【2015年 第12回 投資信託の基礎10 ~年代別運用方法~】
インフレに備えて 基礎から学ぶ 投資信託
恩田 雅之(オンダ マサユキ)
「インフレに備えて 基礎から学ぶ 投資信託」というテーマで1月からコラムを書いてきました。今回が最終回になります。年代を「26~64歳」「65歳以降」の2つに分けてそれぞれ投資信託の運用方法について考えていきます。
はじめに
人生におけるマネープランとして「貯める時期」「増やす時期」「取り崩す時期」の3つの時期があります。
「貯める時期」は資産運用するための資金を作る時期にあたります。
「増やす時期」は投資信託や株などに投資をして資産を増やす時期です。
「取り崩す時期」は「増やす時期」で作った資産を運用しながら生活費の一部として取り崩す時期になります。
「貯める時期」は、預貯金などを活用がメインになり、投資信託を活用する前段階になります。
年齢的には、社会人になる18歳、22歳~25歳を想定しました。
「増やす時期」は26~64歳、「取り崩す時期」は65歳以降をそれぞれ想定しました。
以下、「増やす時期」「取り崩す時期」における「投資信託の運用方法」についてみていきます。
増やす時期
この時期は、資産を増やすことが目的になります。
分配金の額よりも基準価額の値上がり重視を目的とした投資信託(ファンド)が選択対象になります。この年代は、主な収入源として給与収入があります。株式など比較的リスクの高い資産での運用も可能かと思われます。株式はGDPと連動性があります。世界の株式にバランスよく分散したファンドなどは世界のGDPの成長に準じた運用が期待できます。
26~64歳と運用期間も長期になります。ドル・コスト平均法(定額購入法)を活用した「時間を味方につける運用」を心がけましょう。一方、コスト面への注意も必要です。
例えば、
Aファンド(信託報酬2%)とBファンド(信託報酬1%)の26~64歳まで38年間の信託報酬にかかるトータルコストは、Aファンド76%(2%×38年)、Bファンド38%(1%×38年)になります。A、Bとも同じ運用成績のファンドでしたら信託報酬の料率の差によりAファンドとBファンドでは、運用成果が38%も違ってきてしまいます。
長期運用では、信託報酬の料率が運用成績に大きく影響する点も考慮してファンド選びが必要です。運用期間の制約がありますが、前回取り上げましたNISAの活用もコストを抑える方法して検討してもいいでしょう。
取り崩す時期
3,000万円を65歳から30年間で取り崩していく場合、毎年受け取れる金額を、年利回り0%、3%、5%で計算しますと、以下の金額になります。
利回り | 0% | 3% | 5% |
年間受取額 | 100万円 | 約153万円 | 約195万円 |
取り崩し時期においても、資産運用が必要であることがわかります。
投資信託を活用した場合、毎年受取額の部分が分配金になります。
但し、分配金を受取る原資(投資資金)が必要になります。上記の取り崩しに比べると、年間受取額が小さくなる可能性があります。逆に投資信託で運用した場合、最終的に元本がゼロにならないというメリットがあります。
また、投資信託を活用した場合、上記の取り崩していく場合と異なり、運用次第で分配金の金額や元本が変動しますので、30年間一定の利回り(分配金+基準価額の値上がり値下がりで計算したトータルの利回り)で運用することできません。
毎年の利回りを平均すると、結果的に3%、5%(*)といった利回りでした、ということになります。年によっては、運用がマイナスになることもあります。
*:確実に3%、5%の利回りが確保できることではありません。
投資信託の分配金を活用する場合、「運用がマイナスの年」「分配金が少ない年」に備えて預貯金などで、ある程度の金額を確保しておく必要があります。
この年代の選択対象となるファンドは、安定的な分配金や比較的高い分配金利回りもの(トータルの利回りを加味する必要あり)になります。債券やリートなどを組み入れたファンドや株式でも配当を重視した企業選びをしているファンドなどが挙げられます。
また、ある程度の年齢(80歳以上、85歳以上)に達したら、投資信託を解約し上記のように、元本を取り崩していく方法に切り替えるのも一案になります。
以上、「増やす時期」「取り崩す時期」の投資信託の運用方法について考えてみました。
最後に、このコラムに1年間お付き合いいただきありがとうございました。
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