【2013年 第4回 結婚と社会保険】女性のための社会保険アドバイス
菅野 美和子 ⇒プロフィール
結婚式は人生の中でも大きなイベントですが、結婚式はスタートにすぎず、その後の生活設計が大切です。結婚による社会保険や税金等の変化についても確認しておきたいことです。結婚するもしないも、生き方の選択肢です。どんな生き方をしても平等であるべきですが、日本の社会保険制度は夫婦や世帯をベースに作られています。結婚すれば何が変わるのか、知っておきたいポイントについてお話しましょう。
結婚による変化
32歳のA子さんは年下の男性からプロポーズされています。出版社で働くA子さんは仕事がおもしろく、やりがいを感じています。残業もあり、ときには深夜におよぶこともありますが、つらいと思ったことはありません。仕事の達成感の方が大きいのです。
結婚も考えないわけではありませんが、仕事を続けていくことが前提ですので、積極的になれませんでした。結婚し、子どもができたら今のような仕事はできないでしょう。
彼はとてもいい人だとA子さんは思っています。
しかし、プロポーズへの返事をためらっています。
「32歳でしょ。今がチャンスよ」と友達に言われます。チャンスとはなんだろう、結婚とはなんだろうとA子さんは考えてしまいました。
結婚による変化はいろいろありますが、A子さんが結婚すると、社会保険にどのような影響があるのでしょうか。
まず、A子さんが結婚後もこれまでどおり働き続ける場合はどうでしょうか。
共働き夫婦の場合、社会保険も税金も、「妻」としての恩恵はほとんどないと考えていいでしょう。
なぜなら、もともと社会保険制度はサラリーマンと専業主婦(扶養の範囲でパートで働く主婦)という家庭を想定しているからです。
厚生年金には夫婦の特典があり、20年以上厚生年金に加入し、65歳未満の配偶者がいると、自分自身の老齢厚生年金に配偶者加給年金額が加算されます。年金には配偶者手当があると考えるとわかりやすいですね。
しかし、共働きでお互いが20年以上厚生年金に加入すると、原則として、年金の配偶者手当はもらえません。
ただし、夫婦それぞれが社会保険料を払うので、それぞれが必要な給付も受けられます。病気などで会社を休めば休業保障としての傷病手当金を受け取れますし、女性の場合、出産前後は出産手当金を受け取れます。
結婚によって加わるものは、夫婦のうちいずれかが死亡した場合の遺族保障です。厚生年金に加入している配偶者が死亡したときに、遺族厚生年金がもらえます。夫婦の場合は、どちらかが亡くなった場合に、死亡保障を用意してあげようということなのです。
ただし、妻死亡により夫が受け取る遺族厚生年金には年齢制限がありますので、若い夫は遺族年金をもらえないものと思ってください。遺族年金は「妻」を中心に設計された制度なのです。
結婚することで、妻は夫の死亡による保障を得られると考えていいでしょう。
では、専業主婦の場合はどうでしょうか。
女性が結婚などで退職すると、健康保険は「扶養」、国民年金は「第3号被保険者」という立場で加入することになり、自分で保険料を負担する必要がありません。
そして、年金制度では、要件に該当すると配偶者加給年金という配偶者手当もあり、優遇されます。
これは何も妻だけに限ったことではなく、妻が働き夫を扶養するというケースもあてはまります。
夫婦の場合は、片方が働けない場合は、「扶養」という立場にある人を守り優遇してあげましょうという制度なのです。
結婚するということは、「あとがある」ということでしょう。どちらかが働けなくなっても、あとひとりの収入があります。そして社会保険制度においても保険料負担のない仕組みで支援してくれるということです。
シングルで生きるということは、すべてを自分ひとりで考えなくてはならない、つまり、「あとがない」ということなのです。
気を付けておきたいことは、「夫婦の特典」が今後どうなるか、不透明であるということです。
第3号被保険者については、国は見直しを考えています。第3号の要件がきびしくなれば、社会保険上の夫婦の特典は減少します。
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