【2012年 第12回】住宅ローンプラン実践編⑧
【自営業者が、2年がかりで住宅ローン借入を実現したケース】
– ケース別コラム – 住宅ローン
奥田 知典(オクダ トモノリ)⇒ プロフィール
一般論もいいけど、やっぱり個別の事例が知りたい!そんなご要望にお応えして、これまで私が実際に相談を受け、対策をとった、『リアルなケーススタディ』をご紹介していきたいと思います。
□ご相談内容
岡山市内で、店舗併用住宅の新築を希望されているお客様。自営業であるため、住宅ローン借入にとても不安を感じている。しかしなんとしてもマイホーム計画を実現したいので、住宅ローンを確実に借りるために必要なことを、すべて教えてほしい。
□ご相談の背景
このお客様は夫37歳、妻30歳、長男3歳という3人家族。岡山市内で鍼灸院を経営されています。このたび、現在の借家(店舗併用住宅)が手狭になったこともあり、戸建て店舗併用住宅の新築を計画され、建築会社経由でご相談をお受けしました。
ご主人が自営業、かつ奥様が契約社員ということで、住宅ローンが借入できるのかどうか、とても不安に感じておられたのですが、とはいえ今何をすべきか、どんな準備をしておくべきなのかもわからない…。とにかく、不安だらけな状況で相談はスタートしました。
□現状を入念にヒアリング、実態を把握
最も大きな不安が、住宅ローンが借入できるかどうかという部分だったので、まずはお店の経営状況の確認からはじめました。自営業の場合、一般的に過去2~3期分の決算書(確定申告書)の提出を求められます。その期間中の売上、利益の推移等が、住宅ローン審査の可否に大きく影響します。(※当然、銀行ごとに審査基準は異なります)
加えて、自営業の場合、住宅ローン審査で重要なポイントとなる「前年度年収」が、総収入ではなく、課税所得となります。課税所得は【事業収入-必要経費】という形で算出されるためいくら事業収入が多くても、必要経費が多ければ、課税所得は少額となります。 言いかえれば、どんなに収入が多くとも、課税所得が少ない自営業者は、年収の低い人として扱われるため、審査も厳しく、借入できる金額も少額となるのです。
このお客様の場合も例にもれず、ご相談時点での直近の年収、すなわち課税所得は200万円未満。となると、いくら実収入が多くても、そもそも住宅ローン審査の土俵にすら上れません。ご相談時点でいくつか銀行をあたったのですが、申込受付すらしてもらえないところが殆どでした。
□ライフプランを実施し、本当の予算と、必要な借入金額を算出
お客様もかなり落胆し、自分たちには無理なのか…というムードも見え隠れしましたが、いまいちどマイホームへの想いを確認したところ、「ダメな理由でなく、できる方法を考えたい」という強い情熱を再確認できました。
そこであらためて、ライフプランを実施し、住宅、教育、老後資金の優先順位を確認。マイホームへの想いを盛り込んだ、本当の予算を算出しました。ライフプランを検証した結果、その予算で計画を実行したとして、今後の無理のない返済が十分実現可能であることがわかりました。課税所得は低いものの、可処分所得はさほど心配なレベルでなく、加えて総額の3割を捻出できる自己資金を準備されていたことが、ポイントでした。やはり、計画的な貯蓄は大切です。
奥様が、契約社員といっても、長期にその職場で仕事を継続され、また今後も継続雇用が見込まれる業種であることも、追い風となりました。
□借入希望額から逆算した、確定申告と銀行選び
あとは、総額の7割を占める住宅ローン借入を、いかに確実に実行するか。まず取り組んだのは、幾らの課税所得があれば希望の金額を借入できるのかを知ることです。ライフプラン結果をふまえ、借入したい銀行と住宅ローンプランの目処をつけ、その銀行における【返済負担率】(⇒前年度年収に対する、住宅ローンを含む借入の年間総返済額)を調査。借入希望額から逆算し、必要となる課税所得の目安を確認しました。
そのうえで、可能な限り必要経費を削減。無駄遣いをなくすのはもちろんのこと、顧問税理士と相談いただき、税法上認められる必要経費圧縮を可能な限りおこない、必要な課税所得を上回る金額で、確定申告をしていただきました。
そして、その数値を前年度年収として認めていただける時期になったのち、住宅ローンを再度申込。正規の審査手続きを経て、その借入につき承認を受けました。2年越しで周到に準備した結果、住宅ローンを借りることができ、念願のマイホームが実現したのです。
□今回のケーススタディのポイント、注意点
今回のケーススタディのポイントは、まずそのお客様が、マイホーム計画実現のため、私のアドバイスを素直に受け止めてくださり、かつ最後まであきらめず行動し続けたこと。そして、自身のおかれた状況を冷静に判断し、マイホーム計画のため、貯蓄や節約に真摯に取り組み、見事に自己資金を準備し、直近の課税所得も改善されたことです。
「自営業者は不利」といわれますが、残念ですがそれは事実です。会社員の年収は総支給額で見るのに対し、自営業者は課税所得。さらには直近2~3期の決算内容までチェックされるのですから。
しかし、今回のお客様はそのような状況を努力と工夫で乗り越え、見事にマイホーム計画を実現されました。いま、とても幸せに暮らしていらっしゃいます。
実はお伝えした内容以外にも、ローン審査承認のため、解決せねばならない問題は多々あったのですが、ページの都合上、割愛させていただきます。また、機会があればお話しますね。
ともかく、自営業者の方、これから転職、起業をお考えの方は、住宅ローンを甘く見ないことです。確実に住宅ローン借入を実現するためにも、準備は念入りに。住宅取得に強い、実務家FPに相談するのもおすすめですよ。
ということで、2012年も当方のコラムをお読みいただき、ありがとうございました。2013年は、また異なった切り口で、住宅ローンや家づくりについて語っていこうと思います。2013年も引き続き、当方のコラムをよろしくお願いいたします。
1年間、ご拝読いただきありがとうございました。2013年 第1回コラムをお楽しみに!
~ 事務局スタッフ一同より ~
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