平野厚雄 の 実務家FPとして知っておきたい 中小企業の経営者を悩ませるよくある人事労務問題 第4回 社長必見!助成金の不正受給のリスク

平野厚雄です。 私は社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー(CFP®)として、中小企業の人事労務問題を中心に活動しています。

仕事柄・・・中小企業の経営者のみなさんとお話しする機会があります。

そこで、これから1年掛けて、『経営者を悩ませるよくある人事労務問題』を中心にお伝ええしておきます。

平野厚雄プロフィール

 

 助成金とは

助成金は厚生労働省が管轄しているもので、多くの種類がありますが、一般的なものは採用、社員教育、定年延長、有給取得、育児介護休業等の「ヒト」に関するものになります。金融機関からの融資と違い返済は不要となり、助成金を上手に活用できるかどうかが、社内の環境整備や事業の飛躍に大きな影響を与えます。

助成金申請5つのポイント

助成金は多くの会社で活用できるものですが、一定の条件をクリアしていないと受給できません。受給要件の詳細は助成金の種類によって変わるのですが、共通するものとして主に5つありますので、まずはこの5つのチェックしてみていただくことをおすすめしています。

就業規則、雇用契約書等の法定書類が整備されていること(①)。適正な勤怠管理と給与計算がされていること。未払い残業があったり、適正な労働時間管理がされていないと助成金は受給できません(②)。社会保険・雇用保険の加入漏れがないこと。原則、助成金は雇用保険の被保険者に対して支給されます(③)。解雇(会社から一方的に辞めてもらうこと)等の会社都合の退職者がいないこと(④)。労働基準法等の各種法令を遵守していること(⑤)となります。つまり、助成金とは会社として「やるべきことをやっている」からこそ受給できるものになります。

不正受給対策強化

助成金制度は、雇用の安定、職場環境の改善、ワークライフバランスの実現、社員のスキルアップ等、多くの会社で活用されていますが、一方で、不正受給も後を絶ちません。このため、最近、厚生労働省及び都道府県労働局では、不正受給防止対策を強化しています。不正受給とは、会社(社長)が嘘をついて申請受給することですが、それ以外にも、会社の役員、従業員、代理人その他当該事業主等の支給申請、申請書類の作成に関わった者、つまり、会社(社長)以外の方が偽りその他不正の行為をした場合にも当該事業主等が不正の行為をしたものとみなれていますので注意が必要です。なお、厚生労働省では、主に下記の5つのパターンは要注意としてあげています。

1.休業として申請したが、実際には働いている社員がいた

2.雇用関係にない者(業務委託者)を含めて申請している

3.申請内容に誤りがあったが、そのままにしている

4.支給申請は従業員や知人に任せているので安心だと思っている

5.申請は、助成金をよく知る代理人に任せているから問題ないと思っている

(引用:「雇用調整助成金 不正・不適正の受給していませんか?」厚生労働省)

不正受給のペナルティ

不正受給すると、会社として大きなダメージとなります。まず、例外なく会社の情報が公開されます。

【公表されるもの】

・事業主の名称、代表者氏名

・事業所の名称、所在地、概要

・不正受給の金額、内容

これにより、会社の信用は失墜します。さらに悪質だと判断される場合は刑事告発もされる可能性があります。そして、不正受給であることが判明した場合、既に支給した助成金の全額返還と延滞金、違約金に相当する不正受給額の20%が請求されます。さらに不支給とした日、支給を取消した日から5年間は、雇用保険料を財源としたすべての助成金を受けられなくなります。ただし、自主申告制度も設けられております。自主申告を行い、迅速に全額返金すれば、事業主名の公表が原則としておこなれません。

【自主申告の方法】

1.速やかに申請した都道府県労働局にその旨を連絡する

2.要件の合致しないことが分かる書類を労働局に提出する

3.「全体は調査中だが、一部で不適正な部分が見つかったときは、調査中であることも含めて申告をする。

まとめ

会社として助成金はぜひ活用していただきたいですが、大事なことは、「不正受給をしない」ことは当たり前ですが、まず、労働時間・休業時間の正確な把握など、法令に沿った適切な雇用管理を行ことです。このような法令にそった対応を怠っているにも関わらず、助成金を受給しようと考え、申請書をちょっとごまかす、事実と異なることを書いてしまうということが、不正受給につながってしまいますので、注意してください。

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