【2012年 第11回】「最近の労働事情」11月23日は「勤労感謝の日」
浅川 陽子(アサカワ ヨウコ)⇒プロフィール
11月23日は「勤労感謝の日」でもあり、労働事情についてのデータを取り上げてみました。
<日本の失業率>
経済が世界的に低迷する中、失業率の上昇が話題にのぼることも多くなりましたが、先日、公表された日本の9月の失業率は、4.2%でした。失業率の算出法は国によって違いがあるので単純に比較はできないものの、ユーロ加盟国の平均失業率が10%超、アメリカが8%前後であるのに比べると、まだ低い水準にあるといえるかもしれません。
年平均の失業率でみると、2007年以降は、3.8%、3.8%、5.0%、4.9%、4.6%と推移しており、2008年のリーマンショックの影響を受け、2009年には5%に上昇した失業率もその後、下落基調にあります。ちなみに、平成以降、失業率の最高値は平成14年の5.4%でした。
失業率には、地域差があるといわれ、下記の表のとおり、北海道や東北、近畿、九州・沖縄が比較的高いのが特徴になっています。
また、年齢別でみると、若年層の失業率が高く、2011年では、15歳~24歳では8.2%、25~34歳で5.7%、15歳~34歳までの失業者は112万人(年平均失業者全体で284万人)にのぼるといわれています。
<30%を超える非正規比率>
雇用者のうち、パート、アルバイト、契約社員、派遣等の非正規雇用者の比率は2003年に30%を超え、その後比率はじわじわと上昇し、2011年では35.1%にものぼっています。
非正規従業員の内訳でみると、2009年以降、派遣の数は減少傾向にあります。リーマンショック後の景気低迷で「派遣切り」が問題化されましたが、その後も派遣労働については法律改正の動きもあり、派遣労働者の数にも影響がでているといえそうです。今年10月から改正派遣法も施行され、さらに今後の派遣労働に影響がでてくるものと思われます。
非正規雇用者の70%近くは女性です。特にパート・アルバイトの比率が高く、年齢が高くなるほど、非正規比率は高くなっています。
<若年層の雇用問題は将来の大きなツケに>
少子高齢化が進展する日本において、今後の社会保障等を考える上で、大きなネックになるのが、若年層の雇用不安です。バブル崩壊後、景気変動に応じて、企業は非正規労働という形態で、雇用量を調整してきたといえ、その結果、新卒採用の抑制等、その影響をとくに受けやすいのが若年層といえます。
仕事に就けたとしても、パート・アルバイト・契約社員、派遣社員等の非正規雇用者の場合、雇用が不安定で、一般に所得も低く、その結果、結婚できない、また子どもが持てないという問題があります。
結婚生活を送るためには世帯収入として400万円程度が必要といわれています。非正規雇用者でも共働きであれば、400万円を稼ぎ出すのは可能ですが、子どもを出産する際には、妻が働けなくなり、正規社員と比べて社会保険からの保障も十分に受けることができず、世帯収入も激減といった状況に陥ることが考えられます。実際の労働力調査(2011年)の中でも、希望する子どもの数が、正規社員(男性)では1.79~1.90人に対して、非正規社員では1.09~1.36人という結果が出ているように、雇用の安定が、将来の子どもの数に大きな影響を与える要因になっているといえそうです。
正規社員で働き続けた場合の生涯賃金は2億円を超えるといわれますが、非正規社員で働き続けた場合は、その半分程度になるといわれています。その結果、将来受け取る年金額や貯蓄も少なく、老後の生活にも大きな不安材料をかかえることになり、生活保護を受けざるをえないという可能性も大きいといえるでしょう。
最近は、介護等の家庭の事情により、仕方なく非正規社員で働いているという人もいる一方で、できれば正規社員で働きたいという希望を持っている人も2割程度いるという調査結果もでています。非正規社員から正規社員への切り替えを企業が促進するような政策を、国がもっと推進していく必要があるといえるでしょう。
数年前から話題にのぼっていた「ニート」、いわゆる若年無業者の数は、2002年以降、25歳~34歳では、毎年60万人程度いるといわれ、39歳までいれると80万人にものぼっています。日本はすでに人口減少にはいり、労働人口の減少もむかえるわけですから、「ニート」といわれる層を労働力として活用することが望まれています。最近は「ニート」を対象に、就職に向けての支援事業をおこなうNPO法人等も増えてきましたが、国も含めて今後も「ニート」対策に力をいれていくべきでしょう。
若年層の雇用問題は、若年層だけの問題はありません。若年層の雇用の不安定は、将来の日本の社会保障に大きなツケとして、日本国民全体にまわってくるという認識が必要です。
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