【2012年 第11回 】関西の就業状況 と 最近のいろいろな 働き方について 少しずつ改善はしていますが、まだまだ厳しい状況が続いています
合田 菜実子 (ゴウダ ナミコ)⇒プロフィール
平成24年9月の完全失業率は全国平均で4.2%と、2010年頃の5%台から比べると少しずつ改善はしていますが、まだまだ厳しい状況が続いています。また、就労していても非正規雇用などで待遇や保障面などが十分ではなく不満を感じている人も多いようです。
平成24年9月の全国の完全失業率は4.2%で前月と同率になっています。完全失業率とは、労働力人口に対する完全失業者の割合のことで、失業率4.2%の場合、1000人中42人が失業していることになります。
下記表は、全国・近畿・大阪における、完全失業率の推移についてのグラフです。全国的な流れとしては平成24年をピークに改善方向にあるものの、近畿、大阪は平成24年に入ってからも厳しい状況が続いていることがわかります。(青ライン~全国、黒ライン~近畿、赤ライン~大阪)
(資料出所)総務省「労働力調査」
注1.全国は季節調整値。近畿・大阪は現数値。
注2.平成23年3~8月までの全国の数値については、岩手県、宮城県及び福島県の推計結果と同3県を除く全国の結果を加算することにより算出した補完推計値である。
平成24年4~6月期の都道府県別の完全失業率では、最も高いのが沖縄の7.9%、北海道、青森が5.7%、続いて大阪、福岡が5.4%となっています。その他、近畿エリアでは、兵庫県4.9%、京都府4.8%、奈良県4.1%、滋賀県4.0%となっており、大阪府は突出して失業率が高いことが分かります。
尚、東京都は4.8%、神奈川県は4.6%と全国平均の4.2%を上回っており、都市部の方が失業率は高い傾向があります。
平成17年のデータにはなりますが、大阪市西成区の失業率は22.4%と全国の自治体の中でもトップ、大阪府下ランキングでは、大阪市大正区と住吉区が13.6%と一部のエリアが大阪府全体の失業率を押し上げていることも伺えます。(国勢調査より)
さて、全国的に見て、失業率が改善方向にあるにもかかわらず、経済や家計状況が改善されているように感じられないのは、ここ数十年の間の就業環境と形態の変化にあるのではないかと思います。正規雇用であっても、給与が増えない状況、そして、新卒で就職、再就職・転職をしようと思っても、派遣やパート、アルバイトといった、非正規雇用としての職にしか就くことが出来ない人が増えています。
下記は、正規雇用と非正規雇用者の推移を表した表ですが、年々非正規雇用の割合が高くなっていることが分かります。
一般的に、非正規雇用とは、「パート・アルバイト」「契約社員・嘱託社員」「派遣社員」が代表的な雇用形態で、それぞれ給与体系や採用方法が異なりますが、いずれについても言えることは、正規雇用と比べると待遇面が良くないところです。正規雇用と違って雇用契約が細切れになっているため、将来の設計が立てにくい、年金や健康保険といった社会保険が充実していない点などが挙げられます。
“就労時間の自由度や休日の取りやすさ”などを優先する人にとっては、非正規雇用という就業形態のメリットは大きいですが、実際、正規雇用並みの労働時間、また、同じ責任を与えられて働いていても、契約形態が非正規雇用なので、賃金は半分程度というケースも少なくないようです。世界レベルで見ても、OECD諸国と比較して、日本のパートタイム賃金の水準がフルタイム賃金に対して時給ベースで約48%と格段に低くなっているという調査結果(OECDTaxing Wages2004/2005 : 2005 Edition)もあります。
最近の傾向として、企業がコスト削減のために、“正社員”に代えて“正社員並みの仕事をさせるパート”を増やす企業が増えており、パート社員と、正社員の賃金格差の問題は深刻化しつつあります。
フルタイムでは働けない子育て中の主婦や、正社員としてフルタイムとして働くよりも自由な時間を大切にしながらやりたい仕事をしたい、と考える人にとっては、派遣やパートは適した雇用形態です。最近は、派遣労働においても、専門性を重視する仕事が増えています。資格を活かしたり、語学や接遇のスキルを磨いたりすることによって、派遣のお仕事の中でキャリアアップを目指す方法もあります。
派遣契約の1つとして、特定派遣社員という契約形態があります。一般の派遣の場合は、仕事が決まった時だけ雇用契約を結び労働時間に応じて賃金が支払われますが、特定派遣契約は、派遣会社と特別契約を結ぶため万が一仕事がなくても派遣会社が給与を支払ってくれます。また、経験を積みスキルアップすることにより正社員に転換できる可能性がある派遣形態もあります。
男性は、大学を出たら就職をして良い会社に入って、終身雇用制度に守られ定年まで働いて退職金を貰ってリタイヤし、悠々自適な年金生活。女性は、一旦は就職するけれど、素敵な人が見つかれば仕事はやめて、永久就職で主婦業に専念。このような考えが“ふつう”に受け入れられていたのが、つい10数年前の話だということが不思議な気がします。
様々な雇用形態、選択肢が増えたのにはメリットもあるかもしれませんが、やはり正規雇用で働きたい人にはそのチャンスの幅が広がり、就労する人がその労働の対価と見合った待遇を平等に与えられる、努力したらその分認められて、お給料やキャリアアップにつながる、そんな可能性が誰にでも与えられる社会になってほしい。理想論ではありますが、私はそう願いたいと思います。
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