円高時の外債運用に関して 【2010年 第4回】

【2010年 第4回 円高時の外債運用に関して】相談コラム

恩田 雅之プロフィール

 

 

 

 

 

 

 

 

相談事例

 ●相談者 Aさん(50歳)

 ●相談内容

3年前に購入したニュージーランド建ての社債が償還になります。購入した時よりも現在は円高になっていますので為替でマイナスが出ています。償還後にどのような運用をしたらいいでしょうか。

老後資金の準備のために運用したものなので、償還後すぐ使う予定はありません。

・購入時の為替レート

   1ニュージーランド・ドル 80

・現在の為替レート

   1ニュージーランド・ドル 65

・購入金額     

   300万円(37,500ニュージランド・ドル)

   額面金額で購入。

・利率        5.9

 

回答

外国の債券で資産運用する時に注意するポイントは、為替の変動です。

償還された社債の元本をニュージーランド・ドル(以下NZドル)から円に換えた時、為替レートにより円ベースでの債券価額が変わります。

Aさんのケースでは、NZドルと円の為替レートが、購入時の80円から65円に変わっています。購入時の債券価額300万円(円ベース)は、償還時に現在の為替レート65円で変わらないとすると、債券価額は約244万円(円ベース)になります。

3年間に受取る利子はNZドルで、6637.5NZドル(年間2212.5NZドル)税引き前です。

*年間の受取利子 37,500NZドル×5.9%=2212.5NZドル

債券価格と受取利子を合計しますと、

37,500NZドル(債券価格)+6637.5NZドル(受取利子)=44,137.5NZドル

になります。

為替手数料を考慮しないで、44,137.5NZドルが300万円になる為替レートは、

300万円÷44,137.5NZドル=約68円です。

仮に為替の交換手数料が2円だとすると、NZドルに対して70円を超えた円安になると為替差益が発生します。

Aさんが保有していますNZドル建ての社債が、償還した後の運用方法として、3つの方法が考えられます。

1つ目は、NZドルから円建てMMFや円預金に運用を切り替えることで、今後の為替変動のリスクを回避する。ただし、現在の状況では為替による損失が発生します。また、ほとんど利子収入が見込めない運用になります。

2つ目は、NZドルのままNZドル建てのMMFに運用を切り替え、円安になることを待つ方法があります。

この運用方法により、債券価格の変動リスクは無くなります。

しかし、為替変動のリスクは残ります。今後さらなる円高により、為替による損失がさらに増えることもあります。また、NZドル建てMMFの現状の利回りは2%程度ですから今までの高利回りの運用は期待しづらくなります。

3つ目は、NZの国債やNZドル建ての社債を購入することで、高い利回りを維持する運用を続け、利子を受取りながら為替差益が出るまでの円安水準になるのを待つという方法があります。この場合は、為替の変動、債券価格の変動と2つの変動要因が残ります。

Aさんの場合は、老後まで10年以上の期間があります。ある程度リスクを取ることが可能かと考えます。

NZドル建てのMMFで運用されるか、償還までの期間の短いNZドル建ての既発債などで運用し、為替の動向を見ながらNZドルよりも既発債の種類が多い、流動性の高い米ドル建て債券やユーロ建て債券へ切り替えられてはいかがですか。 

 

 

 

 

 

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