住宅ローンプラン実践編③借換えをしないで、住宅ローン金利を下げたケース】【2012年 第7回】

【2012年 第7回】住宅ローンプラン実践編③借換えをしないで、住宅ローン金利を下げたケース】
– ケース別コラム – 住宅ローン

奥田 知典(オクダ トモノリ)⇒ プロフィール

 

一般論もいいけど、やっぱり個別の事例が知りたい!そんなご要望にお応えして、これまで私が実際に相談を受け、対策をとった、『リアルなケーススタディ』をご紹介していきたいと思います。

 

 

□ご相談内容

平成21年に住宅ローンを借り、中古住宅を購入したお客様。3年固定金利ローンを利用していたため、今年金利見直しのタイミングを迎えます。取引銀行から、金利が従来よりも1%上がるという内容の案内ハガキが届き、あわててご相談にお越しになりました。

□ご相談の背景

このお客様は、夫35歳、妻33歳のご夫婦。今は夫婦2人での生活ですが、今後お子様が2人は欲しいと考えておられ、一足はやく平成21年に中古住宅を購入し、住んでおられます。しかし、思ったほど上がらないご主人の給与のこと、そしていずれ生まれてくる子どもの教育資金のことを考えると、少しでも住宅ローンの負担は減らしておきたい、ということから借換え相談にお越しになりました。

□しっかりヒアリングで、借換えメリットを感じるポイントを共有。そのうえで、借換え方針を決定。

まず、今回の借換えに対するご要望をしっかりヒアリングしました。その中で、現在の借入が3年固定金利ローンで年1.5%ということであり、借換え後の支払い負担が極力増えないようにしたいというのが最優先事項であることを確認しました。

その一方で、現在の借入金利年1.5%程度の水準で、10年固定金利ローンに変更できるのであれば、そのほうが安心出来るのでそうしたい、という意向も確認しました。
あわせて、借換えにおける諸費用負担を、極力軽くしたいということも、確認しました。

以上3点を軸に、借換えの是非の検討と、借換えする場合の銀行選びを開始しました。

□やりとりの中で、相談者のホンネを聴き取る。

相談当初は、年1.5%程度の水準で、10年固定金利ローンを提供してくれる銀行選びを軸に話をすすめていたのですが、何度もやりとりをする中で、今回の相談者が最も優先したい事項が、実は「諸費用を極力抑えたい」ことであることが、わかりました。

そこで選択肢の中に、単に他の銀行に借換えするだけでなく、現在の取引銀行と交渉し、金利を引き下げることを加えました。もしそれが実現出来るなら、借換えにかかる諸費用が殆どかからず済み、相談者の最優先事項にお応えできるからです。

ひとまず、他の銀行にて仮審査を通過させ、詳しい条件を確認したうえで、現在の取引銀行にどこまで金利引き下げが出来るかを交渉するという流れで、話をすすめました。

その結果、現在の取引銀行で、10年固定金利で年2.05%(保証料込み)という条件を引き出し、借換えをすることなく、金利の引き下げを実現したのです。

※もし交渉をしていなければ、10年固定金利は2.8%でした。

◇今回のケーススタディのポイント、注意点

今回のポイントは2つ。まずは相談者のホンネがどこにあるのか、話し合いを進めるなかで見定めること。私も当初は、他の銀行への借換えありきでモノを考えていましたが、やりとりをするなかで相談者のホンネに気付くことができました。コミュニケーションを密に、最優先事項は何なのかをしっかり話し合うことが大切なのだと、あらためて気付かされました。

そして、諸費用について慎重に考えること。借換えの場合、諸費用部分も現在の借入残高に上乗せして借換えするケースが多いのですが、安易な諸費用上乗せは避けねばならないと、今回のケースを通じて再確認しました。

特に、保証料と融資(事務)手数料については、慎重な判断が重要です。保証料、融資手数料共に0円という銀行は少数派で、多くの銀行が、そのどちらかを請求します。例えば保証料0円とうたっている某銀行も、そのぶん融資手数料が2%かかります。

借換えに係る抵当権抹消~再設定費用、および印紙代等も考えると、諸費用だけで50万円以上、というケースはゆうに考えられるのです。

今回の相談者は、結果的に諸費用は、金利変更手数料の31,500円のみ。金利は1.5%から2.05%になりますが、3年固定から10年固定へと固定金利の期間が延び、さらに諸費用メリットも大きく、大変満足しておられます。

いまは史上最低水準の金利となっていますが、安易な諸費用上乗せ借換えは避けねばなりません。借換えメリットがあるのか、諸費用についてどう考えるのか。これから借換えを検討される方は、それらのアドバイスを総合的に受けられる、住宅に強いFPに相談をしてから、借換えを検討されることをおすすめします。

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