【2016年 第2回 石油製品の精製と価格変動要因】「海賊とよばれた男」がもっと楽しめる!原油の話 PartⅡ
三次 理加(ミツギ リカ)⇒ プロフィール
「海賊とよばれた男」は、石油を武器に世界と戦った日本人を描いた歴史経済小説。
皆さんは、原油からガソリンや灯油等の石油製品がどのように作られるのか、ご存知ですか?
1)石油製品の精製
「海賊とよばれた男」では、原油から灯油や軽油等の石油製品を精製する過程について説明する箇所があります。
文章だけではわかりにくいかもしれませんね。
そこで、本稿では図表をご覧いただきながら、精製過程を説明いたしましょう。
まず、原油を加熱炉で350℃に加熱します。原油は蒸気となり、高さおよそ50mの常圧蒸留装置に送られます。
常圧蒸留装置とは、蒸留によりガス、ガソリン、灯油、軽油、残油などに分別する操作を行う設備のことです。
蒸気となった原油は、沸点の低い順にガス留分、ガソリン・ナフサ留分、灯油留分、重油留分などに分かれます。
次に、二次装置により、たとえば硫黄分除去など不純物を取り除く工程を経て、ガソリンや灯油等の石油製品ができあがります。
2)石油製品の価格変動要因
日本は米国、中国に次ぐ原油輸入大国。ほぼ100%を輸入に頼っており、しかも、その9割近くを中東地域に依存しています。
そのため、日本における石油製品の価格変動は、原油・為替動向、中東情勢に左右されます。
上記に加え、石油製品自身が持つ価格変動要因もあります。供給については、3つ。
一つ目が元売り(大手販売業者)の動向。二つ目が連産品としての特性。
前述したように、ガソリンや灯油等の石油製品は、原油という一つの原料から、同時に、一定の割合で生産される「連産品」のため、連産品ならではの特性を有します。
それは、ガソリンだけ、灯油だけ、のようにある石油製品だけを大量に生産することが難しい、ということです。
たとえば、ガソリンを多く生産しようとすれば、灯油等ほかの製品の生産量も多くなります。
仮に灯油が供給過剰の時、ガソリンの需要増加に合わせてガソリンを大量に精製すると、灯油の在庫はさらに過剰になる、ということです。そのような場合には、輸入により対応します。
3つ目は、輸出入動向です。
需要動向については、景気動向と季節の2つが挙げられます。
「景気はわかるけど、季節?」
と不思議に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
たとえばガソリンの需要は、ほぼ全量が自動車向けです。
そのため、年末年始、夏季休暇等の大型連休の消費動向が需要に反映されます。
好天なら需要増加、悪天候なら需要減退。
さらに、夏場はカーエアコンの稼働が燃費を左右するため、気温も要素の一つとなります。
また、灯油の主な需要は暖房向けです。そのため、冬場の天候や気温が需要に反映されます。
加えて、秋口から冬に向けて在庫を積み上げてくため、在庫動向も要素の一つとなります。
ところで、石油製品の国内需要状況についての情報は、どこで手に入れることができるのでしょうか?
マーケット関係者が注目しているのは、石油連盟が公表する「原油・石油製品供給統計週報」です。
このデータは、毎週水曜日正午に同連盟サイトで公開されます。(有償会員は、毎週火曜日夕刻)
原油から石油製品を精製する過程や石油製品の特徴を理解したうえで、「海賊をよばれた男」を読み返してみると、以前とは違った世界が見えるかもしれませんね。
次回は、石油精製施設についてご紹介します。お楽しみに。
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