柳井正とユニクロ(前編) 【2016年 第11回】

【2016年 第11回 柳井正とユニクロ(前編)】風は西から・・・日本の産業を創った長州の偉人たち

上津原 章(ウエツハラ アキラ)⇒ プロフィール

こんにちは。山口県のファイナンシャルプランナー、上津原と申します。
今回は、世界トップクラスのアパレル製造小売業、ファーストリテイリングの柳井正氏について、2回にわたって取り上げたいと思います。
以前あった高額納税者番付では、柳井正氏は広島国税局管内で第一位の納税額でした。所得の多くは巨額の株式配当です。
今でこそ世界に名だたる会社ですが、今から40年前は2店舗だけの小さな会社でした。
山口県宇部市のユニクロには「Men’s Shop OS」(OSは小郡商事の略称)と書かれた備品がある店舗があり、40年前の姿を垣間見ることができます。

 

 

生い立ちから事業継承まで

柳井正氏は、1949年に山口県宇部市に生まれました。
同じ年に父である柳井等氏がメンズショップ小郡商事を開業しています。
宇部高校、早稲田大学と進学し、親の勧めでジャスコ(現在:イオンリテール)へ入社します。
ところが、嫌気がさしわずか9カ月で退職。フリーターとなり数か月間友人を頼りながら生活します。

 

父が開業した店は1963年に法人化し、現在のファーストリテイリングの前身となります。
1972年に彼が入社した時は、紳士服の店舗と、カジュアルブランドVANを販売するショップの2店舗体制でした。
父から店を任されますが、2年経たない間に社員が激減し彼と正社員一人とパート社員だけになります。
仕入・経理・販売・採用・売上記録といったあらゆることをこなしながら、経営の基礎を学んでいきます。

 

業務標準化・ユニクロ1号店

女性社員を採用したことをきっかけに、会社の様々な業務を誰でもできるように文章化していきます。
品目別に売上記録をつけていく過程で、ベーシック(定番)でリーズナブルな商品が常に売れることに気づきます。

 

1984年、広島市中区袋町に「ユニーククロージングウェアハウス」(現在のユニクロ)第1号店を出します。
このころは様々なブランドの定番商品を集めたお店でした。
個人的にはHanes(ヘインズ)の無地Tシャツの特売が今でも印象に残っています。
店内の鉄骨むき出しの内装、新店オープンの開店時間を朝6時からにする、広島県出身の小林克也をCMに起用するなど、奇抜なアイデアを前面に出していました。

 

多店舗展開から株式上場へ

1985年6月には、下関市に初のロードサイド店を出店します。
その後は、全国各地の都市郊外に積極的に出店するようになります。
1991年には社名をファーストリテイリングに変えます。
意味としては、「速い小売業」ということで、お客様から求められている商品をいかに早く世の中に出すかという精神が込められています。

 

店舗数(各年8月現在)は、1992年には62店舗、1993年には90店、1994年には118店と、急速に増えていきました。(2015年は2982店舗)

 

1994年7月には、広島証券取引所に株式を上場します。
上場時の始値は14,900円。1994年8月決算の実績(当期純利益)から計算したPER(株価収益率)は80.7倍でした。(2016年11月25日現在:42.2倍)
かなり割高に買われていたのは、積極的な出店が評価されていたからのようです。
しばらくすると21,500円まで株価が上がりますが、その後は利益の伸び悩みもあり、数年間株価が低迷することになります。

次回は、上場後の低迷期から今日までの話をお届けいたします。

 

結び~長所は短所の裏返し~

柳井正氏は、自分の長所を正直であること、正義感が強いこと、ストレートにものを言うなどと分析されています。
以前私が株主総会に参加した時も、真面目さとゆるぎない信念のようなものを話される言葉から感じたものです。
この長所が、父から彼が店を任されたときに社員の激減など短所にもなったようです。

長所を客観的に見つめ、失敗は失敗として認め、勉強を怠らない姿勢が今日の成長へとつながったのかもしれませんね。

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