【2015年 第1回 デフレからインフレへ】インフレに備えて 基礎から学ぶ 投資信託
恩田 雅之(オンダ マサユキ)
2015年のメインテーマは「インフレに備えて 基礎から学ぶ 投資信託」になります。 毎月、メインテーマに関連した内容のコラムを書いていきます。
第1回目のコラムは、最近2年間の日本の物価と為替の状況と「デフレ」と「インフレ」の意味について再確認することからスタートさせていただきます。
はじめに
最近2年間の物価と為替の動向は、<グラフ1>のように物価は上昇、為替は円安の方向に動きました。2014年4月以降は、消費税増税の景況もあり前年比で高い伸びを示しています。
一般的に経済指標等では、消費税分を除いた実質の物価上昇でみていきますが、消費者の財布から出ていく金額は消費税も含んでいます。ここでは、消費税も含んだ前月比でグラフ化しました。
グラフを確認していただきますと、2012年6月(+0.4%)から物価上昇が始まっていることが、わかります。原油価格の下落等により物価の伸び率は緩やかになってきていますが、「デフレからインフレへ」の流れは継続しています。
以下、「デフレ」と「インフレ」の意味についての再確認とそれぞれの経済状況で恩恵を受ける人、負担になる人についてみてきます。
1.デフレとは
継続的に物やサービスの値段が下がっていく状況を「デフレ」といいます。
物やサービスの値段が下がっていく要因としては、景気の悪化により値段を下げる場合と、景気に関係なく新興国等から「安い商品」が輸入されることで物価が下がる(輸入デフレ)等があります。
デフレの時は、今月より来月、今年よりも来年とデフレが継続していれは、金利ゼロのタンス預金でも、お金の価値(商品を買える量)は増加します。
例えば、物価が前年より年率で1%下がると、現金100万円は、1年後に100万円÷0.99=約101万円分の価値になります。その次の年も1%物価が下がれば2年後は、約102万円の価値になり、お金の価値が年々増していきます。
デフレの状況では、既に現金や預貯金を保有し、それを取り崩しながら生活をしている人は、お金の価値が上がる分、現金や預貯金の目減りが緩やなる恩恵があります。
逆に、住宅ローンを組んで購入した人にとっては、「住宅ローン残高 > 住宅価格」といった住宅価格の下落(資産デフレ)になる恐れがあります。
また、物やサービスの値段が下れば、前年と同じ量を販売しても会社の収益は減少していきます。それは、給与を減少させる要因になります。
これから資産形成をしていく人には、デフレは好ましくない状況だと言えます。
2.インフレとは
インフレは、デフレとは逆に継続的に物やサービスが上昇していく状況をいいます。
物価が上昇する要因は、大きく2つあります。
1つが、多くの人がその商品を欲しがり、生産が間に合わない状況で起こる。
需要(ディマンド)が引っ張って(プル)物価を上げていく「ディマンドプル・インフレ」です。
このインフレは、
「需要増加 → 生産拡大 → 会社の収益拡大 → 従業員の給与アップ → 需要増加」
のサイクルによって、物価が上昇していきます。景気を刺激する「良性のインフレ」と言われています。
もう1つが、原材料費や人件費が上がることにより、物やサービスの価格を上げざる得なくなる「コストプッシュ・インフレ」です。
例えば、円安の影響で輸入する原材料や商品の価格が上昇する場合や、労働人口が減ることにより人件費が上昇する場合等です。このインフレは、ディマンドプル・インフレと異なり景気の好不況に関係なく起こり「悪性のインフレ」と言われます。
また、景気の停滞期に起こるインフレは、停滞(stagnation)とインフレ(inflation)を合成してスタグフレーションと呼ばれます。
インフレは、物価の上昇によりお金の価値が目減りしていきます。
デフレの時とは、逆に預貯金を取り崩して生活していく人にとっては、マイナスに働きます。
逆にコストプッシュ・インフレの場合は、住宅等の資産価値が上昇する可能性や給与の上昇が期待できますので、金利の低い時に固定金利でローンを組んでいた人に有利に働きます。
但し、変動金利の場合は、インフレの影響により支払金利上昇する可能性があります。
まとめ
以上、「デフレ」と「インフレ」についての再確認と、それぞれの経済状況で恩恵を受ける人、負担になる人についてみてきました。
現在の日本は、急激な円安による輸入商品の価格上昇から起こる「コストプッシュ・インフレ」の状況かと考えます。
また、日銀による異次元緩和により長期金利(10年普通国債)の金利は0.3%を割り込んでいます(2015年1月13日現在 0.265%)。定期預金も0.025%前後の金利水準にあります。
仮に日銀が目指す毎年2%の物価上昇が達成された場合、国債や預貯金等の安全資産によって、お金の目減り抑えることは困難な状況になります。お金(資産)の目減りを抑えるために、リスク資産(債券、株式、リート等)の活用を考える必要があります。
次回は、リスク資産と付き合うのに必要な知識として「分散投資の考え方」についてみていきます。
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