関西のお受験&教育事情について【2012年 第2回】

【2012年 第2回】関西のお受験&教育事情について  お子様の高校・大学受験でピリピリしているご家庭も多いと思います

合田 菜実子(ゴウダ ナミコ)⇒プロフィール

受験シーズンです。お子様の高校・大学受験でピリピリしているご家庭も多いと思います。今日は、関西(大阪・京都中心)における、最近の受験の傾向と教育事情についてお伝えします

 

 

 

 

 

全国的な教育事情としては、年々大学進学率は高くなっており、18歳未満の人口が減少傾向にあるにもかかわらず、大学・短大の進学率は54.5%とここ数年ほぼ横ばいとなっています。また、家計における教育費の支出割合は増加傾向にあり、老後への不安を抱えながらも、生活を切り詰めて大学までは進学させたい! 厳しい世の中だからこそ、子供にはしっかりとした教育を受けさせて、自立した大人になってほしいという“親の気持ち”が伝わってきます。

保護者だけでなく、学生自身への負担も大きくなっています。「全国大学生協」の調査(平成23年2月14日発表)によると、1人暮らしをした場合の仕送り額は4年連続で減少し”71,310円”とこの10年間で”25,810円”も減って1983年並みの水準となっており、仕送り”0円”の割合も10.5%と1割を超えています。

また、平成22年の奨学金の利用者は約118万人で4割程度の学生が奨学金を利用しています。“奨学金”は便利な制度ですが、大半の奨学金は将来に渡り返済が必要です。就職難が叫ばれるなか、卒業後安定した収入が得られず、返済が出来ない人が増えているというのも社会問題になっていますね。

【関西の状況】

関西に焦点を当てて見ると、全国の大学・短大進学率が54.5%であるのに対し、京都府・兵庫県出身者の進学率は60%超となっており相対的に高くなっています。また、2009年の “東大京大合格者数ランキング”の調査結果によると、1位:奈良 2位:京都 3位:兵庫 4位:東京 5位:大阪 と関西勢が上位に入っています。

一見、”教育熱心な学力レベルの高いエリア”と思われますが、平成22年度の「全国学力テストのランキング結果(下記図表参照)」によると、小学校では京都は4位と健闘しているものの、奈良12位、兵庫24位、大阪31位、中学校になると、奈良12位、兵庫19位、京都35位、大阪45位と、関西勢、特に”大阪”の小中学生の学力レベルが低くなっています。これらの結果から、東大京大への合格者が多いのは、一部の進学校である”奈良の東大寺学園・京都の洛南高校・兵庫の灘高校等”といった、有名私立高校が大きく影響しており、実際は”公立学校の学力レベルは低め””各府県内での学力格差が大きい地域”だということが推察出来ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

【関西の中・高校受験】

・京都府 ~昔は公立高校ならばどこも大差無し、公立高校よりも上を目指す場合は、私立の進学校、学力的に公立進学が難しい場合も私立高校というのが一般的でしたが、状況は随分変わってきています。公立高校も、特進、英語科、音楽科など特別クラスを設置するようになり、一部の学校のレベルが極端に高くなる等、学力格差が広がっています。

全国的な流れもあって、京都府内にも公立の中高一貫校が3校(洛北・園部・西京高校付属中学)設立されています。平成23年の志願倍率は、洛北6.78倍、西京7.84倍、園部2.28倍と狭き門となっています。経済状況が悪い中、公立の授業料(高校は無償)だけで、大学進学まで任せられる公立の中高一貫校の人気はますます高まるものと予想されます。

大阪府 ~ 前橋下知事(現在大阪市長)の教育政策の一環で一定の所得以下の場合、公立だけでなく私立高校も授業料無料となっています。進学の選択肢が増え、公立・私立問わず、希望の高校を目指すことが可能になったのは良い点ですが、すべり止めとしても気軽に私立を受験できるようになったことから、偏差値の高い公立高校の競争率が高くなるという現象が起きています。

また、数年前より公立高校の受験可能エリアが拡大され、たくさんの学校から高校を選択出来るように仕組みが変わったのも、公立高校のレベル格差につながっているようです。さらに、先月1月30日の府議会で大阪に4つある学区が2014年度に撤廃されることが決定し、ますます二極化が進むことが懸念されています。

学校の勉強だけではレベルの高い高校を目指せないため、塾など学校以外の教育にどれだけ“お金”をかけられるか?というのも進学に大きく影響してくる点です。実際、高校受験のために小学生から年間100万円程度もの受講料を払って塾に通う子供が増えており、所得レベルによる学力差も問題になっています。

【関西の大学受験】

全国的に少子化が進み、私立大学の定員割れは40%を超え“どこかの大学には入れるので気楽に!”とは言えないのが大学受験の現状。実際は“入学定員3000人以上のマンモス大学”の志願倍率は10倍を超えており、学生数や規模や地域差など“人気のある大学”と“定員割れしてしまう大学”の二極化が進んでいます。

そんな中、関西がとても恵まれている点は、京大、阪大などの一流国立大学を始め、有名私立大学から様々な専門分野に至るまで多くの学校があること。経済事情から1人暮らしが無理でも、自宅通学圏内で多数の選択肢から探すことが可能です。特に“学生の街”といわれる京都は、東京につぐ学生の数で、“週末の夜の河原町”などは多くの大学生達で賑わっています。

関西の大学といえば、有名私立の代表格として”関関同立”が思い浮かびます。関(関西)関(関西学院)同(同志社)立(立命館)、関西6大学野球での伝統の一戦が、関関戦、同立戦と呼ばれていたことに由来しているようです。厳密には初めの”関関”はどちらが先かははっきりしていません。ちなみによく間違われますが”関西学院”は”かんせいがくいん”と読みます。

リクルートが関西の高校3年生を対象に行った”大学ブランド調査”によると、”志願度ランキング”では”関西大学”、”雰囲気の良い大学”では”同志社大学”、”おしゃれな大学”では”関西学院大学”がそれぞれ1位になっています。

最近は、一般受験の他に、“推薦入試”や、学力試験よりも個性や適性などを重視して選抜する“AO入試”の割合が増加し、合格者数の半数近くをしめていす。従来からの“偏差値の高い高校から一流大学へ”という考えだけでなく、”関関同立”などを目指して、少しランクを落とした高校に入り“良い内申点”をとって、推薦をねらう学生も増えているようです。

”公立高校無償化””中高一貫校の増加”そして昔は無かった”AO入試”など、ここ数年だけ見ても、教育事情はどんどん変化しています。また、良い大学を卒業すれば一流企業に就職出来るという“学歴神話”は通用しなくなり、“大学合格”は、ライフプラン設計の中の、ほんの一部でしかなくなってきました。
どこの大学に入るか?ではなく、大学進学後も、キャリアアップために自分磨きを続けて行くことが重要になります。

とはいえ、受験真っ最中の学生さん、今、目先の受験に成功することが、人生の中の大きな自信となり、“夢のある将来”に繋がってくるはずです。寒い冬が終われば、暖かい“春”がやってきます。今までの努力の成果を100%出しきって頑張って下さいね!

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