長引く治療に家計の固定費を見直したい!【2014年 第5回】

【2014年 第5回】長引く治療に家計の固定費を見直したい!

川崎 由華 (カワサキ ユカ)

一般社団法人がんライフアドバイザー協会/代表理事

 

 

治療費のこと、収入のこと、家族の生活のこと…がんサバイバー(※)の方だからこそ、がんと共に生きていくからこそのお金の悩みはあるでしょう。経済面の解決は、がん治療に前向きになれたり、仕事を無理なく続けられたり、家族とうまく関われたりといった精神面への解決にも繋がります。がんに打ち克つといった身体面への解決に繋がる可能性もあるでしょう。
こちらの連載コラムでは、がんサバイバーの方が直面するお金の悩みに対して、アドバイスを綴っていきます。

 

 

 

 

長期化した場合のがん治療の治療費負担

経済的な理由でがんの治療を中止もしくは変更する患者さんは、2010年時点で45,000人にのぼるというある調査結果が発表されています。
その大きな背景には、がん治療の高額化かつ長期化があります。
治療を始めて2年とおっしゃるDさんのように、がん治療は何年という期間になることも珍しくありません。

健康保険に加入している方、つまり保険証を持っている方は誰でも、高額療養費制度を利用することができ、医療費の自己負担は軽減されるとはいえ、長期間続くとなれば非常に厳しいことは推測できます。
例えば、一年間高額な抗がん剤を使って治療し、毎月、高額療養費制度を利用するとします。
4ヶ月目からは医療費の1ヶ月の自己負担額は44,400円(一般の場合)と限度額が下がるものの、44,400円の支出が一度きりではなく、毎月続くことになるのです。

治療が長期となってくると、コンスタントにかかる治療費が見えてくると同時に、治療費は特別な支出ではなく毎月の決まった支出であると、捉え方が変化してきます。
そしてDさんのように、毎月の家計のやりくりの中から、治療費を捻出できるようにしたいと考えるがん患者さんのご相談も少なくありません。

がん患者さんの保険の見直し

一般的に家計の見直しには、毎月必ず決まって必要になる費用(固定費)、例えば家賃や住宅ローンといった住居費、駐車場代、保険料、通信費、習い事費用などに無駄がないかをチェックすることが大道です。
その際、がん患者さんが一番気をつけなければいけないのは保険の見直しです。

毎月の保険料の支払いを無くすため、いっそ生命保険を解約すればどうか、そうすれば解約返戻金も受け取れて、今の自分には一石二鳥ではないか、と考える方がいらっしゃいます。
万が一の時に自分たちが遺されるお金よりも、生きるためにお金を使ってほしいと 、解約を望まれるご家族の方もいらっしゃいます。

しかし、生命保険の主契約部分を解約してしまうと、特約も解約されてしまいます。
特約で入院給付金や手術給付金など医療保険機能がついているのであれば、その保障を失ってしまうことになるのです。
ご家族とよく話し合われた結果、生命保険を解約という手段を選ばれるのであれば、医療保険機能が活かせる額は残した形での一部解約という形を検討しましょう。

がん患者さんの住宅ローンの見直し

また、低金利の今、住宅ローンは借り換えをすることで、毎月の返済額を減らせる可能性があるかもしれないと、ご相談をお受けすることがあります。
しかしながら、借り換えというのは別の銀行で新しく住宅ローンを組み直すということですから、ローンを返済できるかどうかを判断するために、現状での経済面と健康面の審査が行われるのです。

住宅ローンの中には、団体信用生命保険が任意のために健康面の審査は問われないものもありますが、前年度が治療で思うように働けずに年収が下がっていると、借りたい額が借りられないというケースもあるでしょう。
仮に借りられたとしても、団体信用生命保険に加入をせずに住宅ローンを借りることのリスクと家族で十分に話し合い、その際の対処法が明確になっていることが絶対条件だと考えます。

借り換えは無理だったとしても、返済が苦しい状況だと金融機関に伝え、現在の住宅ローンの条件を変更してもらえるよう掛け合ってみることは、できる見直しの一つです。
自分では金融機関との交渉が難しいと思われるならば、ファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。

お金の困りや不安はファイナンシャルプランナーへ

高額ながん治療を続ける中で、お金の悩みを抱えてしまうものの、主治医の先生には打ち明けられないがん患者さんもいらっしゃるでしょう。
また、がん患者さんからお金の悩みを打ち明けられるものの、専門分野ではないご相談に、戸惑われる医療従事者の方もいらっしゃるでしょう。
そんな時に、医療従事者とがん患者さんの間に入り、お金の困りや不安を解消する手助けができる存在がファイナンシャルプランナーであり、私は一人でも多くのがん患者さんのお役に立てるようにと活動を続けています。

(※)がんサバイバーとは、がんを治療した人だけではなく、がんと診断された直後から、治療中の人、またその家族、介護者も含めたがんの経験者のことです。

 

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