生命保険業界の歴史を検証することで、将来への課題を探っていくコラムを連載していきたいと思います。証券と保険をマスターすれば、FPとして一本立ちできると言われます。なるほど、最も複雑で、顧客からのクレームの多い業界です。
一方で、無責任なマスコミ報道などにより間違ったイメージ・情報が定着した業過でもあります。「へぇ~!!」と驚かれる一般には知られないエピソードを交えながら、正確な現状を確認する一助となれば幸いです。第3回は、生命保険の主力商品について概観してみましょう。
嶋田雅嗣⇒プロフィール
7.「定期付き終身保険」が新たな主力商品に
1983(昭和58)年、第一生命が「リード21」などの名称で、「定期付終身保険」を大手生保で初めて主力商品として販売を開始した。 三宅裕司氏が、大きな印鑑をお尻に押されるというユーモアあふれるCMでも話題となった。終身保険(主契約)で葬式代、定期保険特約で遺族生活費、入院特約で病気・ケガに備えるという、わかり易いパッケージ商品の登場だ。以後、生保各社は順次、主力商品を定期付養老保険から、定期付終身保険へと切り替えていく。明治生命(現明治安田生命)は、2000(平成12)年にライフステージに応じて、保障内容や保険料を毎年見直しできる保険「ライフアカウントL.A.」を販売開始した。住友生命「LIVE ONE」、朝日生命「保険王」などが追随している。いわゆるアカウント型保険である。しかし、各社とも販売停止あるいは実質販売停止状態にあり、定期付終身保険の販売に先祖帰りしている。
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インフレを考慮したハコ定
必要保障額は右肩下がり、というのは今では一般顧客にも知られるようになり、発売開始当時はバブル経済の足音が大きくなってきた頃で、インフレ対応も加味する必要があった。必要保障額は右肩下がりに逓減するが、インフレによる目減り分をカバーするためには、必要保障額を増加する必要がある。「必要保障額の逓減率≒インフレ率」とみなすことで、保険料払込満了までの定期保険特約を付加するという、合理的な説明と相まって消費者の強い支持を受けることになった。国内生命保険会社は、割高は保険料を徴収するかわりに高額の配当を支払う「高料高配」商品の販売を推進していた。配当金は見込みをパンフレットや保険設計書に表示することが可能で、高額な金額が表示され、保険料払込満了後に年金として受取るシミュレーションは、高齢化社会の到来が現実化しつつあり、特に説得力があった。
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更新型
バブル経済華やかなりし頃、より安い保険料で高額な保障を求める消費者ニーズに応え、定期保険特約の10年ないし15年(住友生命が採用)の更新型が発売され、さらに、主契約の終身保険部分を終身払いすることで、より割安な保険料を提示するプランなど、さまざまなプランが開発されている。当時の平均寿命が80歳程度のため、入院特約は80歳満了であった点も、確認しておきたい。
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三大疾病特約
医療・がん保険などのいわゆる第三分野商品の単品は、大手7社(日本、第一、明治、住友、朝日 の生命保険協会長 輩出会社 +安田、三井)は、中小・外資系生保の保護を理由に販売を自粛させられている。
千代田生命は、TV・新聞・雑誌等のメディアに対しては大手8社と表示するよう強く要請する一方で、医療単品の販売を認めるように当局に懇願しており、したたかな二枚舌外交と揶揄されている。実際には、1枚の保険証券に定期付終身保険と医療保険(単品)の2契約を表示し、一見は入院特約付に見えるように工作している。商品名も「スーパーグランプリ・ゴールドメディカルプラン」などと称していいた。同様に、協栄生命も1証券2契約タイプで定期付終身と医療保険をセット販売している。
三井生命は、1990(平成2)年に三井銀行が太陽神戸銀行と合併した際に、ガン倍額保障付医療保険の販売を、三井グループ社員に限って販売を認められている。医療保険を扱いう太陽生命の営業職員が太陽神戸三井銀行をはじめとする三井グループ会社に出入りし、職域開拓で医療保険を販売された場合の不均衡を主張したものである。
このように、大手生保において医療・がん保険を販売するハードルは極めて高く、三大疾病特約が認可された際には「○○生命のがん保険です。がんに加えて脳卒中、急性心筋梗塞まで幅広く保障されます」と言って積極的に販売している。
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収入保障特約付
損保系生保が開業すると、全11社が収入保障保険(特約)を主力商品として、大手生保の定期付終身保険を駆逐(ひっくり返し)始めたが、その勢いは凄まじいものがある。慌てて、(家族)収入保障特約の販売を開始するが、何故か100万円×10年の分割支払タイプをメインとしている。損保系のような60歳満了タイプは、朝日生命のみが積極的に推進しただけである。結局は、損保系とその流れに乗った外資系による大手生命の定期付終身保険は徹底的に、保障見直しのターゲットとされてしまう。
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