シングル女性と親の介護【2013年 第11回】

【2013年 第11回 シングル女性と親の介護】女性のための社会保険アドバイス

菅野 美和子 ⇒プロフィール

 

 

 

 

 

 

 

人生さまざま、生き方もいろいろ。シングルで生きることの強みは、自分の時間を自由に使えることかもしれません。ひとり暮らしには心細さもありますが、気兼ねのなさもあります。しかし、忘れられないのは親のこと。親が元気なうちはいつまでも「支えてもらう子ども」でいられるのですが、「親を支える子ども」になっていくときがやってきます。

 

「親を支える子ども」

40歳になったA子さんは、出版社で仕事をしながら、自分のキャリアをみがいています。仕事が楽しいと思えるようになってきました。
そんなとき、隣町に暮らすお母さんから電話がありました。75歳のお父さんが家の中で転び、骨折し、入院したとのこと。
A子さんは急いで病院へかけつけましたが、幸い、骨折はひどくはなく、しばらく安静にして、リハビリすれば回復するとのことでした。お父さんも案外元気でしっかりしていて、A子さんは安心しました。
しかし、それがA子さんにとっては親の介護の始まりだったのです。
お父さんは入院中に肺炎を起こしました。高齢者にはよくあることだと聞きましたが、肺炎がよくならず、寝たきりの状態が続きました。骨折は治りましたが、足腰がすっかり弱ってしまいました。
ある程度症状が落ち着くと、退院しなければなりません。
お父さんは自宅へ帰ることになりましたが、退院するときは、入院前よりも状態が悪くなっているようでした。
自宅へ戻っても、以前のように生活できません。お父さんは、介護保険を利用することにしました。訪問介護を利用して、ホームヘルパーさんをお願いしました。

しかし、それでも十分ではありません。お母さんも大変そうで、A子さんは、仕事が終わったあとや休日に、実家へ帰るようになりました。しかし、もともと不規則な出版の仕事のため、A子さん自身もだんだんと疲れていくのがわかりました。
その後、お母さんが体調を崩して寝込んでしまいました。A子さんは仕事を休むことになりました。ちょうど仕事に区切りが着いたときでした。事情が事情だけに、会社の配慮もあって、有給休暇を取ることにしましたが、A子さんは困っていました。いつまでも休むことはできません。
会社の担当者は、親の介護で必要なときには、介護休業制度を利用できることを教えてくれました。
一人の親につき、通算で93日間は介護休業することができて、その休業期間については、雇用保険から介護休業給付金(休業前賃金の40%)を受け取ることもできると聞きました。
しかし、A子さんは、その後のことを考えます。仕事は続けたいと思っていますし、辞めるわけにはいかないのです。
A子さんが悩んでいたとき、お父さん担当のケアマネージャーがアドバイスをくれました。
「デイサービスやショートステイを利用してみませんか。介護保険外のサービスもありますよ」

お父さんは週に4日、デイサービスに通うことになりました。歩くのが困難でも、送迎があるので安心です。そして、朝から夕方まで日中の介護をまかせられるので、家族の負担もかなり少なくなりました。
家庭での入浴は大変でしたが、施設でお風呂に入れるようになり、お母さんの負担も減りました。
そして、宿泊サービスも利用することにしました。
A子さんの仕事が忙しいときや、お母さんの体調がよくないときなど、夜も施設でみてもらえます。
「介護離職」という言葉が聞かれるようになりました。
年老いた親が介護状態になると、子どもが介護のために仕事を辞めざるをえないということです。
介護離職のあと、再就職しようとしても、条件がダウンしてしまったり、希望する仕事がなかったり、問題は続きます。
シングル女性は、生活をひとりで支えなければなりません。困ったことがあるといっても、仕事をやめることは簡単ではありません。
もちろん、シングル女性だけとは限りません。自分の生活を維持していくためには、介護離職は避けたいことです。
親の介護と自分の暮らしの問題、これからもっと増えてくるでしょう。
万能な対策があるとは言えませんが、家族介護を支える制度や施設について、安心して相談できる窓口を知っておくことも大切です。A子さんの場合はケアマネージャーが相談に乗ってくれました。
また、介護に使えるお金を用意しておくことも大切です。介護保険の範囲内なら1割負担の利用料でサービスを受けられますが、介護保険外のサービスを利用することもあるでしょう。
介護に使うことのできるお金をあらかじめ確保しておくと安心です。
A子さんは、いざというときには、いろいろな制度を利用できると知りました。
生活のためだけではなく、今の仕事にやりがいを感じでいるので、A子さんは仕事を続けていきたいと思っています。今後結婚することになっても、自分の夢はあきらめません。
サポートしてくれる専門家をみつけて、いろいろな制度を活用することは、ひとりで生きていく女性にとっては心強いことになるはずです。
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