【2016年 第4回 運用商品~元本確保型~】確定拠出年金 きほんのき
宮一 幸子(ミヤイチ サチコ)⇒ プロフィール
確定拠出年金は加入者が金融商品を決めて運用していくしくみです。
金融商品は定期預金や保険商品などの「元本確保型」と「投資信託」が一般的です。
「運用」ときくと「投資しなければいけないの?」と思うかもしれませんが、預金のような商品もあるのです。
今回は「元本確保型」についてみてみましょう。
元本確保型商品は「定期預金」と「保険商品」がある
元本確保型は、値動きがなく着実に貯めていく商品です。大きく目減りすることはありませんが、大きく増えることもありません。
元本確保型の商品とは一般的に「定期預金」と「保険商品」のことです。
「定期預金」とは積立定期預金のことで、毎月の掛金を毎回定期預金にし、一定期間(満期)がきたら自動更新していきます。
たとえば毎月掛金が5,000円で、5年満期の定期預金を選択したら、5月、6月、7月…と毎月5,000円を定期預金にします。
それぞれ5年後の5月、5年後の6月、5年後の7月…に満期となりますが、満期時に元金5,000円と利息をまた元金にして自動更新していきます。
つまり毎月の掛金がそれぞれ5年ごとに複利で増えていくしくみですね。
しかも確定拠出年金は運用益に対して非課税なので、普通に定期預金をするよりは税金面で有利です。
「保険商品」もしくみは同じです。
「利率保証型積立保険(GIC)」というもので、保険会社版の積立定期預金みたいなもの、といえばわかりやすいかもしれません。
生命保険会社の商品と損害保険会社の商品があります。
「定期預金」や「保険商品」は固定金利、変動金利、短い満期、長い満期というように金利や満期がいろいろあります。
「今は金利が高いときだから長い固定金利にしよう」とか「これから上がっていくと思うから短い固定金利か変動金利にしよう」など自分で選んでいきます。
中途解約のときの扱いが違う
「定期預金」と「保険商品」では中途解約時の取り扱いが違います。
前回お話ししましたが、確定拠出年金はスイッチングを行って、今ある商品を解約して他の商品に変更をすることができましたね。
元本確保型をスイッチングすると満期前の解約となり、ペナルティがあります。
「定期預金」の場合、解約すると、満期まで継続する場合の金利より低い金利で解約金が計算されます。利息が少なくなるだけです。
「保険商品」の場合は「解約控除」というペナルティがあり、解約するまでに付いた利息よりも解約控除のほうが多ければ元本割れすることもあります。
確定拠出年金の運用は長期にわたり、PDCAサイクルで見直しも大切なので、中途解約時の取り扱いには注意してください。
信用リスクについて
「定期預金」も「保険商品」も、その商品を提供している金融機関が破たんしまうリスクがあります。
「定期預金」はその銀行が破たんしたら預金保険制度により元本1,000万円とその利息まで保護されます。
これは、その銀行に個人的に預金があったり、財形貯蓄の残高あったりしたら全て合算して計算します。
残高を全部合計して1,000万円を超えていて、その銀行が破たんしてしまったら1,000万円とその利息までしか保護されません。1,000万円を超えないように注意しましょう。
一方「保険商品」は提供している保険会社が破たんしたときには責任準備金(おおよそ保険商品で保有している残高)の90%までしか戻ってこないリスクもあります。
インフレリスクに注意
「定期預金」や「保険商品」にはインフレリスクもあります。
インフレ(インフレーション)とは、継続的に物価が上がる状態のことです。
インフレ時においては物の値段が上がっているので、物を買うときに今までよりも多くのお金が必要となります。
たとえば100万円の車を買うには100万円のお金を出せば買えますが、2%で物価上昇したら車は102万円になり、100万円では車が買えなくなってしまいます。
100万円という見かけの金額は変わらないのですが、100万円の購買力は下がってしまっています。
車は2万円も高くなってしまったのに預金でお金を預けていても金利が0.02%では200円しか増えていないので対応することができません。
このように、何か目的のために運用するなら、物価上昇率以上の利回りで運用しないと、目的のための準備ができていないということになります。
将来の老後資金の準備のために預金をしていたとしても、預金の金利以上に物価上昇がすすんでしまったら準備が追いついていかなくなってしまいます。
定期預金や保険商品なら安全かというとそうとも言えないのです。
会社で想定利回りが設定されている場合には想定利回りを上回ることができない可能性もあります。
インフレリスクに対応するための方法は、投資信託なども組み合わせておくことです。
インフレが起きている状況下では景気がよい場合が多いので、株価が上がります。
株式で運用する投資信託なら、物の値段の上昇に資産がついていくことができ、インフレに対応した運用ができるのです。
「よくわからないからとりあえず」という理由で元本確保型にするのではなく、元本確保型にするなら特徴やリスクも理解したうえで選ぶようにしましょう。
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