【2016年 第1回 凍らない油】「海賊とよばれた男」がもっと楽しめる!原油の話 PartⅡ
三次 理加(ミツギ リカ)⇒ プロフィール
「海賊とよばれた男」は、石油を武器に世界と戦った日本人を描いた歴史経済小説。
昨年、この本に関連したコラムを執筆したところ、とてもご好評いただきましたので、調子にのって、続編を執筆することにいたしました。
ご笑覧くださいませ。
1)原油の種類
「海賊とよばれた男」では、満州鉄道を舞台に、外資系会社と主人公が「寒さに強い油」を競う場面があります。
さて、ここで皆様に質問です。
原油には、どのくらいの種類があるかご存知でしょうか?
正解は300種類以上です。
ちなみに、日本は28ヶ国から101種類の原油を輸入しています(注1)。
たとえば、平成26(2014)年に、輸入国トップのサウジアラビアから輸入した油種は、アラビアン・ライト、アラビアン・ヘビー、アラビアン・ミディアム、アラビアン・エキストラ・ライト、アラビアン・コンデンセート、アラビアン・スーパーライト、カフ・コンデンセート、アラビアン・ライト・ストレート・ラン・フューエル・オイルと8種類ありました。
注1:資料「平成26年(2014年)資源・エネルギー統計年報」/経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部
一般的に、原油は、産地・物理的性状・化学的性状によって分類されます。産地は、産出地域や油田名を冠し、たとえば「中東産原油」、「ミナス原油」というように分類されます。
2)物理的性状
物理学的性状は、「API度」という比重表示法で分類されます。API度とは、米国石油協会(American Petroleum Institute)が定めた、原油及び石油製品の比重を表す単位のこと。
水と同じ比重を10度とし、数値が高ければ「軽質」、数値が低ければ「重質」とします。
数値が大きくなるほど原油からガソリンや灯油などが取れる割合が高いため(=得率が高い)、一般的に、比重が高ければ高いほど、割高に取引される傾向があります。(図表1参照)
3)化学的性状
化学的性状は、原油に含まれる硫黄分の量と、炭化水素のタイプ別の2種類により分類されます。
【硫黄分】
硫黄分とは、原油に含まれる遊離硫黄、硫化水素等の不純物を指します。
硫黄分の含有量が少ない原油を「スイート原油」、多い原油を「サワー原油」と呼びます。
脱硫コストを減らせるため、一般的には「スイート原油」のほうが割高に取引される傾向があります。
たとえば、ニュース等でよく取り上げられる「WTI(West Texas Intermediate)原油」は、その正式名称「Light Sweet Crude Oil(軽質低硫黄原油)」からもわかるようにスイート原油。硫黄分は0.2%です。
一方、中東産原油はサワー原油、硫黄分はおよそ2%です。
我が国は中東依存度が高いため、脱硫装置などの2次装置により精製を行っています。
【炭化水素】
炭化水素は、パラフィン基原油、ナフテン基原油、混合基原油と、大きく3つに分類されます。
パラフィン基原油は、パラフィン系炭化水素を多量に含んだ原油、ナフテン基原油は、ナフテン系炭化水素を多量に含んだ原油、混合基原油は、パラフィン基原油とナフテン基原油の中間の原油を指します。主な特性は、図表2の通りです。
以上、原油の種類を簡単にご紹介しましたが、外資系会社、主人公、それぞれが使った原油はどの種類の原油か、わかりましたか?
「なんだったっけ?」と思われた方は、もう一度「海賊をよばれた男」を読み返してみてくださいね。
きっと新たな発見があることでしょう。
次回をお楽しみに。
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