【2013年 第8回 リスクの指標としての長期国債利回り 】投資に必要な経済の知識
有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール
投資の鉄則、ハイリターンであればハイリスク
投資の鉄則、ハイリターンであればハイリスク。それを逆手に取りリターンからリスクの度合いを見ることが出来ます。そのリターン、利回りの尺度として、安全資産としての長期国債利回りを利用することが出来ます。
債券で資産の運用を考える場合、利回りは当然低いより高い方が良いですね。一方、債券を発行する側、債券の発行は借金ですので、利回りは低ければ低いに越した事はありません。
銀行で低い金利のローンを借りることが出来るのに、わざわざ消費者金融の金利の高いローンを利用する人は居ません。最近は消費者金融もなかなか貸してくれなくなりましたけど。
債券を発行する場合、利回りは出来るだけ低くしようとします。投資家の利益を考えて高めに設定する、そんな出血サービスをする奇特な会社は有りません。
これは社債ばかりではなく、国債も同様です。国債であればなおさら、必要以上に利回りを高くすることは、納税者すなわち国民の利益を害する行為になります。
同じ時期に発行され、かつ満期日も同じ債券でも利回りに差が有ります。この差の多くの部分は債券を発行する会社の信用力、これからも利息をきちんと払ってくれるか?満期日に元本を間違いなく償還してくれるか?というものに関わってきます。
多くの場合の債券は、発行する会社等が利払いと額面の償還を約束しています。しかし、会社が破綻してしまえば、約束を守りたくともお金が無い、「ない袖は振れない」ということになります。
そこで信用力の乏しい会社は、債券を買ってもらうためにはどうしたら良いのか。利回りを上げる、という方法があります。
ですから、債券の利回りは信用力の目安と言っても良いでしょう。利回りが高ければ信用力に問題が有りそう、そういう見方も出来ます。
最も安全性の高い債券
そこで、最も安全性の高い債券はというと、日本の場合、とりあえずは国債です。ギリシャのように債務不履行の可能性が高まると安全資産とは言えなくなりますが、財政は非常に厳しいものの、日本国債の債務不履行の可能性は今のところ織り込まれていないと思います。
したがって、国債を基準として債券の安全性を見ることが出来ます。例えば10年物の債券の利回りであれば、10年長期国債に対してどのくらい上乗せされているか。上乗せ幅がわずかで有れば、かなり安全性が高いと言えますが、上乗せ幅が大きければ、リスクは覚悟しておく必要があります。これは債券に限らず金融派生商品を含めた殆どの金融商品にも当てはまります。
長期国債利回りが1%の時に平均で10%の収益を得るにはかなりのリスクを取らなければなりません。リスクとは大きな収益を得る可能性もありますが、元本を大きく割り込む可能性もある、という事です。10%というのは収益と損失の可能性の平均にすぎません。
ここから言えることは、長期国債利回りは商品の安全を測る物差しとも言えます。残念ながら、どのような金融商品を組み合わせたとしても、長期国債利回りを大きく上回る収益を安全に得ることは不可能です。収益率が高ければ必ずリスクも高くなります。このように長期国債利回りは金融商品の安全を見るうえでも非常に重要な指標です。金融商品を判断する際に、この長期国債利回りを参考にしてみたらどうでしょうか。
次のグラフは2011年から2013年8月5日までの日本経済新聞発表の長期国債利回りを筆者がグラフ化したものです。
終わりに、注意点を若干書いておきます
(1)長期国債利回りは日々変わる
長期国債利回りは市場取引で決まりますので毎時変わります。直近の数値を把握しておいてください。
(2)違う通貨で比較するのは意味が無い
日本国債と比較出来るのはあくまでの円建ての商品のみです。ドル建てで有ればアメリカ国債と比較しなければなりません。アメリカ国債利回りに対して上乗せ幅がわずかで有れば、とりあえず危険な兆候はないと言えます。ただしそれはあくまでもドル建ての話で、為替レートの変動によるリスクはそれだけでは判断できません。
(3)利回りが低いから安全とは言えない
利回りが高い商品は間違いなくリスクは高いです。その逆、利回りが低いから安全、ということは言えません。特に一部の金融派生商品は期待収益が低いにもかかわらずリスクが高い場合も考えられます。さらに詐欺的金融商品には「あまり利回りを高くすると怪しまれるかもしれない」と、利回りをあえて低めにしている場合もありますので注意してください。
(4)国債が危険な状態になったら
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