【 2010年 第1回 】 2010年波乱の時代 資産運用に必要ないまどきの経済知識
有田 宏 ⇒プロフィール
写真は2006年1月までFRB議長を務めたアラン・グリーンスパン氏の回顧録”The Age of Turbulence”。
邦題は「波乱の時代」。出版されたのは2007年。
その後2007年8月のサブプライム問題の表面化。
2008年9月のリーマン・ショック。
これらに端を発した世界的な金融危機と不況。
皮肉なことにその後の出来事を案じさせるようなタイトルになっている。
内容は自身の生い立ちから、以外にもジャズのサックスプレイヤーから民間のエコノミストを経て、ニクソン政権よりアメリカの経済政策に深く関わりを持つようになり、その後の歴代政権に対する考えも述べている。
グリーンスパン氏は本来共和党とのつながりが深く、そのなかでもフォード、レーガン、G.H.W.ブッシュ(父)については高く評価している。
ニクソンについては人格的な問題、G.W.ブッシュ(子)は政権内の問題のため評価は低いようである。
一方民主党のクリントン政権は当初の懸念とは違いレーガン・ブッシュの経済政策を踏襲したことにより高い評価になっている。
新興国に関しては中国に対しては非常に好意的な表現となっているが、ロシアについてはソヴィエト時代からの全体主義的傾向の復活に対する懸念も感じているようである。
いづれにしても、今後の世界経済の方向性としては中国、ロシア、インド中南米に多くのページを割いていることにより、今後新興国のウェイトが強くなる方向性にあると考えていることは間違いがないであろう。
上の表は2009年10月にIMFが公表した”World Economic Outlook”の主要国の実質GDPと消費者物価の変化率。
実質GDPは2010年よりプラス成長になる見通しだが、先進国は高くても2%台の低率成長に甘んじる一方、BRICs各国、その中でも中国とインドは6~9%の高い成長を維持する予想である。
特に中国は2010年の名目GDPが日本を超える見込みである。
本来であれば昨年にも日本を超えると思われていたが、円高によるドル換算での数字が大きくなったため、2009年は日本が世界第2位を保つようである。
消費者物価上昇率は2010年よりプラスになる予想だが、日本のみは当面マイナスが続く見込みとなっている。
BRICs各国は4~9%先進国に比べて高い物価上昇が予想されているが、中国のみは0~1%台と低くなっている。
IMFの見通しでは中国が高成長と低インフレという最も望ましい成長経路を辿ることになる。
当面が世界経済の動向の鍵を握るのは中国になるのだろうか。
ただし、中国の持続的成長のためには資本の対外自由化をより進めることが必要不可欠になるであろう。
その時には人民元を現状のようにドルに固定させることは不可能となる。
中国経済の成長に伴い人民元の自由化のスピードもより速めていかなくてはならないであろう。
私見を踏まえたうえでの結論として、今後の世界経済の鍵を握るのはやはり中国であろう。
13億の人口は生産力ばかりではなく消費市場としても大きなウェイトを持っている。
沿岸部は経済成長が著しいが、それが内陸部に進むと計り知れないインパクトがある。
さらに内陸部の発展が東南アジアや中央アジアと結びつけば、それは“21世紀のシルクロード”と言えるほど世界の動きを大きく変えるものにもなりうる。
一方、抱える問題も多い。為替のほかに、共産党の一党支配による開発独裁体制の限界。
チベットやウイグルなどの民族と宗教の問題。
これらに対し中国政府はどのように対処していくのか。
これがこの先10年間の大きな課題であろうし、経済規模を考えればそれは中国だけの問題ではなくなってきている。
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