住宅ローンプラン実践編⑥ 【資金計画をイチから練り直し、家づくりを成功させたケース】【2012年 第10回】

【2012年 第10回】住宅ローンプラン実践編⑥
【資金計画をイチから練り直し、家づくりを成功させたケース】
– ケース別コラム – 住宅ローン

奥田 知典(オクダ トモノリ)⇒ プロフィール

 

一般論もいいけど、やっぱり個別の事例が知りたい!そんなご要望にお応えして、これまで私が実際に相談を受け、対策をとった、『リアルなケーススタディ』をご紹介していきたいと思います。

 

 

□ご相談内容

倉敷市内で一戸建ての住宅を検討中。よい土地がみつかったのだが、将来の不安もあるので、その土地を買う前提で、全体の予算および住宅ローン借入を幾らぐらいにするのが妥当かを相談したい。

□ご相談の背景

このお客様は、夫30歳、妻30歳、長男4歳、長女1歳という4人家族。当該土地を媒介する不動産会社からの紹介で、お越しになりました。岡山県倉敷市内で土地を探していたところ、ようやく好物件が見つかったものの、予算オーバー。もう少し値段の安い別の土地もあり、将来のことを見据えてどちらの土地にすべきか、そして全体の予算と住宅ローン借入を幾らぐらいにすべきかを知りたい、ということで、相談をお受けすることとなったのです。

当初のご予算は3,200万円。ただ、土地が当初の予算よりも200万円オーバーということで、そのぶん予算を引き上げるべきか、それとも当初予定の予算に収まるよう、別の土地にするかを見極めるところからコンサルティングを開始しました。

□ライフプランニングの前に、資金計画を入念にチェック。

このお客様は、自己資金がわずかであり、ほぼすべての資金を住宅ローンでまかなう計画でした。したがって、ライフプランを実施する前に、そもそもの予算設定が適正かどうかをまずは確認しました。というのも、自己資金がないということは、もし途中で予定外の支出があった場合に対処できず、最悪の場合計画が途中でとん挫することもあり得るからです。

土地、建物代金はもちろん、土地の仲介手数料、固定資産税の精算金、地盤改良、外構、エアコン、カーテン、照明。そして登記関係費用、住宅ローン融資手数料や保証料、火災保険料、水道メーター納入金、引っ越し、地鎮祭費用etc・・・、とにかく想定される必要資金をすべて織り込み、再度資金計画を練り直した結果、仮に今回希望の土地を購入するとなると、3,500万円の資金が必要ということがわかりました。

土地代金が200万円増えるだけでなく、諸費用部分も100万円足りなかったという訳です。
もし、ご相談いただくことなくそのまま話が進んでいると、かなりの確率でお金が足りなくなっていた訳ですから、怖い話ですよね。

ということで、この3,500万円の予算が妥当なものかを、ライフプランで検証することとなりました。

□ライフプランで今後のお金の流れをチェック。あわせて土地建物の優先順位を決定。

今回のお客様は、夫婦ともまだ年齢が若く、仮に35年ローンをずっと借り続けたとしても、65歳で返済が終わります。また、お子様が既に4歳と1歳ということで、下のお子様が大学を卒業する22年後も、夫婦は52歳と若く、そこから10年以上夫婦で働けます。

3,500万円を借入した場合のライフプランを検証しても、当初の10年の貯蓄ペースは緩やかで油断は出来ないものの、お子様の成長とともに貯蓄ペースは上がり、大学卒業後は余裕のある家計のやりくりが可能であることがわかりました。

ただし、これ以上借入額を増やすと、当初10年間のやりくりが非常に厳しくなるため、3,500万円が借入の上限であることもわかりました。となると、おのずと建物に配分できるお金の上限も決まります。

このお客様は既にご希望の工務店があったので、3,500万円を、土地優先で配分するか、土地の予算を下げ、その分建物に配分するかを、工務店さんを交え、夫婦で話し合っていただきました。その結果、今回の希望の土地を買い、更に希望の工務店で家づくりが可能という答えが出たので、そのまま話を進めることとなったのです。

◇今回のケーススタディのポイント、注意点

今回のケーススタディのポイントは、お客様および不動産会社、建築会社が立てる資金計画を、入念に検証したところです。特に今回のように、土地と建物で業者が異なる場合、資金計画を誰がとりまとめるのかがとても重要になります。

実際今回のケースでは、当初、不動産会社が立てた資金計画をもとに話を進めていました。もし仮にそのまま住宅ローンを借入していたら、途中で100万円が足りなくなり、慌てて金策に走り兼ねない状況だったといえます。

皆様ご承知のように、住宅ローンを借入するためには審査を通過せねばならず、たとえ100万円でも借入金額を増やそうと思えば、イチから再審査を受けねばなりません。
もし、つなぎ融資が既に実行されていたとなれば、もはや住宅ローンの再審査は受けられず、別の金策が必要となります。仮審査といえども、決してお手軽ではないのです。

幸い、今回のお客様は住宅ローン申込前だったので、作りなおした資金計画をベースに、3,500万円での借入申込を実施。途中でお金が足りなくなることはなく、無事完成し今は新居にて快適な生活を送っておられます。

これから一戸建て住宅を検討される方にとって、綿密な資金計画とライフプランは欠かせません。ぜひ身近で頼りになる、住宅に強いファイナンシャルプランナーを活用し、安心安全の家づくりを実現してくださいね。

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