マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります。
今回は第7回目です。
岡本英夫⇒プロフィール
1990年以降、金融機関を中心にFP養成講座の講師を担当してきましたが、数は少なかったものの学生や主婦向けの講座の講義にも出向きました。
その中で「金融とは何か」をお話しするときに、以下の話からはじめました。それが「余ったお金でできる3つのこと」です。
「使う」「持つ」「貸す」
給与収入20万円の人が1か月生活し、2万円が余ったとします。
というより、家計はお金が余るように生活するのが基本です。
経済全体でみれば家計は黒字主体といわれ、わが国の家計金融資産は現在2000兆円を超えています。
さて、余った2万円の使い道ですが・・・ひとつめは「使う」すなわち消費することです。
デパートに出かけて買い物や食事をし、楽しいひとときをすごしたとします。お金はなくなりますが、消費することで経済全体にとってはプラスに働きます。
個人消費はGDP(国内総生産)の6割近くを占めています。
わが国の景気がなかなかよくならないのは、個人消費が盛り上がらないことが一因です。
ふたつめは「持つ」です。
タンス預金やへそくりと言われるものです。
家庭用金庫やタンスの中のお金を数えるのは楽しいかもしれませんが、お金は「死蔵」しており、日本経済にとってはマイナスに作用します。
タンス預金が増えるのは、いいことではないのです。
みっつめが、お金の必要な人に「貸す」ことです。
お金をどこに貸そうかと考えるとき、いつでも借りてくれるところがあります。銀行です。
友人に貸したら返ってこないことが考えられますが、銀行であればいつでも、または決まられた期日になれば返してくれますし、約束どおりの金利も払ってくれます。
よく「銀行に預ける(預金する、貯金する)と言いますが、貯蓄(=預貯金)は金融機関(銀行、信用金庫など)への貸し出しなのです。
銀行とは
銀行も私企業ですから商売を行っています。
商売は商品を安く仕入れて高く売ることです。
デパートや小売店は8円で仕入れて10円で売るという表現を使いますが、銀行の場合商品はお金ですから、年1%で預かって年2%で貸すという言い方をします。
銀行のお金の仕入れ先のひとつが黒字主体といわれる家計です。
家計ごとのお金は少額でも全体では大きな金額になります。銀行はそのお金を預金金利よりも高い金利で、お金の足りないところに貸し付けて利益を得るのです。
貸付先の中心は赤字主体と呼ばれる一般企業ですが、住宅ローンなどの個人向け貸付もあります。
銀行の機能には「信用創造」というものがあります。
たとえば、銀行が1000万円の1年定期預金を得たとします。1年間は払い出しされませんので、これを元手に貸し出しをおこないます。
ある企業が800万円の融資を申し込んだとします。貸出審査をした結果、OKとなれば、その人の預金口座に800万円と記帳します。
これで銀行の預金残高は1800万円になります。預金が預金を作るのです。この繰り返しが「信用創造」です。
家計も貸出審査を
このように銀行はお金を貸すときに貸出審査をおこないますが、家計からの預金が金融機関への貸出なら、家計も貸出審査をおこなうべきです。
貸出審査というと難しそうですが金融機関の評判や格付機関がおこなう格付け、株価などが参考になります。
「自分の貸したお金はどうなるのか、どうなっているのか」を考えることも重要です。
また、金融機関は、預かったお金を貸出に回すほか、国債や社債、株式などの有価証券を購入したりしています。
家計(個人)も同じように行動することができます。国債を購入するのは国への貸出ですし、社債を購入するのは企業への貸出です。
株式の購入は企業への出資で、会社の収益から配当を得ることができます。
ただし、これらの貸出しは、貯蓄ではなく投資と呼ばれ、価格変動リスクにより中途換金すると元本を割り込んだり、投資先が倒産する恐れもあります。まずは銀行への貸出しである貯蓄からはじめ、投資は余裕資金でおこなう次のステップだと考えてください。
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