【2014年 第4回 】 日経新聞の景気指標を活用する、欧州編。-統計資料と景気指標を活用した資産運用
恩田 雅之(オンダ マサユキ)⇒プロフィール
このコラムは、6回にシリーズで「統計資料と景気指標を活用した資産運用」というテーマに沿って書いていきます。第4回目は、「日経新聞の欧州に関する景気指標の活用法」になります。 欧州は、身近なようで、身近ではない地域かと思います。
はじめに
日経新聞の景気指標欄に掲載される欧州の景気指標は、3週間1度と毎週掲載される日米の景気指標に比べると掲載頻度が下がります。景気指標の項目は、「国内総生産」「貿易収支」「失業率」「消費者物価」「独Ifo景況感指数」「ユーロ圏の通貨供給量」「ユーロ金利」「株価」の8項目です。
今回は、「国内総生産」と「独Ifo景況感指数」に焦点を当ててみていきます。
1.欧州について
景気指標をみていく前に、欧州区分けされる国についての整理から始めていきます。
外務省の各国・地域情勢の区分けに寄りますと、欧州に区分けされる国は、全部で54か国になります。
その内の28か国がEU加盟国になり、その中の18か国がユーロ圏になります。
非ユーロ圏の代表的な国は、ロシア、スイス、ノルウェー等があります。
EU加盟国の中で通貨ユーロを導入していない国は、英国、デンマーク、スウェーデン等があります。ユーロ圏の代表的な国は、ドイツ、フランス、イタリア等です。
総務省統計局「世界の統計2014」を参考に2012年の欧州全体の名目GDP(ドルベース)をみますと、世界の約28%を占めていることがわかります。EU加盟国に絞ると約22%となります。また、統計データをもとにEU域内を100%とした場合のGDPの比率を計算しますと、ドイツ約17%、フランス約13%、英国約
12%、イタリア約10%となります。
日経新聞に掲載されています国内総生産(GDP)は、「ユーロ圏」と国別「ドイツ」「フランス」「イタリア」「英国」で構成されています。「貿易収支」「失業率」「消費者物価」については、ユーロ圏と英国の2分類。「株価」は、ドイツDAXと英国FT100種の2つになります。
2.GDP成長率 足元と見通し
GDPの成長率でみていきますと、<表1>のようにユーロ圏に比べて英国の好調さが目に付きます。
3.今後のユーロ圏を判断する指数4見出しa
「独Ifo景況感指数」は、日銀短観(第2回目コラム参照)、IMF景況感指数(第3回コラム参照)と似た経済指標になります。指標は2005年を100として加重平均し指数化しています。
約7,000社のドイツ企業に対して現在と6か月後のドイツ経済についてアンケート調査します。
調査項目は、生産・在庫・受注等5項目あり、鉱工業生産との関連が深い指標になります。
また、ドイツのGDPは、ユーロ圏全体の30%を占めると言われていますので、ユーロ圏の今後の景気を考える上で参考になる指数となります。
その他に「失業率(ユーロ圏)」や「消費者物価指数(ユーロ圏)」も、今後のECBの金融政策へ影響を与える指数となります。景気指標欄ではユーロ圏と英国に分けて掲載されています。ユーロ圏については「失業率」「消費者物価指数」とも国ごとに数字にかなりバラつきがあります。その時々の記事やニュース等で各国の数字も併せてフォローしておきましょう。
まとめ
「はじめに」でも触れましたが、日経新聞(景気指標欄)に掲載される欧州の景気指標は、日本や米国に比べて項目数、掲載頻度とも少なくなります。日々の新聞記事等で補足することが必要になるでしょう。
また、「欧州(54か国)」・「EU(28か国)」・「ユーロ圏(18か国)」を意識することで「ユーロ圏」イコール「欧州」と考えない習慣をつけておきましょう。
併せて、各国のGDPがEU域内に占める比率について押さえておくとで、欧州の起こる経済的な出来事に対して冷静に投資等の判断ができるかと考えます。
(このコラムは、2014年7月29日に作成しました。)
この記事へのコメントはありません。