【2014年 第3回】長い間、会社を休まなきゃいけなくなりそうな時
– がんと共に生きていくためのお金のアドバイス
川崎 由華 (カワサキ ユカ)
一般社団法人がんライフアドバイザー協会/代表理事
治療費のこと、収入のこと、家族の生活のこと…がんサバイバー(※)の方だからこそ、がんと共に生きていくからこそのお金の悩みはあるでしょう。経済面の解決は、がん治療に前向きになれたり、仕事を無理なく続けられたり、家族とうまく関われたりといった精神面への解決にも繋がります。がんに打ち克つといった身体面への解決に繋がる可能性もあるでしょう。
こちらの連載コラムでは、がんサバイバーの方が直面するお金の悩みに対して、アドバイスを綴っていきます。
現役で働いている方が、がんになった時には、治療や検査のために仕事を休まなければならない時がでてきてしまいます。
入院中はもちろんのこと、通院中は通院の日だけでなく、抗がん剤治療の副作用で体調が優れず、勤務できない時もあるでしょう。
休まなければいけない期間が長くなった時、会社員の方はどのような形で会社を休み、どのように収入を得ることができるのでしょうか。
勤務先の私疾病休職制度を確認する
まずは自身が勤める会社の就業規則を確認してみましょう。
労働法令で規定されているわけではないので、必ずとは言えませんが、業務以外の理由で病気やケガを患い、その療養のために勤務ができなくなった場合のために「私傷病休職制度」を設けている会社があります。
私傷病休職制度とは、療養に専念するために従業員の立場を維持したまま一定期間の就労を免除するもので、続くと解雇の対象になってしまう欠勤とは全く違う扱いになります。
会社によってはその休職期間もお給料の全部もしくは一部が出るところもあり、精神面だけでなく経済面においても、治療を続けていくがん患者さんにとって心強い制度だと言えますね。
ただし、会社が定めている一定期間が過ぎても復職できなかった場合には、自然退職や解雇になってしまうこともやむを得ません。
事前にその期間も尋ねておき、体調と相談しながら復職のタイミングを計れるといいですね。
一部お給料が出ていても傷病手当金の申請をしておく
休職中でも得られるお金には、健康保険から支給される「傷病手当金」があります。
傷病の療養のために仕事を3日間連続して休んだ時に、4日目から一日あたり標準報酬日額(おおよそお給料の日給)の3分の2が最長で1年6ヶ月間支給されるので、収入の確保になります(法定給付)。
また加入している健康保険によっては、付加給付として更に上乗せして支給されるところがあったり、法定給付の1年6ヶ月を過ぎても一定期間、給付を受けられるところもあるのです。
傷病手当金は、健康保険に加入している会社員ならば、支給条件を満たせば誰もが受けることができるので、たとえ私傷病休職制度でお給料が出ていたとしても、申請は出しておきましょう。
傷病手当金の申請を出すと、健康保険組合が私傷病休職制度から出ている金額と傷病手当金の金額の一日あたりの金額を調べて出します。
その一日当たりの金額が、傷病手当金の方が少ない場合には、私傷病休職制度との差額分の傷病手当金が支給されることになっているのです。
お給料の一部が出ている場合には傷病手当金は出ないものだと思い込み、申請を出されずにいる方もいらっしゃるので、くれぐれも忘れないようにしてください。
つまり、もしずっと仕事ができなかったとしても、私傷病休職制度と傷病手当金の2つの制度によって、会社に在職している立場を維持でき、1年6ヶ月間は途絶えずに最低でもおおよその収入の3分の2を得ることができるのです。
従業員である立場を大切に
健康で勤務していた時と比べると得られるお金は少なくなり、これまでの生活をしながら治療費を捻出していかねばならない状況は、厳しいものもあるでしょうが、収入の見込みを把握できれば、漠然とした不安は取り除けるのではないでしょうか。
たとえ今、勤務できていないとしても、雇用されていること、勤務先の健康保険に加入していることによって受けられるものがたくさんあるということを忘れてはいけません。
そして、勤務先に対してのコミュニケーションも忘れず、自分にあったやり方で報告を続けましょう。
自分の状況を知ってもらったり、これからの見通しを伝えたりしておくことは、復職後に働きやすい環境を作ることに繋がります。
自分が置かれている状況ではどんな制度が利用できるのかを知り、利用していくことは、がんと向き合いながら今後のライフプランを立てていくうえで非常に大切です。
(※)がんサバイバーとは、がんを治療した人だけではなく、がんと診断された直後から、治療中の人、またその家族、介護者も含めたがんの経験者のことです。
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