【2016年 第3回 海外に投資するための金融商品②「海外REIT(その1)」】海外投資のイロハを学ぶ
永柄 正智(ナガエ マサトモ)
前回は海外投資の手段で比較的ハードルの低い金融商品として、「海外ETF」をご紹介しました。
今回と次回では、ここ数年日本でも存在感を高めている「海外REIT(海外不動産投資信託)」について取り上げます。
まず今回は、REITの仕組みや市場規模などについてご説明していきます。
不動産投資の選択肢のひとつ「REIT」
今年の2月16日に日銀のマイナス金利が導入されて以降、国債や金融商品の利回りは低下し、個人による国内外への不動産投資が拡大しています。
特に海外の不動産で運用する投資信託への資金流入額は今年1月から4月の間に9千億円を超え、同期間では過去最高となりました。
また、年初から大きく下落している株式市場に対して、国内REITの指標である「東証REIT指数」は堅調に推移しており、比較的高い利回りを確保できる投資先として資金の流入が顕著になっています。
このように低金利の状況下で、出来るだけ運用利回りを確保したい投資家の注目を集めている不動産投資ですが、投資の手法には様々なものがあります。
投資家の中には、都心のワンルームマンションを購入する人もいれば、一棟ものの中古アパートを購入して賃貸業を営む人などもいて、投資の手法は千差万別です。
このように選択肢の多い不動産投資ですが、はじめて海外の不動産に投資をしたいという人が、いきなり海外のコンドミニアム(日本でいう分譲マンション)などを購入するのは非常にリスクが高くておすすめできません。
海外不動産への投資を始めてみたいという方は、まずは「海外REIT」を活用して、少額から始めてみるとよいでしょう。
「REIT」の仕組みとメリット
まず、最初にREITの仕組みとメリットを簡単にご説明します。
「REIT」とはReal Estate Investment Trustの頭文字をとった略称で、日本では不動産投資信託と訳されます。
その仕組みは、投資法人などが不動産投資信託を組成して投資家より資金を募り、その資金をもとに、ビルや商業施設、賃貸マンション、ホテル、・倉庫などの不動産を購入して運用し、収益を上げる仕組みです。
投資家は投資額に応じて収益の中から分配金を受け取ることができます。(下図のとおり)
次にREITのメリットですが、最初に挙げられるのは実物不動産への投資に比べると流動性が高いことです。
仮に投資物件としてマンションを一部屋保有していたとします。
もし、急な事情で売却をしなければならなくなった場合、すぐに買い手を見つけることは簡単ではありません。
また不動産会社に売買の仲介を依頼すれば仲介手数料も必要になってきます。
実物不動産の売買に比べるとREITは証券市場で売却することが可能で、取引に掛かるコストも安く済みます。
比較的容易に現金化することが可能なのです。
また、リスクを分散できるという点もREITの大きなメリットです。
日本で最も規模が大きい「日本ビルファンド投資法人」は資産規模が1兆円を超え、74棟の建物を保有しています。
「卵はひとつのカゴに盛るな」という株式相場の格言もありますが、REITへ投資することは、数多くの不動産に分散して投資をしていることになり、個別の不動産を単独で保有する場合に比べるとリスクを分散することが可能になります。
そして最後に、何といってもREITの大きなメリットは、分配金利回りの高さでしょう。
マイナス金利の状況下であっても分配金の利回りは高く、海外REITの中には5%を超えるものが多数存在しています。
もちろんすべてが良いことばかりではなく、REITにもリスクは存在します。
保有している不動産の価格変動や運用の良し悪し、その時々の経済状況によっては価格が下落して損失が発生する場合があります。
過去には経営上の問題から破綻したREITも存在しているのです。
したがって、投資をする前には必ず個々のREITが保有する不動産の内容や財務体質、運用状況などをしっかりとチェックして、慎重に銘柄を選択することが重要になります。
「REIT」の市場規模
今年3月末の時点の世界全体の市場規模は約133兆円となっています。
国別で最も市場規模が大きいのはアメリカで世界全体の約63%を占めており、次に日本、オーストラリア、イギリス、フランス、シンガポールなどとなっています。
日本国内の不動産を投資対象とするREITは「J-REIT」と呼ばれており、今年4月末時点の時価総額は約11.8兆円(54銘柄)、平均分配金利回りは約3.3%となっています。
また、海外の不動産を投資対象とするものは「海外REIT」と呼ばれています。
最近は日本でも海外REIT購入できるようになってきており、投資家は海外REITを購入することで世界の不動産に投資をすることが可能になりました。
次回は、世界最大のREIT市場であるアメリカの現状と、アジアの有望市場であるシンガポールのREITについて詳しくお話したいと思います。
この記事へのコメントはありません。