10回目のテーマ <高校生・大学生への投資教育>安心投資「3つのコツ」の伝え方
『親子のためのお金教育の専門家』、元銀行員・ファイナンシャルプランナーの横井規子です。
「このままじゃ、将来、お金で失敗しちゃう!」
我が子のお金のしつけをやり直した経験から、金融教育が重要と実感。それをきっかけに親や子のためのお金の授業をスタートし、これまで300校、17,000人が受講しています。
学校授業での経験や金融教育について、1年間お伝えしていきます。
横井規子⇒プロフィール
高校生が学校で投資を学び、大学生の中にも、「アルバイト収入で投資を始めた」という声がポツポツと上がるようになってきました。極端な値動きを狙うのではなく、資産を大切に育ててほしいものです。そのためには投資の「3つのコツ」を理解することが重要です。授業や講義で、私がどのように伝えているのかご紹介します。
教育現場で投資教育が増えている理由
高校や大学で、株や投資信託、NISAやiDeCoの仕組みなど、投資に関する講座のご依頼が増えています。
なぜなら、
・学習指導要領が変わり、令和4年度から高校での金融教育が始まったこと
・若者が金融詐欺にあう話を耳にする機会が増えたこと
・物価の上昇や、長寿による老後生活資金の不足など、長期的な資産形成が必要であること
このような理由により、外部講師による講座を検討する先生が増えてきました。
「投資を始めたばかりです」と話す先生にお会いする機会が多いのですが、投資に大切な「3つのコツ」を意識している方が少ないように感じます。
皆さんは、3つのコツをご存じですか。
投資のための3つのコツ「分散・積立・長期投資」
株式や債券など、値動きのあるものに投資をすると、相場の影響を受けて資産が目減りすることもあります。過去には、1990年のバブル崩壊、2000年のITバブルの崩壊、2008年のリーマンショックがあり、新型コロナショックも記憶に新しいところです。こういった相場の影響を受け、私も過去に投資した資金が目減りしてしまったことがあります。
しかし、それは分散・積立・長期投資といった3つのコツを、当時は持ちあわせていなかったのも原因です。
分散投資とは、国内外の債券や株式など、値動きの異なる複数の資産を組み合わせて運用すること。ある資産の価格が下落しても、他の資産の上昇で補うことができ、荒い値動きにならずに済むことが期待できます。ドルやユーロなど、通貨を分けて運用したり、A株、B株などと、銘柄を複数持って運用する考え方もあります。
積立投資とは、月に1度など、定期的な間隔で、毎回決まった金額で買い付けることです。
値動きのある資産は、安い時に買って高い時に売るのがベストですが、どのタイミングが良いのかは、なかなか狙えるものではありません。定期的に購入することで、価格が高い時には少なく、安い時には多くの数量(口数)を買うことができ、平均購入単価を下げることが期待できます。
長期投資とは、目先の動きに一喜一憂せず、長期的な視点で運用することです。先ほどお伝えしたリーマンショックは5年5カ月、新型コロナショックは9か月で回復しました。
このようなことから、分散・積立・長期投資が大切だと考えているのです。
教科書では触れていない「3つのコツ」
これら投資の3つのコツは、学校で教えてもらえるとは限りません。
高校の家庭科や公共の時間で投資を学ぶようになり、私も参考のために何冊か教科書を購入しました。
「株はハイリスク・ハイリターンである」などの記載があるものの、そのリスクを抑える方法を具体的に記載している教科書はありませんでした。
そのため、高校の授業や大学の講義では、3つのコツを必ず伝えるようにしています。
子供達がイメージしやすい伝え方とは
高校生や大学生のように投資の経験がない、あるいは慣れていない方に教えるのは、意外と難しいものです。そのため、できるだけ分かりやすい資料や写真を活用しながら説明しています。
分散投資については、幕の内弁当の写真を見せながら説明しています。
幕の内弁当には、味付けや特徴の異なる色々なおかずがあるように、投資をする際にも、値動きや特徴の異なる資産を組み合わせて運用することが大事であると伝えています。
積立投資については、リンゴの購入を例にして説明をしています。
900円の予算で、1個300円のリンゴを買うと3個、毎回300円と決めて3回に分けて買うと、値段が100円と安い日は3個、値段が300円の日は1個しか買うことができませんが、合計5個のリンゴが買えます。その後、「1個500円で全て買いたい」という人が現れて売ったら、個数の多い方がたくさんの利益を得られます。
投資も金額を決めて定期的に買っていくと、一度にまとめて買うよりも利益を得られるかもしれませんし、株価や為替相場などの動きに左右されず、淡々と積み立てることもできるでしょう。
また、長期投資の効果がイメージしやすい資料も活用しています。
これは、2019年3月に発表された、金融リテラシー啓発用共通教材「コアコンテンツ」の資料の一部です。日頃から金融経済教育活動に関わる数多くの関係団体・省庁・学識経験者が一堂に会する、金融経済教育推進会議(事務局:金融広報中央委員会)にて検討、作成されました。
コアコンテンツは、大学1コマ90分用の金融リテラシー・モデル講義資料であり、教員はもとより、金融業界、関係官庁など、この分野に携わる方が金融リテラシーに関する講義やセミナーを行う際、広く使うことができます。大学生に限らず、高校生、若者、一般消費者にも理解しやすい内容です。
このような資料を活用しながら、投資の3つのコツを教えているのです。
そもそも、高校生や大学生に投資を教える必要があるのでしょうか。社会人になってすぐに投資の機会があるかもしれないので、私は大事なことだと思っています。
勤めた会社で、企業型確定拠出年金制度(DC)があり、運用をスタートしなければならないかもしれません。会社に「職場積立NISA」があり、投資を始めるかもしれません。
だからこそ、社会人になる前の投資教育は重要であり、安心して投資をするためのコツを教えておくことも大切なのです。
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