ぎます。
通常、相続人となるのは死亡した人の配偶者と子ども。

もし、親が死亡したあとにプラスの財産よりも、借金の方が多いことわかったら死亡から3ヵ月以内に、相続放棄の手続きを家庭裁判所にて行います。
相続の放棄を行うと、すべての財産を受け取る権利がなくなってしまいます。
そう、借金だけ放棄して、財産は受け取るという都合のよいことはできないので注意が必要です。

3ヵ月以内に何もしないと相続を承認したとみなされて、借金があった場合は返済する義務を負ってしまいます。

一番悩ましいのが、借金が多いのか財産が多いのかがわからないケース。
たとえば、商売を行っているお父さんだとしましょう。
商品を仕入れるときは、買掛金で仕入れているかもしれません。

場合によっては、約束手形があったり、借入金があるケースも多いことでしょう。

お父さんがひとりで経理を行っていたと仮定すると、財産の状況がわかっている人は誰もいません。
たった3ヵ月では財産の方が多いのか、借金の方が多いのかわからないもの。

誰だって財産は受け取りたいけど、借金は払いたくありませんよね。
そんなときは、限定承認を行うという方法があります。

限定承認とは、亡くなった人の財産の範囲内で借金を返済する方法です。
プラスの財産を超えるマイナスの財産については、返済する義務はありません。

たとえば銀行の口座に1,000万円あったとします。
ひとまず限定承認を行っておき、後日借入金が2,000万円だったときは、財産との差額である1,000万円は支払う必要がありません。
一方、借入金が800万だったときには、その差額200万円を受け取ることができます。

限定承認も3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
なお、限定承認は相続人が全員で行わなければなりません。

世の中の仕組みがわからないと、負わなくともよい借金まで負ってしまう可能性があるの。
パーソナル・ファイナンスを学んで、法律や家庭に関わる様々なお金のことを身につけましょう。

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