”複雑な仕組みの金融商品” 3- オプションは売ってはいけない 【2016年 第6回】

【2016年 第6回 ”複雑な仕組みの金融商品” 3- オプションは売ってはいけない】こんな金融商品は要注意

有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール

 

前回はオプションを取り入れた金融商品の概略を説明しました。
オプションの買いはリスクを回避するには非常に有効な手段ですが、オプションの売りは逆にリスクを引受けるものです。
買いでも単独の投資として大量に抱えるのは危険ですが、それ以上に危険なのは売りです。
それではオプションの売りの危険性を事例で具体的に見てみましょう。原証券は特定企業の株式とします。

 

オプションの売りの損益

 

【共通事項】
原証券価格   1,000円
受取オプション料   50円

【権利行使価格】
コール   900円
プット   1,100円

※オプションの買い手は、売り手にオプション料を支払い、ある特定の証券(原資産)を、将来の特定の時期(権利行使日)一定の金額(行使価格)で買う、または売る権利を得る契約を結びます。
買う権利をコールオプション、売る権利をプットオプションと言います。

 

まずプットオプションの買いから説明します。
最大限の損失は株価が0になるとき。破綻し価値が0の株を行使価格の1,100円で買わなければなりません。
もちろんその株は転売できませんので、1,100円から受取オプション料の50円を差し引いた1,050円が理論上の最大損失です。
グラフでは原資産価格が行使価格の1,100以上では受取オプション料の50円の収益ですが、それを下回るとオプション行使による損失による損失が発生し、左端の原資産価格0円の時に、損失が最大の-1,050円となっています。

 

一方、コールオプションの売りでは株価に上限は無いので損失の上限も有りません
グラフでは行使価格の900円を原資産が上回ればオプション行使による損失が発生します。原資産価格(株価)には上限が有りませんので。
グラフの右端を超え理論的には損失は際限なく広がる可能性もあり、コールの売りの危険性はさらに大きくなります。これはあくまでも理論上の話ですが。

 

具体的な金融商品

次に前回と重複しますが、オプションの売りを組み入れた金融商品を挙げてみましょう。

①プットオプションの売りを組み入れた金融商品

為替オプションを組み入れた仕組み預金や特定企業の株式を組み入れたEB債などが有ります。

また、オプションのイメージとは少し違いますが、預け入れ後の満期日を金融機関が変更できる預金も有ります。
金利は一般の預金よりも高いですが、満期日はその時の金利動向により金融機関が有利になるように、逆に言えば預金者に不利になるように変更される恐れがあります。

②コールオプションの売りを組み入れた金融商品

危険性が非常に高いので、私の知っている限り、それのみを組み入れている商品は見たことは有りません。

しかし複数のオプションの売り買いと組み合わせて損益曲線を自在に組み合わせることが出来ます。
例えばコールオプションの売りは一部リスク限定型投資信託などに入っていることがあります。
仕組みが一般の投資信託と比べてさらに複雑になります。

 

投資するときの判断

この様にオプションの売りを組み入れた金融商品は仕組みが複雑です。
目先の収益も大事ですが、仕組みを十分理解したうえで、考えられる損失がいくらぐらいになるのか、そこはぜひ押さえておきたいところです。
オプションの対象が日経平均であれば、0になる可能性は無いにしても、1万円台前半ぐらいでしたら損失がいくらになるか…どうでしょうか?

そして、いくら見ても仕組みが理解できない金融商品は避けた方が賢明です。
高い収益には必ずリスクが有ります。そのリスクが分からなければ近づかないほうが無難です。 

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