岡本英夫のFPウオッチャーだより 第33回 高齢者のための新NISA活用講座 ~地元公民館でのQ&A

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

岡本英夫のFPウオッチャーだより、
今回は高齢者のための新NISA活用講座~地元公民館でのQ&Aです。

岡本 英夫 ⇒ プロフィール

講座開講の経緯

筆者は地元公民館の専門部のひとつである体育部で長年活動している。地域住民向けにハイキングやスポーツ大会などを催す部署だが、体育部の部会は毎月1回土曜日の夜に開かれている。終了後に公民館近くの居酒屋で一杯やるのが恒例になっている。昨年4月の部会後、その酒席での話題が新NISAになった。

1人は「やってみたいけど、やり方がわからない」、もう一人は「現役世代向けの制度なんだろ?」などという。少し説明を始めたら「ちゃんとした話を聞きたい。岡ちゃん、公民館で機会を作ってよ。聞きに行くからさ」とのたまう。「じゃあ、公民館の事務局と相談してみるよ」と答え、後日、公民館の窓口に出向いた。

公民館では「近々、平成6年度の自主企画提案事業の募集説明会があるので参加してみたら」とのこと。説明会に参加し「高齢者のための新NISA活用講座」の企画書を提出することにした。開設の条件は、①10人以上の募集定員、②2回以上のプログラム、③材料費等の実費以外の金銭・物品を徴収しない、などというものだった。

対象を高齢者に絞ったのは、この地区が市内でも有数の高齢化地区であること、そのほとんどがサラリーマンOBで退職金などまとまった資金を保有していると予想されること、金融機関やマスコミなどのNISA講座は40歳代、50歳代向けのものが多く、高齢者向けのものが不足していると感じていたことによる。

7月中旬の選考委員会で採用が決定、日程は11月16日(土)、12月22日(日)、翌年1月25日(土)の3回ということになり、日程にあわせて第1回「制度概要と口座開設」、第2回「銘柄選定と継続管理」、第3回を「2025年度の投資枠設定」とした。10月から募集を開始、65歳から80歳代後半までの11名の応募があった。うち、1名が体育部員。

第1回「新NISA制度の概要と口座開設手法」

最初に制度内容と口座開設方法を説明したが、これから新NISA口座を開設しようと考えている人は3名、そのほかの8名はすでに投資を開始していた。高齢者のための新NISA活用法としては、高齢者こそ非課税制度のメリットを享受すべきであることと、以下のことを説明した。

・長期投資にこだわらない
新NISAで保有した商品は非課税でいつでも売却できる。非課税なので確定申告は不要。また翌年には新たに成長投資枠で240万円、つみたて投資枠で120万円が投資できる。長期投資にこだわらず、売るタイミングだと思ったら売却して利益を確保しよう。高齢者の場合、利益は早めに確保し、使えるときに使ったほうがよい。

・つみたて投資も併用しよう
つみたて投資枠は定期収入のある人向けだが、まとまった資金がある高齢者の場合、成長投資枠と併用し、非課税のメリットを最大限利用しよう。投資上限額の1,800万円にも早く近づける。毎月積み立てるとすれば月10万円が上限だが、複数の投資信託、ETF(上場投資信託)で分散して投資しておくと、収益の出たものを売りやすい。

・投資を楽しもう
昔から言われていることだが、投資を行うと世の中や経済の動きに敏感になり、ボケ防止につながる。新聞やテレビでニュースをチェックし、パソコンやスマホ操作も日常化できる。余裕資金で行うことが前提だが、新NISAに投資して、投資を楽しもう。散歩しながらラジオ日経を聞くのもおすすめだ。

質疑応答

Q:退職金をもらった夫が銀行で新NISAをはじめた。これまで投資などしたことがないだけに、投資に失敗するにではないかと心配して参加した。大丈夫でしょうか?
A:銀行での新NISA口座開設であれば、個別株式やETFには投資できないので、投資信託で運用されているはず。投資信託の場合分散投資も効いている。比較的安全な銀行でのNISA投資を続ければよいように思う。
また、退職金を運用する場合でも、新NISAは成長投資枠で240万円、つみたて投資枠で120万円の年間360万円までしか投資できない。退職金の一部が新NISAに振り向けてられているだけだと思う。

Q:オルカンにのみ投資している。8月5日の日経平均の急落にはびっくりした。オルカンのみへの投資で大丈夫だろうか。
A:オルカンが怖いのは株価の下落より円高。円高になれば外貨の価値も下がる。ほとんどがドルやユーロなどの外貨で運用されているオルカンの基準価値も下がる。オルカンのみで投資しているのなら、年明けにオルカンへの投資額を減らして日本株インデックスなどと分散してはどうか。

Q:旧NISAで値上がりしている株を持っているが、今年いっぱいで非課税期間が終わる。新NISAに移行したいが、今年中に売って、来年再購入するしかないのか?
A:そうです。2020年に投資した、あるいはロールオーバーした株式などは旧NISAが2023年に終了しているため継続できない。また、旧NISAから新NISAに直接移すこともできない。そのままにしておくと特定口座か一般口座に払い出される。利益が出ているなら年末までに売却して、非課税メリットを得たうえで、引き続き新NISAで投資したいなら。年明け後に新たに新NISA枠で購入することになる。
一般的には、儲かっている場合は年内に売却、損をしている場合は特定口座に移して値上がりを待つのがよいと思う。この場合旧NISA口座で運用が終了する時点の価格が新たな「取得価格」になる。

次回は第2回目以降の内容を紹介する。 

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