【2011年 第15回】 エンディングじゃないノートだからこそ、今を大切に⑦~記しておきたい「思い出の『財産』」 “終わり”ではない「エンディングノート」
高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒ プロフィール
財産を、単に“お金に換えられるもの”だけではなく、あなたが持っている“大切なもの”と考えて範囲を広げて整理をしてみることは、自分自身のためにも、大切な人に伝えるためにも役立つのではないでしょうか。
お金に換えられないもの
前回は、エンディングノートを自分の財産情報の整理ツールとして活用する方法をご提案しました。
財産といえば、“お金に換えることのできるもの”を思い浮かべるのが一般的でしょう。
“お金に換えられる”ということは、他の人たちの目を通した価値判断の結果として、「○○円」という数字に置き換えることになります。
でも、自分が持っている財産というのは、すべてがそんな風にお金という他人の価値判断に置き換えて評価できるものではないはず。
そんなある種の「違和感」を身近な場面で感じたことはありませんか。
最近は実店舗でもネット上でも普及してきたリサイクルショップ。衣類などの日用品や本・CDなどを持ち込んだことがある人なら、提示された買い取り価格を見て、多かれ少なかれショックを受けたことがあるでしょう。
リサイクルショップに持ち込むものは、自分にとっては不用(使わない)だけれど、まだゴミとして捨ててしまいたくはない、誰か他の人なら使ってもらえる価値はあるはずだと思っています。
それが、価格を提示されることによって、同じものに対する自分と他人の価値観の差(さらにリサイクルショップの収益も差し引きされますが)があることを思い知らされてガッカリ…ということに。
このガッカリする気持ちの度合いが大きいものほど、あなたにとって「お金」では置き換えられない、置き換えたくない気持ちが強い、つまり愛着があるものだといえるでしょう。
自分が大切にしてきた思いもノートに
いわゆるエンディングノートには、前回ご紹介したような不動産・預貯金・有価証券などの換金できる財産を記す欄はあるはずです。でも、それ以外の“お金に は換えられない財産”、両親や祖父母から受け継いで大切にしているものや、長年自分が大切にしてきた思い出がつまったものなど、ものにまつわるエピソードも添えて記しておくとよいですね。
自分が大切にしているものであっても、そこに付随する「思い」というのは、ノートなどに形にして記しておかなければ、家族などの親しい人であってもなかなか伝わらないことが多いものです。
ただし、“お金には換えられない財産”として、どんなものを記そうか…と考えると案外むずかしいかもしれません。
何でもかんでもノートに書き込んで、「アレもコレも捨てちゃダメ!」というのは、“わがまま”。
自分が大切にしてきたものを、自分の思いも含めてずっと引き継いでもらうためには、受け継いでくれる立場の人たちに対する“思いやり”が不可欠です。大きさや保管にかかる手間などを考えることも必要ですね。
私たちの今の生活は、自分にとって本当に大切なものを探し出すことがむずかしいほど、あふれるほどたくさんのものに囲まれています。
そんな生活を整理ための「人生の棚卸」をしてみると、ノートに書き記したい「思い出の『財産』」が見つかるかもしれません。
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