11回目のテーマ 〈小学校での金融教育〉 授業のヒントは学習指導要領にあり!
『親子のためのお金教育の専門家』、元銀行員・ファイナンシャルプランナーの横井規子です。
「このままじゃ、将来、お金で失敗しちゃう!」
我が子のお金のしつけをやり直した経験から、金融教育が重要と実感。それをきっかけに親や子のためのお金の授業をスタートし、これまで300校、17,000人が受講しています。
学校授業での経験や金融教育について、1年間お伝えしていきます。
横井規子⇒プロフィール
小学校でお金の授業をする際、学習指導要領に目を通して内容を組み立てています。学習のねらいが詳しく書いてあるので、授業のアイデアもわいてきます。また、家庭でのお金教育にも役立ちます。今回はその中身と、役立つ教材をご紹介します。
教育課程の基準「学習指導要領」
皆さんは小学生の頃、お金の授業を受けたことはありますか?
恐らく、学校でお金のことを学んだ人は少ないのではないでしょうか。私は学校で習ったことも、親から教えてもらった記憶さえもない。「無駄遣いしちゃダメ!」などと、近所の駄菓子屋のおばちゃんに叱られながら、お金の使い方を学んだくらいです。
しかし、いまや小学校でお金のことを学ぶ時代です。
教科書は、文部科学省「学習指導要領」を元に作られ、それを使って学校で授業が行われます。学習指導要領とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準で、おおよそ10年に1回、改訂されています。
小学校【家庭編】での「C消費生活・環境」では、最近の改訂により、「買物の仕組みや消費者の役割」が新設されました。これは、限りある物や金銭が大切であることや、自分の生活が身近な環境に与える影響に気づき、持続可能な社会の構築に向けて主体的な生活を工夫できる消費者としての素地を育てることを意図しています。
学習指導要領 C消費生活・環境
⑴ 物や金銭の使い方と買物
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア) 買物の仕組みや消費者の役割が分かり、物や金銭の大切さと計画的な使い方について理解すること。
(イ) 身近な物の選び方、買い方を理解し、購入するために必要な情報の収集・整理が適切にできること。
イ 購入に必要な情報を活用し、身近な物の選び方、買い方を考え、工夫すること。
学習指導要領には「売買契約の基礎について触れること」という記載もあるため、私が学校でお金の授業を行う際には、売買契約の成立時期にふれ、物や金銭の大切さを楽しく学べるように、ゲーム形式で行っています。授業2時間分の内容はこちらです。
計画的なお金の使い方を学ぶ「こづかいゲーム」
私が小学校授業で活用しているゲーム型式の教材は、パワーポイントで作成したスライドを投影して進めていくものです。学年単位など、大人数でも対応できます。
こちらは、スライドの一例です。
決められたこづかいの中で、買い物シミュレーションをしていきます。これは学習指導要領に記載されている、「物や金銭の大切さと計画的な使い方について理解すること」をねらいとし、金銭教育総合研究所マネーじゅくメンバーで意見を出し合い、作ったものです。
このカレンダーにある、赤、緑、青、黄、♡には意味があります。
・赤 → ほしいものを買う日
・緑 → 必要なもの(学校で使用する文房具)を買う日
・青 → 思いがけないアクシデント
・黄 → 寄付など、誰かのためにお金を使う日
・♡ → 臨時のこづかい日
カレンダーに沿ってゲームを進めていきますが、この色やマークのある日には、じゃんけんや自分の選択で買い物をしていきます。先のことを考えながら計画的にお金を使うこと、買う前に本当に必要かどうかをよく考えること、十分活用して最後まで使い切ることなどを伝えていきます。
さらには、ごみをできるだけ増やさないように買い物袋を持っていくこと、新しい物を購入する前に、家庭にある物を活用したり、知人から譲ってもらうなど、物や環境を大切にすることにも気がつきます。
楽しみながらお金のことを学べ、対面授業だけではなく、オンラインでも盛り上がることから、コロナ禍ではZoomを活用して、いくつかの学校で授業を行いました。学習指導要領に沿った内容とすることで授業と認められるため、先生方も喜んでくださいました。
しろうくまが教えてくれる!身近な物の選び方
学習指導要領には、
(イ) 身近な物の選び方、買い方を理解し、購入するために必要な情報の収集・整理が適切にできること。
イ 購入に必要な情報を活用し、身近な物の選び方、買い方を考え、工夫すること。
といった目標があげられています。それをわかりやすく教えるために活用できる教材があります。札幌市が発行し、「2021年消費者教育教材資料表彰 優秀賞」を受賞した、『しろうくまと知ろう!くらしと買い物』という冊子です。消費者教育のシンボルである、しろうくまが、わかりやすく契約、金額の調べ方、物の選択の考え方を教えてくれます。
『しろうくまと知ろう!くらしと買い物』はこちら。https://www.city.sapporo.jp/shohi/01-shohi/06-keihatsu/details/documents/kurashitokaimono_2022.pdf
市内の小学校にお伺いした時に、この冊子を持っている児童が多かったため、授業で活用されている先生も多いのかもしれません。ワーク形式なので、アクティブ・ラーニング※を意識した授業を行うこともできます。
※能動的学習のことを指し、学習者(児童、生徒、学生等)が受け身ではなく、自ら能動的かつ積極的に学ぶことができるように設計された学習のこと。
例えば、6章の「筆箱を選んでみよう」では、サイズや重さ、素材などが異なる4つの筆箱の中から、予算内で何を買うのかを考えていきます。それぞれの商品の長所や短所も含めて情報を整理し、どれを購入するのか理由を考えていく、学習指導要領に沿った内容です。個人考察からグループワークへと展開することもできます。
今回は、私が住む札幌市が作成した教材をご紹介しましたが、皆さんがお住まいの自治体でも、金融教育にふさわしい冊子を作成していたり、サイトで情報発信しているかもしれません。探してみましょう。
家庭での「お金教育」のヒントがみつかる!
学習指導要領は、大きな書店で販売されているのが一般的で、今回ご紹介した小学校「家庭編」は百円程度です。インターネットで検索もでき、無料で中身を見ることができます。
こちらをクリックください。https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_009.pdf
私は学習指導要領から、家庭でのお金教育のヒントもみつかるのではないかと思っています。お子さんがいらっしゃる方は、一度覗いてみてください。
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