学生時代の国民年金保険料、後で払わないといけないの?【2015年 第2回】

【2015年 第2回】 学生時代の国民年金保険料、後で払わないといけないの?
年金の疑問 なんでも相談

菅野 美和子 ⇒プロフィール

29歳のAさんは、大学卒業後に就職した会社での仕事にも慣れ、仕事がおもしろいと思えるようになってきました。昨年結婚し、もうすぐ子供も生まれます。公私ともに充実してきたAさんに、ある日、日本年金機構からお知らせが届きました。国民年金保険料の「勧奨状」と書いてあります。「国民年金は20歳になったときに手続きしたのに、会社では厚生年金に入っているのに、何を払わなければならないのか?」とAさんには理解ができません。

Aさんに届いたのは国民年金の追納勧奨状です。

国民年金の保険料を滞納している人に送られる催告状は、「納付しないと強制執行措置を取りますよ、だから払いなさい」というものですが、勧奨状は「納めることをお勧めします」というものです。

Aさんが20歳になったときは大学生でした。親がかりでの学生生活です。アルバイトをしていたとはいえ、国民年金の保険料まで支払う余裕はありませんでした。

「年金の手続きはした方がいいよ」と先輩に言われたAさんは、市役所へ手続きに行きました。これは国民年金保険料の学生納付特例の手続きで、「保険料の支払いを猶予してください」というものです。

猶予には、「今は払えないけれど、将来お金ができたら払います」という意味もあります。

学生納付特例が認められた期間については、社会人になってゆとりができたときに支払うことができます。あとでの支払い(追納)は10年以内となっています。10年が経過すると、払いたくても払えません。

追納勧奨状とは、猶予された保険料を払うことをお勧めするものです。追納できることを知らないかもしれないので知らせておかねばならない、追納できる期間がせまっていることも知らせておかねばならないと考えてのことです。

では、学生時代の保険料を払わなければならないのでしょうか。

追納は強制ではありません。払わなくても、法律上の問題はありません。

では、払った方が良いのでしょうか。

学生納付特例は経済的に苦しい学生時代を乗り切るのには利用してよい制度です。しかし、そのまま納付しなければ、特例期間については、老後の年金として受け取れません。払わなくてもよいけれど、その分の年金は支給しないということです。ただし、障害年金については通常どおり支給されます。

あとで保険料を払うことのメリットは、将来受け取る年金につながることです。2年分納付すれば、年間4万円弱の年金額が増えることになります。(平成27年度の額)

さてどうするか、ここから先は自分の判断です。

いずれにしても、年金だけでは老後の生活はきびしいと言えるでしょう。こういった機会にこれからのライフプランを考えてほしいと思います。

仕事、結婚、家族、家、趣味など、人それぞれ、いろいろな夢があるでしょう。それをどうかなえていくのか、先のことまで考えてみましょう。ライフプランを考えてみることにより、年金の保険料を納付するかどうか、判断できるのではないでしょうか。

なお、3年度以上前の保険料を追納する場合は、当時の保険料に加算がつきますので、納付するなら早めに納付したほうがよいとも言えます。

納付するなら、年金事務所等へ連絡を。納付書が送られてきます。

また、似たような制度として、若年者納付猶予制度があります。

学校を出たけれど就職がないどの場合は、保険料を納付するのも大変なので、保険料納付を猶予するという仕組みです。学生納付特例と、基本的には同じ仕組みです。

その他に保険料免除制度があります。これは、所得に応じて、全額免除、半額免除などの4段階があります。全額免除に該当すると、学生納付特例などと同じように、保険料を納めなくてもよいということになりますが、全額免除の場合は、追納しなくても2分の1(平成21年3月までの期間は3分の1)の年金が受け取れるようになります。

制度を利用することとその結果を、しっかり考えてみてください。

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