マイアドバイザー® 菅野美和子 (スガノ ミワコ)さん による連載コラム(不定期)です。
『世帯分離』のあれこれ 5回目のテーマは「国民年金保険料と世帯分離」です。
国民年金に加入する自営業・フリーランス・無職・20歳以上の学生などは第1号被保険者となり、定額16,520円(2023年度)の保険料を納付しなければなりません。病気などで働けない人、経営がきびしい個人事業主などは、国民年金の負担が大きいと感じることでしょう。そんなときには、国民年金の免除制度があります。ところが申請に行って「免除に該当しません」と言われたら、がっかりしますね。免除制度の対象者になるかどうかに、意外にも「世帯分離」が関わってくるのです。
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国民年金保険料の納付義務は誰にある?
「国民年金の保険料、高いなあ、払えないよ」と思っても、保険料の徴収は待ってくれません。滞納したままにしていると、容赦なく督促の電話がかかり、嫌な思いをします。国民年金の保険料を払う義務は、まず本人にあります。しかし、本人以外にも義務が課せられることをご存じですか。
本人以外にもその配偶者、世帯主に連帯納付義務が!
親と成人した子どもが同居している場合、まず、国民年金加入者である子ども自身に国民年金保険料の納付義務が発生します。
しかし、国民年金の保険料の納付義務は、本人ばかりではなく、本人の配偶者、世帯主にも連帯して納付する義務があります。本人が払えなければ免除申請をすればよいのですが、本人の所得ばかりではなく、本人の配偶者・世帯主の所得が合算されます。そのため、世帯主に一定以上の所得があると免除が認められません。それでも、本人や世帯主が払わなければ、最終的には世帯主が強制執行される場合もあります。強制執行とは、有無をいわさず、預貯金や給料を差し押さえることです。給料を差し押さえられたら、会社に対して面目ない思いをし、信頼を失うことになるかもしれません。
納付猶予という選択も
親の所得のために免除が認められない場合、50歳未満の人であれば、納付猶予制度を利用できます。本人に収入がないとか、一定以下の低収入の場合、納付猶予制度は、本人とその配偶者の所得で判断されます。結婚していなければ本人のみです。
親の所得が多く免除が認められない場合に、納付猶予が認められると、保険料を払わなくてすみます。
免除と猶予
保険料免除と保険料納付猶予には大きな違いがあります。全額免除となっても、その半額は保険料を払ったものとして将来の老齢基礎年金を受給できます。しかし、納付猶予は、あとで保険料を納付しない限り、その間は年金額に反映されません。これは大きな違いです、「払わなくてよい」ということは同じであっても、免除のほうが断然有利です。
世帯分離が有効
ここで「世帯分離」が力を発揮します。世帯分離をすると、親世帯と子ども世帯が別扱いになるので、保険料免除の判定に、親の所得が関係することはありません。世帯分離は別居ではないので、これまでと同じように暮らすことができます。世帯のまとまりを分けるということです。
失業中や、定職に就けない状態のときは、国民年金の保険料もしばらくの間、支払いを止めたいものです。世帯分離を検討するのもいいでしょう。お金のことだけではなく、子どもが親から独立するという意味もこめて考えましょう。
ただし、免除が認められるのは世帯分離をしたあとです。世帯分離の場合、過去についてはさかのぼりませんので、過去分は納付猶予を申請するか、保険料を払うか、検討してください。
免除はなるべく短期間で
それぞれ事情があるでしょうが、免除期間はなるべく短期間としたいものです。免除期間については将来の年金額がゼロにならないとはいえ、本来の年金額より少なくなります。老後はまだ先と思っている人も後で困らないように、保険料はできるだけ支払うということを心に留めてください。
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