アセットアロケーションとアセットロケーション【2016年 第6回】

【2016年 第6回 アセットアロケーションとアセットロケーション】海外投資のイロハを学ぶ

永柄 正智(ナガエ マサトモ)

前回までの5回のコラムの中で、海外投資をする場合に選択肢となる金融商品についてのご説明をしてきました。
このコラムを通じて私が皆さまにお伝えしたいことは、投資をするのであれば、国内への投資だけではなく、海外も含めて投資を行う必要があるということです。
最終回の今回は、国内投資と海外投資の過去の投資実績を比較した上で、投資を行う場合のロケーション(運用する口座)の重要性についてお伝えします。

「日本株」と「世界株」の投資実績比較

投資の世界では、投資先を選定する基準として、過去の投資実績が重要な要素となります。
「日本株」と「世界株」への投資実績を単純に比較することは出来ませんが、ここでは「日本株」全体へ投資した場合の値動きを表す指標としてTOPIX(東証株価指数)※1を、「世界株」へ投資した場合の値動きを表す指標としてMSCIコクサイ※2を使ってご説明します。

表1は日本株と世界株に投資した場合の過去30年間の投資実績を表したチャートです。

TOPIXが30年間で31.8%の上昇であるのに対して、MSCIコクサイは、30年間で約9倍になっていることがわかります。

30年前というと日本ではバブル崩壊以前の期間も含みますので、バブル経済の時代を含めても、日本株全体の資産価値はそれほど上昇していないことがわかります。
一方、日本株を除く世界株に広く投資をした場合には、チャートが上下を繰り返しながらも30年前に比べて約9倍と大きく資産価値を増加させています。
つまり、この表から読み解けることは、投資を行なうのであれば、日本株だけではなく世界株も対象に含めて投資を行うことが重要であり、過去の実績がそれを物語っているということです。

今後は投資を行う「アセットロケーション」も重要

投資を行う場合には、「資産」「国・地域」「通貨」「時間」の分散を行うことが大切ですが、今後はその投資をどの口座(アセットロケーション)で行うかもより重要になってきます。
日本では、投資を行う口座として、証券会社の普通口座やNISA口座などがありますが、来年の1月からは「個人型確定拠出年金」の加入範囲が大幅に広がり、公務員や専業主婦の方も税制優遇を受けながら老後の自分年金を準備することが可能になります。

表2をご覧いただくとわかるように、確定拠出年金制度は、お金を「投資する時」「運用する時」「受け取る時」のすべての段階で税制優遇をしてくれるというとてもありがたい制度となっています。
投資を行う上では最も有利な制度ですので、しっかりと制度を理解した上で活用していくとよいでしょう。

投資を行う口座の選択は、教育資金や住宅資金、老後資金など各ご家庭の事情によって変わってくると思いますが、将来の目的によって適切に選択していく必要があります。
仮に老後の資金を長期投資で備えるのであれば、確定拠出年金が最も有利な方法となりますし、教育資金のためであれば、NISA口座が選択肢となってくるでしょう。

投資が避けられない時代

将来的に公的年金が減っていくことが避けられない中で、いかにして自分自身で将来を見据えたお金の準備ができるのかが、不安のない人生をおくるポイントだと思います。
その準備のためにも、これからは投資を行うことが避けられない時代だと感じています。

海外投資を理解した上で国内外の投資対象に分散投資(アセットアロケーション)を行い、また、その投資を適切な口座(アセットロケーション)で行うことで、投資の成果は大きく影響されます。
投資をする人はそれをしっかりと理解しておく必要があります。
私が今回のコラムでお伝えしてきた海外投資に関する知識が、読者の皆様の資産形成に少しでも役に立てられると幸いです。

※1 TOPIX(東証株価指数) 東証1部上場の全銘柄の時価総額の合計を全銘柄で割って算出した株価指数

※2 MSCIコクサイ MSCIコクサイ指数とは、株価指標のベンチマーク(世界基準)であるMSCI(モルガンスタンレー・キャピタル・インターナショナル)が、日本を除く先進国の平均株価として定めている指数。

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