マイアドバイザー® 菅野美和子 (スガノ ミワコ)さん による連載コラム(不定期)です。
『世帯分離』のあれこれ 1回目のテーマは「世帯分離は有利?不利?」です。
現在は核家族が多く、2世代、3世代がいっしょに暮らすケースは少なくなってきていますが、多世代が同じ家で暮らすときに、世帯分離をすすめられることがあります。
世帯分離が有利なのか、不利なのかは、なかなかむずかしい問題です。
まずは、世帯とは何か、世帯分離とは何か、基本的なお話から始めます。
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そもそも「世帯」とは?
そもそも「世帯」とは何でしょうか。
「同じ家に住み、家計(財布)をひとつにしている人々の集まり」というと、わかりやすいでしょう。
「同じ家でいっしょに生活する家族」といえば、さらにイメージがわきますが、世帯を構成する人々は、親族とは限りません。
親族関係にない人が、同一世帯を構成するケースもあります。
ただし、ルームシェアが目的で同じ家に住んでいる場合は、家計は別ですので、同一世帯ではありません。
それぞれが別の世帯です。
反対に、家族であっても、同一世帯ではないこともあります。
単身赴任中の人、1人で暮らす学生、介護が必要になり施設で暮らす人などは、もともと家族ですが、別世帯となっています。
世帯主とは、その世帯を代表する人です。
世帯主は、その世帯で収入が最も多く、中心となって世帯を維持している人が妥当だと一般的に思われています。
そのため、世帯主になっているのは夫や父親が多いでしょう。
しかし、妻や母親が世帯主となっても何も問題はありません。
何らかの事情で子どもだけの世帯となっている場合は、子どもが世帯主となります。
世帯主を変更したいときは、役所へ届を出すことで簡単に変更できます。
世帯と保険料や税金の関係
どのようなまとまりでひとつの世帯を構成するかによって、保険料や税金関係など、お金に関する影響が出てきます。
世帯ごとに判断され決定される制度が多く存在するからです。
保険料などの負担、利用料などの負担に影響が出るため、同じ家に住んでいながらも、同一世帯にするか、別世帯にするかで金銭的な負担に違いが生じます。
年金収入のみの高齢者夫婦と会社員である子ども夫婦が同居しているケースについて、考えてみましょう。
親夫婦の年金だけであれば、住民税(市区町村民税)の非課税世帯となるのに、子ども夫婦の所得が合算されると、非課税世帯とならないケースはよくあります。
現役の会社員が住民税非課税になるようなケースは、そう多くありません。
非課税世帯は各種保険料や利用料が軽減されるなど、金銭的な負担が軽減されます。
国民健康保険・後期高齢者医療保険では、非課税世帯と課税世帯では保険料が異なります。
介護保険料も同じです。
親夫婦世帯が非課税世帯となるのなら、世帯分離することで、経済的なメリットが生まれます。
限られた年金収入で暮らす世代としては、負担が少しでも軽減されるとたすかります。
このように、親夫婦だけなら非課税世帯、子ども夫婦まで含めると課税世帯となるというケースでは、世帯分離で経済的な効果が期待できます。
このようなときに「世帯分離」が使われます。
しかし、世帯分離の本来の目的は、経済的な軽減をはかるものではありません。
結果としてはそのような経済的メリットが生まれますが、あくまでも、目的は「生計を分けること」つまり、「別の財布でそれぞが暮らしている」という別世帯宣言のようなことです。
世帯分離にはデメリットもある
世帯分離がすべてにおいて経済的な効果があるかというと、そうではありませんので、注意が必要です。
デメリットも数々あります。
子どもが会社員の場合は、会社の福利厚生についても注意しましょう。
親を対象に扶養手当が支給されるという会社は多くないと思われますが、扶養手当が支給される場合、住民票で同居確認することが一般的です。
世帯分離すれば、同居が確認できず、手当の対象外となることもあります。
会社の給与規程や福利厚生などについても調べておくとよいでしょう。
デメリットのお話は次回に続きます。
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