平野厚雄です。 私は社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー(CFP®)として、中小企業の人事労務問題を中心に活動しています。
仕事柄・・・中小企業の経営者のみなさんとお話しする機会があります。
そこで、これから1年掛けて、『経営者を悩ませるよくある人事労務問題』を中心にお伝えしていきます。
平野厚雄⇒プロフィール
会社は、社員に安全に健康で働いてもらえるように配慮しなければならない「安全配慮義務」というものがあります。そして、この安全配慮義務は法律によって規定されています。
最近、突然出社しなくなった社員への対応への相談が増えています。今回は会社としての3つの対応についてご紹介します。
安全配慮義務の内容としては次のようなものがあります。
〇職場の安全環境の確保
社員が安全に働けるよう、安全装置の設置や危険物の管理等の職場環境を整備します。また、社員が業務中に遭遇する可能性のある危険を未然に防ぐための措置を講じます。具体的には、作業手順の改善や保護具の提供などがあります。
〇健康管理とメンタルヘルスケア
社員の健康状態を定期的に確認し、必要に応じて医療措置を提供します(ストレスチェックやメンタルヘルスのケアも含まれます)。また、社員が自らの安全を確保するために必要な知識とスキルを習得できるよう、教育や訓練を実施します。
〇マニュアル作り
労働災害が発生しないようにするための予防措置やマニュアルや災害が起きた後の対応マニュアルを創ります。そして、万が一災害が発生した場合には、迅速かつ適切に対応します。
会社が安全配慮義務を怠った場合、民事責任として損害賠償責任をおう可能性があり、行政指導として、労働基準監督署などの行政機関から指導や是正勧告を受けることがあります。そして、これに従わない場合、罰則が適用されることもあります。
このように、会社には安全配慮義務が課せられておりますので、社員が突然出社しなくなったり無断欠勤が続いたりする場合は、この安全配慮義務の観点から放置することは許されず、会社としてあらゆることを想定してできるうる対応が必要となります。そして、その対応としては主に4つあります。
①本人への安否確認
会社として考慮することは、事故や事件に巻き込まれた可能性及び自宅等での孤独死(自殺等)です。出社しなくなったケースではまず本人の安否確認をすることが重要です。電話、メール、SNS等、あらゆる連絡手段でまず本人に連絡し、それでも連絡がとれないケースは自宅に訪問し状況を確認します。
②身元保証人や知人への確認
本人に連絡しても連絡がとれない場合は、身元保証人に連絡します。会社として身元保証人をつけていないケースは、履歴書等に実家の電話番号や、緊急連絡先の情報があるのであれば、その連絡先に連絡します。また、同僚社員にもヒアリングを開始します。
③解雇
就業規則に「無断欠勤が30日以上続く場合は、解雇とする」等の規定がある場合は、解雇手続きを行っていきます。この時、下記のような明確なプロセスをふむ必要があります。
1)就業規則にて無断欠勤の場合の対応を確認
2)無断欠勤している日数記録
3)出社命令をだす
4)会社から連絡をしている手段、回数を記録に残しておく
5) 30日間の解雇予告期間を設け解雇予告をする(30日間を開けない場合は、解雇予告手当を支給)
ただし、解雇の意思表示は、相手方に到達してはじめて効力が生じるため、社員が行方不明となっており、家族ですら居所がわからないような場合には、公示送達という手段を使います。
④退職の場合
就業規則に「無断欠勤が30日以上続く場合は、退職とする」と規定されているのであれば、解雇のように解雇予告等は必要ありませんので、上記のような考えうる連絡手段をすべて行い、それでも連絡がとれないとなれば、退職となります。
会社として連絡がとれない社員が在籍していることは、周囲に良い影響とはなりません。したがって、社内のルールにのっとり迅速に厳格に対応することをおすすめいたします。
◾️社員が出社しなくなる理由
会社として社員が突然出社しなくるのは困ります。しかし当然、社員側にも出社しなくなる理由があります。この手の問題を本質的に解決していく上で重要なことは、社員側にたって問題を考えてみるということになります。私の経験上、社員が出社しなくなる理由は、大きく3つです。
① 健康問題(精神的健康・身体的健康)
② 家庭の事情(親族の介護、離婚等)
③ 職場の人間関係(ハラスメント問題等)
これらの理由に対処するためには、社員の健康状態や家庭環境、職場の雰囲気を常に把握し、適切な支援を提供することが重要です。また、定期的なメンタルヘルスチェックや相談窓口の設置も有効です。
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