【2016年 第4回 ”複雑な仕組みの金融商品”1-オプションはスパイス】こんな金融商品は要注意
有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール
今まで、”危ない金融商品”として、いわゆる詐欺的な商品を説明してきました。
今回からは、詐欺ではありませんが仕組みが複雑で投資家が思わぬ損失を抱えてしまうような商品、その仕組みの具体的な事例を説明します。
複雑な仕組みの金融商品の仕組み
リスクを制御しながらも、ある程度の利益は望みたい。その為には金融派生商品(デリバティブ)が有用です。
そのデリバティブの中でも代表的なのがオプションです。
しかしオプションを使うと仕組みが複雑になり、投資初心者には思わぬとところで損失が発生することも有ります。
この様な商品を理解するためにはオプションの知識が必要です。
そこで、今回はオプション取引について説明しましょう。
オプション取引とは
①オプションの買い手は、売り手にオプション料を支払い、ある特定の証券(原資産)を、将来の特定の時期(権利行使日)に一定の金額(行使価格)で買う、または売る権利を得る契約を結びます。
買う権利をコールオプション、売る権利をプットオプションと言います。
②権利行使日にはコールオプションとプットオプションにより、オプションの買い手は次のように動きます。
ⅰ)コールオプションでは、買い手は原資産の価格が行使価格以上であれば、オプションの売り手から行使価格で原資産を安い価格で購入し利益を得ます。
原資産価格が行使価格以下であればオプションを放棄し、損失は支払ったオプション料に限定されます。
ⅱ)プットオプションでは、買い手は原資産の価格が行使価格以下であれば、市場で原資産を安く購入しオプションの売り手に行使価格で高く売りつければ利益を得ることが出来ます。
原資産価格が行使価格以上であればオプションを放棄し、損失は支払ったオプション料に限定されます。
③オプションの売り手はオプション料を受け取り契約した以上、それがコールであれプットであれ、オプションの買い手の要求を拒むことは出来ません。
オプションは買い手にとり権利ですが、売り手にとっては義務となります。
権利は放棄できますが、義務は拒むことは出来ません。
オプションの損益
”買う権利を買う”とか、”売る権利を買う”とかややこしいですが、それぞれの損益をグラフに表したのが次です。
このグラフでわかることは、それがプットであれコールであれ、オプションの買い手にとり利益が大きくなる可能性も有りますが損失はオプション料に限定されているということです。
一方、オプションの売り手はその逆。利益は限定されますが、損失は巨額になる可能性があります。
オプションの売り手に回ることは非常に危険なことです。
別な言い方をすれば、オプションは保険のようなものです。
保険を買うようにオプションを購入すれば、特定のリスクによる損失を回避できます。
一方、オプションの売りは保険を引き受けるようなものです。
実際、保険の引き受けは保険会社に限られますが、保険の加入は一定の審査がある場合も有るでしょうが加入は容易です。
オプションの買いは、ある程度の投資経験が有れば個人でも可能でしょうが、個人がオプションの売り手になることは困難です。
オプションはスパイス
損失限定のオプションの買い。それを自身のポートフォリオの中に組み入れると絶大なリスク回避効果を得ることが出来ます。
たとえば、日銀の金融政策決定会合に際して、ドルのプットオプションを購入しておくと、不意のドル高リスクを回避することが出来ます。
この様に、上手に使うことが出来ますが、それはポートフォリオの補助的な部分に限るべきです。
間違っても、全財産をオプションに投入することは大変危険です。
料理で言えば、オプションはスパイスみたいなものでしょう。ほんの僅かの量で料理を見違えるほど引き立たせることが出来ます。
かといって、僅かでもこれほどまでに旨いのなら、スパイスのみを一皿丸ごとたいらげようとしたら、旨いどころか、命に危険が及びます。
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