岡本英夫のFPウオッチャーだより 第35回 ~高齢者のための新NISA活用講座 ③~

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。

岡本英夫のFPウオッチャーだより、
今回は高齢者のための新NISA活用講座③です。

岡本 英夫 ⇒ プロフィール

2025年に入り新たに120万円、240万円の投資枠

第3回目の講義は1月25日(土)、「2025年のつみたて投資・成長投資枠の設定」をテーマにおこなった。新NISAも2年目に入り、新たにつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円が加わったことで、年末までに2年間累計720万円を投資することができる。その投資枠をどう埋めるかを考えてほしいというというものである。

つみたて投資枠については前年に設定した積み立てを継続することもきるし、変更することもできる。成長投資枠は積立銘柄を設定している場合は継続も可だが、新たな積立や新規投資銘柄を設定することもできる。なお、旧NISAで前年に非課税期間が終了した銘柄については、いったん売却して新NISAに移すことができる。

2024年の新NISAを振り返る

まずは、前年に開始した新NISA口座の状況を振り返る。投資した個別の投資信託や株式は各人で異なるので、日経平均株価225種で見てみる(下表)。

1月4日 大発会、33,193.05円。新NISAスタート
2月22日 1989年12月以来、終値で史上最高値更新(39,198円、34年ぶり)
(過去最高値は1989年12月29日に記録した38,915.87円)
3月4日 4万円を突破(終値40,109.23円)
7月11日 終値で42,224円、最高値を更新
8月5日 年内の追加利上げを示唆したことによる植田ショック。3営業日で約8,000円下落。5日は4,451円28銭安で歴代1位の下げ幅、下落率は12.4%で歴代2位。日経平均株価 31,458.42 円.
(歴代1位は1987年のブラックマンデー翌日の-14.9%)
12月30日 大納会39,894.54円(年間騰落率19.2%)

日経平均株価225種は年間で6,700円強上昇しているが、新NISAへの投資をいつ始めたかで運用結果は異なってくる。個別で判断するしかないが、おおむねプラスという人が多数だと思われる。ただし、マイナスでも気落ちする必要はない。NISAは長期投資が基本である。

報道によると、主要証券10社におけるNISA専用口座を経由した個人の購入額は2024年中に約12.8兆円。前年の1.5倍の343万口座が新設され、新NISA投資額のうち国内株の割合は38%で、5兆円程度が流入。高配当などを狙った長期保有を前提とした買いが個人の投資動向に変化をもたらしたとのことである。

また、80歳以上の高齢者では、新NISAで購入した金額が旧NISAで2023年に売却した金額を下回るのに対し、20~50代は新NISAでの購入が旧NISAの売却の3~5倍に達するという。高齢層では旧NISAから新NISAへのシフトがあまり進んでいないことがうかがわれる。個人的には、高齢者の新NISA活用を促すべきだと思う。

2025年の投資環境Q&A

1月20日、トランプ氏が第47代米国大統領に就任した。これについて米国株式、日本株式への影響はどうなるかとの質問があった。
就任当日にトランプ氏が署名した主な大統領令は次のとおりである(参考:日経新聞)。

通商 ・中国、カナダ、メキシコの貿易実態調査→2月1日からカナダ、メキシコに25%の関税
・関税を徴収する外国歳入庁の創設
エネルギー・
気候変動
エネルギー緊急事態宣言
・パリ協定からの再離脱
・海洋採掘の禁止令を撤回→掘って掘って掘りまくれ!
・電気自動車の普及方針撤廃
移民政策 ・南部国境緊急事態宣言
・不法移民の入国拒否、国外退去

 これについての回答は「わからない」としか言いようがないが、アメリカ第一主義がトランプ大統領の施策の根底にあるため、米国株式市場にマイナスに働くとは思えない。関税政策も含め不透明さはぬぐえないが、米国株式市場が混乱するようだと、すぐに対応してくると考えるのが自然だ。日本株への影響もあるが一喜一憂しないことである。

もうひとつ、1月24日の日本銀行の金融政策決定会合で0.25%の利上げがおこなわれたが、これについての質問もあった。決定会合の内容は、次のようなものであった。

1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成8反対1)。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。
2.上記の金融市場調節方針の変更に伴い、以下のとおり、各種制度の適用利率の変更を決定した(賛成8反対1)。
(1)補完当座預金制度の適用利率 0.5%とする
(2)基準貸付利率 0.75%とする。(以下略)

これにより、政策金利はリーマン・ショック直後の2008年10月以来、約17年ぶりの水準となった。日本銀行は、さらなる金利の引き上げを意図しているとのことであり、前回でも述べた銀行株、金融関連株が銘柄選択の候補として浮かび上がってくる。ただし、これはあくまで金利上昇が金融業界に与える影響という視点から見たものである。

機関投資家や個人投資家、海外投資家は様々な情報をもとにあらゆる取引手法を使って取引している。好業績銘柄の株価が高いとは限らないし、赤字決算でも株価が上昇することもある。銘柄選択はあくまで個人の判断でおこなうものである。それでも将来見通しを立てることは重要である。

最後に、前2回の講座を欠席した人に過去の講義資料を配布し、補足説明をおこない、3回シリーズの講義を終えた。   

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