【2013年 第3回 自営業者の公的年金について】
自営業者 40歳からのセカンドライフ計画
恩田 雅之(オンダ マサユキ)
今回は、自営業者の公的年金(国民年金)とマクロ経済スライドについてみていきます。
公的年金をみていくに当たり、日本年金機構のHPの「公的年金5つのメリット」を参考にしました。マクロ経済スライドについては、平成24年2月17日に閣議決定した「社会保障と税の一体改革大綱」にて在り方について見直しを検討することになりました。ここでは、見直し前の制度を確認することにしました。
公的年金5つのメリットとは
日本年金機構のHPにありました。公的年金5つのメリットは、
<メリット・その1> 賃金や物価に応じて給付額をスライド
<メリット・その2> 受給権者が亡くなるまで年金を支給
<メリット・その3> 万一の場合の障害・遺族年金も支給
<メリット・その4> 給付費などに対する国庫負担が行われること
になります。
以下、それぞれのメリットについてみていきます。
その1 賃金や物価に応じて給付額をスライド
物価スライドは、賃金や物価の変動によって給付額を変更する制度になります。インフレに強い制度と言えます。私的年金には、無い制度です。
但し、デフレの時に特例制度により物価の下落を給付額に反映しないこともありました。
平成24年度から26年度の3年間で給付額に引き下げることで解消することにしています。
また、年金制度を持続可能と仕組みとして「マクロ経済スライド」を5つのメリットの後にみていきます。相互扶助の影響を受けるのが、この仕組みになります。
その2 受給権者が亡くなるまで年金を支給
国民年金(基礎年金)は、私的年金のように保障期間を設定することにより、生死に関係なく年金が給付されることはありませんが、終身(亡くなるまで)年金が保障されています。
保険料と支給額について生まれた年度毎の保険料と年金給付、比率が日本年金機構のHPの表を参考までに掲載いたします。民間の個人年金保険と比較に活用してみてはいかがですか?
その3 万が一の場合の障害・遺族年金を支給
国民年金は、老齢年金(基礎年金)がクローズアップされますが、障害年金や遺族年金についても注目しておくことが必要です。
障害年金の支給要件は、
1. 保険料納付済み期間(保険料免除期間を含む。)が加入期間の3分2以上ある者の障害。
2. 20歳未満の時に初めて医師の治療を受けた者が、障害の状態にあって20歳に達したとき、または20歳に達した後に障害の状態になったとき。
です。
ここでのポイントは、保険料免除期間を含むというところです。
前年に比べて所得が少ない場合は、保険料を未納にせず、免除申請をすることで、万一に備えることができます。
また、子ども(18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、20歳未満の障害等級1級又は2級の障害者)がいる場合は、子の加算があります。
平成24年度の年金額は、
1級 786,500円×1.25+子の加算
2級 786,500円+子の加算
*子の加算 第1子・第2子 各 226,300円 第3子以降 75,400円
になります。
遺族基礎年金の支給要件は、
被保険者(年金保険料を払っている者)または、老齢基礎年金の資格期間を満たした者が
死亡したとき。(ただし、死亡した者について、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の3分2以上あること)です。
また、平成28年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡月の含む月の前々日までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納が無ければ受けられる特例があります。
支給対象者は、生計維持関係にある、子のある妻、または子になります。
子の要件は、障害基礎年金と同じです。
平成24年度の年金額は、
786,500円+子の加算
*子の加算 第1子・第2子 各 226,300円 第3子以降 75,400円
になります。
国民年金には、障害に対する保障、遺族に対する保障もあることを押さえておきましょう。
その4 給付費などに対する国庫負担が行われること
現在、年金に対する国庫負担の割合は、平成21年度から2分1になっています。但し、2015年の消費税増税以降まで安定的な財源はなく、2014年は、一部「年金交付国債」で賄っています。
国庫負担を2分の1にしたのは、現役世代の過度な保険料の負担を軽減する目的があります。
ですから、所得が少なく全額免除を申請した場合、老齢年金の計算では、国庫負担分2分1は、給付を受けられることになります。
但し、国庫負担とは、税金や国債だということは覚えておきましょう。
その5 支払った保険料は税制上、所得から全額控除されること(社会保険料控除)
ここでは、民間の生命保険控除に比べて、全額控除なので税制上有利であることをメリットとして挙げています。
マクロ経済スライドについて
マクロ経済スライドは、賃金、物価の変動以外に、年金を支える側の減少や平均余命が伸びることにより、年金支給総額が増えて年金財政の持続が難しい場合に、賃金や物価の伸びよりも年金を押さえる仕組みになります。
年金財政が持続可能になった場合、マクロ経済スライドによる調整は行われなくなります。
また、賃金や物価が下がっている時も、マクロ経済スライドは行われず、賃金や物価の下落分だけ年金額が調整されます。今後見直しが検討されている制度なので、ここでは、大まかに押さえておきましょう。
最後に
少子高齢化の進展により、年金制度の持続可能性に対する不安が先行していますが、日本年金機構が掲げている「公的年金 5つのメリット」を参考に、民間の保険を含めた、総合的な判断しましょう。
この記事へのコメントはありません。