【2014年 第3回】日経新聞の景気指標を活用する、米国編- 統計資料と景気指標を活用した資産運用
恩田 雅之(オンダ マサユキ)⇒プロフィール
このコラムは、6回にシリーズで「統計資料と景気指標を活用した資産運用」というテーマに沿って書いていきます。第3回目は、「日経新聞の米国に関する景気指標の活用法」になります。
はじめに
2012年の世界のGDPに占める米国の割合は22.4%です。また、米国のGDPに占める個人消費の比率は70%前後と言われています。つまり、世界のGDPの約16%(22.4%×0.7)を米国の消費者が支えていることになります。資産運用をする上では、米国に関する景気指標に関心を持つ必要があります。
月曜日(新聞休刊日の場合は火曜日)の日経新聞には、景気指標をコンパクトに紹介した表が掲載されます。海外の景気指標については、米国のみ、米国と欧州、米国とアジアと週ごとに内容が異なります。米国のみの週は、米国に関する統計データの種類も約2倍になります。以下、注目しておきたい景
気指標について紹介させていただきます。
1.米国雇用統計に注目
米国雇用統計は、毎月第1週の金曜日に発表されます。日本では土曜日の一般紙の朝刊で内容を確認することができます。失業率と前月に比べて雇用者(非農業部門)の増減が併せて発表されます。日経の景気指標欄では、失業率と雇用者の増減を時系列で確認することができます。日本やEU、英国に関しては、失業率のみ掲載されています。
*失業率=失業者数÷労働力人口(就業者数+失業者数)
失業者は、働く意志と能力があり求職活動をしている人
失業率は、景気動向に左右されます。
例えば、景気が良くなってきて雇用者が増えても、いままで求職をあきらめていた人が求職に参加する(失業者が増える)ことで失業率が上昇することがあります。また、景気が悪い状態が続いた場合などは、求職をあきらめる人が増える(失業者が減る)と失業率が下がります。
失業率と雇用者の増減を併せてみることで、雇用状況をより正確に知ることができます。
毎月20万人程度の増加が、米国経済が緩やかに拡大している目安になっているようです。
また、雇用者が増えることで、小売り売上や、自動車の販売台数、住宅の販売戸数にいい影響を与えますので、米国の景気状況をみる上でベースになる指標かと考えます。
2.個人消費の動き 過去・現在・未来
個人消費を確認する景気指標として代表的なものに「小売売上高」(原則翌月9営業日に発表)と「消費者信頼感指数(コンファレンスボード)」(前月分を当月23日~月末に発表)があります。
「小売売上高」は、百貨店を含む小売・サービス業、約5,000社の月間の売上高を集計した金額になります。発表から過去1年間小売売上高を1ヵ月単位で確認することができます。
「消費者信頼感指数」は、現状と6か月後を予想した消費マインドを確認する指標になります。
現状の部分は「経済と雇用」について、6か月後の予想では「経済。雇用、所得」について。それぞれアンケート調査を行い両方のデータ使い指数化したものになります。
「小売売上高」は、毎週(原則月曜日)掲載されます。「消費者信頼感指数」は、海外の景気指標が米国のみの時に掲載されます。(3週間に1度)
「はじめに」でも触れましたが、米国個人消費は、世界のGDPの約16%を占める規模があり、世界経済への影響も大きいと考えます。毎月、丁寧にチェックするようにしましょう。
3.ISM景気指数とは
ISM景気指数は、製造業・非製造業の2つの指数が米国供給管理協会(ISM:Institute for Supply Management)から毎月発表されます。発表の時期は、製造業が毎月第1営業日、非製造業が毎月第3営業日になります。
日経新聞の景気指標に掲載される「ISM製造業景況感指数」は、製造業の購買担当役員へ新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫の5項目について1ヵ月前と比較して「良い・変わらず・悪い」の3択で回答したものを集計した結果になります。今後の景気状況について、製造業の購買担当役員がどのようにみているのか、知ることができる景気指標になります。指数が50%以上の場合に景気が上向き、50%未満の場合は景気が下向きとみます。
また、消費者信頼感指数などの個人に対する景気指標に比べて、より先行した景気の動向を考える上で参考になる景気指標かと思います。
4.まとめ
今回は、個人に関連する指標として「雇用統計」「小売売上高」「消費者信頼感指数」の3つの指標、企業に関連する指標として「ISM 製造業景況感指数」を紹介させていただきました。
最後に、2008年11月から3回(QE1、QE2、QE3)に分けて実施されている「量的金融緩和政策」が段階的に縮小されています。
4月のFOMC議事録によると、ゼロ金利政策の解除についても検討されたようです。
金利の上昇は、個人消費や企業の投資行動、米国と日本の為替動向に影響します。特に、長期金利の上昇は、住宅ローンの金利の上昇や、企業やリートの金利負担の増加など、景気に対して悪い影響を与える可能性があります。
日々の長期金利の動向チェックに加えて、景気指標の「10年国債利回り」を参考に、過去の金利との比較を行うようにしましょう。
(このコラムは、2014年5月23日に作成しました。)
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