今の仕事が続けていけない時【2014年 第4回】

【2014年 第4回】今の仕事が続けていけない時
– がんと共に生きていくためのお金のアドバイス

川崎 由華 (カワサキ ユカ)

一般社団法人がんライフアドバイザー協会/代表理事

 

治療費のこと、収入のこと、家族の生活のこと…がんサバイバー(※)の方だからこそ、がんと共に生きていくからこそのお金の悩みはあるでしょう。経済面の解決は、がん治療に前向きになれたり、仕事を無理なく続けられたり、家族とうまく関われたりといった精神面への解決にも繋がります。がんに打ち克つといった身体面への解決に繋がる可能性もあるでしょう。
こちらの連載コラムでは、がんサバイバーの方が直面するお金の悩みに対して、アドバイスを綴っていきます。

 

 

医療の進歩により、がん患者さんの5年生存率の平均は50%を超えるようになっただけでなく、治療を続けながら働くことができるがん患者さんが増えています。
しかし、Cさんのように今までの仕事は困難になってしまうケース、働きたくても治療と仕事の両立を支える職場環境でないケースなど、がん患者さんの就労の問題が増えているのが現実で、国としても深刻な問題となっています。

退職を考える前に、まずは職場内の部署異動が可能かどうか

退職を考える前に、まずは職場内の部署異動が可能かどうか
がんによる仕事や収入の悩みを、誰にどう打ち明けていいのかが分からず、一人で思い悩んでいる方の多くが、早い段階で退職を考えられているようにお見受けします。
しかし退職するということは、今の会社に雇用されていることによって受けられている保障や制度を手放してしまうことになり、収入だけでなく社会保障の面でも大きなダメージを受ける可能性があります。
退職は最終手段として考えましょう。

今の仕事が続けられなくても、できる仕事が別の部署にはあるかもしれません。
自身の状況を理解してくれ、自分の味方になってくれるであろう直属の上司や同僚、産業医などに、業務の協力や配慮をしてもらえるかどうか相談してみましょう。
これまでに培ってきた人間関係がこういう際に必ず活きてきます。

それでも現実問題として、勤務先の制度や経営状況などによっては、退職という決断をすることになる場合もあります。
そうなると、次の就職先を探しながら退職の準備を進めたいところですが、体力的、精神的にもなかなか難しいでしょう。
退職して勤労収入がストップしたら、収入は公的制度から得られるものが頼りになってくるため、在職中からしっかり制度を把握し、確実に手続きを進めていかねばなりません。以下に、利用できる制度の注意すべきポイントをまとめました。

退職後も傷病手当金を受給していく重要なポイント

会社を休職して傷病手当金を受給している中で退職する際には、注意すべき点があります。
それは、退職日当日に引き継ぎや手続きで出勤し、会社からその日の給与が支払われると、退職後からの傷病手当金が受給できなくなってしまうことです。
引き続き受給できる要件は、「資格を喪失した際(退職日当日)に現に傷病手当金を受けていた」ことであるため、退職日に出勤する=給与が支払われる=働けるとみなされると不支給となるのです。

また、退職後の傷病手当金の支給要件である「現に受けていた」というのは、全額を受けていただけでなく、一部しか受けていなかった、もしくは、申請したものの私傷病休職制度でお給料が出ていたために傷病手当金が貰えていなかった場合も該当します。
傷病手当金は退職後に再就職ができるようになるまでの一つの大きな収入となります。
よって、在職中に傷病手当金の申請を出しておき、手続きのために出勤が必要であれば退職日当日を避けた日程で組んでもらえるように、会社と相談しましょう.
(休職中の傷病手当金については、先月のコラム「2014年 第3回 長い間、会社を休まなきゃいけなくなりそうな時」 をご参考にしてください。)

がんでも障害年金がもらえる可能性

がんでも障害年金が受給できることをご存知でしょうか?
在職中にがんが見つかり、1年6ヶ月が経過してもまだ治療で十分な効果が得られておらず、これまで通り働くことに支障がある状態だった場合には、障害厚生年金3級に該当する可能性があります。
つまり、仕事に就くには厳しい状態だと思われた場合には、傷病手当金の受給しながら障害年金の申請の準備をしておくといいでしょう。
障害年金の申請のための書類は複雑で大変ですが、傷病手当金とは違って受給できる期間に定めはないため、申請が認められるとかなり大きな収入となるのです。

失業給付の受給期間延長を忘れない

よく、退職したら雇用保険から失業給付が貰えるとおっしゃる方がいますが、働けなかった場合に受給できる傷病手当金と、働けるから求職活動中である場合に受給できる失業給付を、同時に受け取ることはできません。
そのため、傷病手当金を受給するならば、失業給付は受給期間延長の申請をしておきましょう。
3年以内に体調が落ち着き、再就職活動を始める時には就職活動を支える収入となるでしょう。

支出の見直しもしていく

満たさなくてはならない条件はたくさんあるものの、このように公的な制度をうまく活用できれば、収入は途絶えることなく継続していくことが可能ではあります。
しかし、勤務していた頃のような額の収入が得られるわけではないことから、支出の見直しをしていくことも必要になってくるでしょう。
今のあなたにとって最優先は治療費ですから、住まいや生活の中で見直せるところを、家族にも相談してみながら検討してみてはいかがでしょうか。

(※)がんサバイバーとは、がんを治療した人だけではなく、がんと診断された直後から、治療中の人、またその家族、介護者も含めたがんの経験者のことです。

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