2回目のテーマ <高校でお金の授業>なぜ、高校生に投資の知識が必要か
『親子のためのお金教育の専門家』、元銀行員・ファイナンシャルプランナーの横井規子です。
「このままじゃ、将来、お金で失敗しちゃう!」
我が子のお金のしつけをやり直した経験から、金融教育が重要と実感。それをきっかけに親や子のためのお金の授業をスタートし、これまで300校、17,000人が受講しています。
学校授業での経験や金融教育について、1年間お伝えしていきます。
横井規子⇒プロフィール
目次
高校「投資の授業」で、生徒からの驚きの一言とは
前回のコラムでは、高校で本格的にお金のことを学ぶ時代になったこと、外部講師として学校に呼ばれ、お金の授業をする機会が増えてきたことをお伝えしました。
お金の授業と言いましても、テーマは様々。
これまでは、
・社会保険制度を活かした民間保険の活用
・ライフプランの立て方
・クレジットカードの仕組みと注意点
・契約や消費者トラブル
といったものが多かったのですが、ここ最近のご依頼は「投資」について。高校生に、つみたてNISAやiDeCo(イデコ)について教えて欲しいというリクエストもじわりと増えています。
私がこれらについてお話をする際には、まずは、株式や投資信託の仕組みから教えていきます。株式の知識については、中学生の時に学んでいるはずですが、「難しい!」と感じる生徒も多く、投資信託もなかなかイメージがつかめない様子。ですから、イラスト等を活用してわかりやすく伝える努力は欠かせません。
これまでの授業を振り返ってみると、女子生徒は「資産を守りたい」という気持ちが強く、なかなか関心を持ってくれないものの、男子生徒は「儲けたいから」と、投資に関心を持つ子も多く、興味津々で話を聞いてくれます。
そして、「FXの話を聞きたかった」と言われることも少なくないのです。初めて生徒から「FX」という言葉を聞いた時は驚いたものです。どこからその情報を知ったのでしょうか。
FXとはどういう仕組みなのか
FXとは、英語のForeign Exchange(外国為替の意味)を略したもので、外国為替保証金取引、外国為替証拠金取引とも言われています。
為替レートを予測しながら外貨を買ったり売ったりして、その買値と売値の差益を得ることを目的に取引をする金融商品です。
利益を得る仕組みは2つに大別されます。ひとつは、「米ドルと円」というように、2つの通貨の買値と売値の差額により差益を得る方法で、「キャピタルゲイン」と呼ばれています。もう一つは、2つの通貨の金利差から派生する「スワップポイント」を得る方法。
「インカムゲイン」と呼ばれており、預金金利や株式配当金のようなイメージです。一般的に、円のような低金利の通貨を売り、南アフリカ等の高金利の国の通貨を買うことにより、インカムゲインを得ることができます。
また、レバレッジを活かして、効率よく大きな利益を得ることも期待できます。レバレッジとはテコの原理のことで、少ない資金で大きな取引きができることを言います。FXでは預けた証拠金の最大25倍の金額で取引きができます。
例えば、手元に10万円の資金しかなくとも、最大250万円分の取引きが可能。元手が大きいと利益も大きくなることが期待できますが、損失も大きくなることがあるので注意が必要です。
親の知らぬところで投資の情報を得ている子供達
このように、複雑な仕組みのFXの情報を、高校生はどこから得ているのでしょうか。実は、親の知らぬところで、SNS等を活用して情報を得ているようです。私も高校生から、「Twitterで見た」「YouTubeで情報を得ている」「Instagramで情報を見て気になっている」と言われたことがあります。
18歳成人となって、早々に投資を始める若者もいるようです。なかには、LINEペイやPay Pay等で買い物をして得たポイントで投資をスタートするケースもあるようです。
例えばPay Payの場合ですと、「金(ゴールド)コース」、「スタンダードコース」等の5つの運用コース(2023年1月22日現在)のなかからポイントで投資をすることができます。現金での投資は、元手が減ると嫌ですが、ポイントならやってみようという気になることもあるのでは?その投資をきっかけに、FXや暗号資産(仮想通貨)等にも関心を持つこともあるかもしれません。
モノなしマルチにも注意!
投資に関心を持つのは悪いことではありませんが、ただ単に「儲けたい」というのは心配です。投資詐欺等の消費者トラブルに巻き込まれてしまう可能性もあります。
若者に多い消費者トラブルの中に、マルチ商法があります。これは、「人に紹介すれば、報酬がもらえる」等と勧誘し、商品やサービスを契約させる商法。
最近では、化粧品や健康食品といった実物商品から、FXや暗号資産等の投資商品の儲け話にシフトしてきているようです。
実物商品ではないことから、「モノなしマルチ」とも言われていますが、その相談は全国の消費生活センター等に数多く寄せられています。
消費者庁「マルチ商法に関するトラブル」によると、モノなしマルチに関する相談件数は2019年では6,021件、47.8%が20歳代の若者からでした。
消費者庁「マルチ商法に関するトラブル」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2020/white_paper_116.html
学校の友人や、SNSやマッチングアプリで知り合った人から、「儲かる話がある」「アルバイトよりも効率よく稼げる」等と誘い出されるのが一般的な手口です。儲けるためには高額な契約金や手数料が必要となるので、お金がないことを理由に断ろうとすると、「消費者金融で借りればいい」等と言われ、借金をして契約をしてしまうようです。
高校生が投資の知識を持つことは悪いことではない
「高校生が投資をするなんて」「受験勉強だけで十分」と思う親もいることでしょう。しかし、知識を持つことは決して悪いことばかりではありません。その理由が3つあります。
①収入を得る方法を増やせる
株式投資の場合ですと、「値上がり益」「配当金」「株主優待」で収益を上げることが期待できます。いまや、多くの企業で副業を認める時代でもあるので、複数の収入源を持つ方法があることを教えておいても良いでしょう。
②金融の知識に強くなる
投資をきっかけに、世界的な金融情勢や経済活動に関心を持てるようになることが期待できます。俯瞰的(ふかんてき)に世の中を見ることができ、子供達の視野を広げることにもつながることでしょう。
③“就活”にも役立つ
市場の状況や業界の研究をすることで、将来、就職活動(就活)をする時に役立てられるのではないでしょうか。就活は業界研究からスタートしていき、企業研究、職種等と順に進めていき、自分にあった仕事をみつけていきます。株式投資も業界や企業研究をして投資先をみつけていくので似ていますね。投資に関心を持ったことをきっかけに、自分の将来をいち早く考え、就活に取り組めることもあるのではないでしょうか。
そういったことから、投資の知識を持つことは悪いことばかりではないように思えます。
しかし、投資にのめり込んで学業がおろそかになるのは本末転倒です。18歳となって成人になると、自分で投資の口座開設もできます(親の同意が必要なケースもあります)。だからこそ、学校や家庭で正しい知識を教えていく必要があるのです。
この記事へのコメントはありません。