【2016年 第2回 危ない金融商品は矛盾だらけ(1)】こんな金融商品は要注意
有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール
いわゆる、詐欺まがいの金融商品、今回は過去にあった事例からどんな矛盾があるか見てみましょう。
詐欺まがいとは言っても、今回の事例は詐欺事件そのものをご紹介します。
ワールド・オーシャン・ファーム事件
・フィリピンでのエビの養殖等の事業へ投資する匿名組合への出資。
・出資に対して年100%の配当。
・匿名組合員が他の投資家を紹介した場合3~19%の紹介料を支払。
(以上は消費者庁資料からの要約)
今から10年程前に世間を騒がしたワールド・オーシャン・ファーム事件です。
年100%の配当が有り得るか?
矛盾点として、浮かび上がることとして、年100%の配当は有り得るのでしょうか?
ベンチャー企業で事業がうまくいけば、100%どころかその10倍、100倍の収益を得る可能性も有るでしょう。
しかし、その約束は全く出来ません。
投資資金が大幅に毀損される可能性も非常に高いです。
事業が成就するには時間がかかりますので、事業の初期に配当されることはまずないでしょう。
このケースではすぐに配当を約束しています。有り得ません。
そもそも100%の配当を約束した時点で、配当の原資は新たな出資の中から支払わなければならず、その事業は破たん確実という見方をするべきでしょう。
なぜ不特定多数の個人から出資を募るのか?
事業資金が必要になる場合、一般的には金融機関に相談することが多いでしょう。
また、金融機関では対応できないリスクの高い事業では、ベンチャー・キャピタルなども存在します。
金融機関やベンチャー・キャピタル、そして最近普及しているクラウド・ファンディングなどで資金を調達するためにはプロを相手に詳細な事業説明が必要です。
このケースでは事業資金を個人投資家から募集するために大々的にセミナーを実施していました。
大々的にセミナーを実施するとなると相当な費用が必要です。
海外のベンチャー・キャピタルなどからの出資ですとそれなりの費用が必要でしょうが、セミナー開催や、豪華なパンフレット作製費用に比べたら安いものです。
事業に詳しくない一般投資家相手への説明会は、金融機関等への事業説明と違って、内容が不十分なケースもあるでしょう。
紹介者に紹介料
いわゆるマルチ商法に近いものがありますね。マルチ商法の問題点や被害はすでに言い尽くされていますので別の観点からお話しします。
資金を調達する場合、一般的に相手を選ぶことが必要です。
大口出資者が反社会的勢力であった場合、出資を受けた企業も同様とみなされ、それが露見すれば金融機関との取引や、日常の営業に大きな支障が生じます。
出資者が紹介料目当てに新たな出資者を募集する、そこに好ましからざるものが紛れ込む可能性が大です。
この例では、エビの養殖事業という名目でしたが、実態がほとんど無かった、いわゆる投資家からお金を騙し取ることが目的の「確信犯」であったようです。
出資者募集のためのセミナー参加者の中には、さすがに「怪しい」と思っていた人は「現地で、養殖場を見学してみたい」と言った人もいたようです。
それに対する回答が「現地の治安は極度に悪く、見学に連れていくことは出来ません」との回答でした。
では、そんなに治安の悪いところで養殖事業なんか出来るのでしょうか?
日常の養殖場の管理もままなりません。エビが成長したとたん盗まれます。
ここでまとめます。
1.事業資金を調達するためには、金融機関からの借り入れ、ベンチャー・キャピタルなどからの出資、最近ではクラウド・ファンディングなどの手法が有ります。これ以外の方法を取らなければならない理由を考えてみましょう。
2.新規事業が配当を出すことが出来るようになるには時間がかかります。出資してすぐに配当などは有り得ません。
3.配当率の約束はできません。出資では、2倍ところか、1千倍、1万倍も夢ではありませんが、ゼロになる確率も非常に高いです。
4.紹介料などの名目でマルチ商法まがいの手法を講じているのは、それだけで怪しいです。
5.派手なセミナー、立派なパンフレットを作っているところは怪しいです。そのような余分なコストは事業に投下するのが本筋でしょう。
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