結婚したら専業主婦が年金でお得?【2015年 第5回】

【2015年 第5回 結婚したら専業主婦が年金でお得?】
年金の疑問 なんでも相談

菅野 美和子 ⇒プロフィール

30歳をむかえたA子さん、職場ではリーダーとしてがんばっています。A子さんの職場ではパートで働く主婦が多く、「収入調整」はよく話題になります。扶養の範囲内で働かないと、税金で損をするとか、年金で損をするとか。来年結婚を控えているA子さんは、結婚後は、専業主婦か扶養の範囲で働く方がいいのかしらと考えてしまいます。

第3号被保険者という仕組み

健康保険には扶養家族、国民年金には第3号被保険者という仕組みがあります。夫(夫と妻は逆でも可)が厚生年金に加入し、妻の収入が130万円未満、夫の収入の2分の1未満であれば、保険料を負担することなく、健康保険や国民年金に加入することができるというものです。

収入130万円未満というのは、今後1年間の見込み。課税非課税は関係なく、定期的に入ってくる収入と考えてください。パートの給与収入、家賃収入、個人年金、公的年金、雇用保険の基本手当なども入ります。

では、収入をオーバーするとどうなるかといえば、自分で国民健康保険や国民年金に加入しなければなりません。国民健康保険は市区町村によって異なりますが、月に数千円は負担することになるでしょう。国民年金は1ヵ月に15,590円(平成27年度)。

扶養からはずれると少なくとも2万円程度は、新たな負担が発生するということです。

この負担があるから、扶養の範囲でと考える人が多いのです。他にも夫の会社から配偶者手当が支給されていて、扶養の範囲を超えたら手当が支給されなくなるということでしたら、なおのことですね。

それでは将来受け取れる年金額にはどのような違いがあるでしょうか。

原則、65歳になったら国民年金から支給される老齢基礎年金は、保険料負担のない第3号被保険者であっても、毎月保険料を負担する第1号被保険者であっても、年金額は同じです。たとえば、20歳から60歳になるまでの40年間すべて夫の扶養であった妻は、1円も保険料を支払うことなく、約78万円の老齢基礎年金を受け取れます。毎月保険料を負担した人の年金額も同じです。

厚生年金に加入している人も老齢基礎年金額は同じ計算になりますが、厚生年金の保険料に見合った上乗せ年金(老齢厚生年金)があります。厚生年金に加入すれば、自分自身の年金額は増えます。

A子さんは、仕事に疲れたときは、結婚後は専業主婦もいいかなと思うこともありますが、働くか働かないかの違い、パートで働くかフルタイムで働くかの違いは、収入で考えてみる必要があります。

働き方を制限して保険料を節約できても、収入を逃しているのではありませんか。

働ける環境にあり、働きたいという気持ちがある人は、保険料以上の収入が得られれば、家計や人生にプラスになります。

平成28年10月には、パートタイマーの社会保険の加入基準が見直しされます。

現在は、働く時間や日数が正社員のおおむね4分の3で加入というパートタイマーの社会保険加入基準がありますが、法改正が実施されると、勤務期間が1年以上見込まれる人は、週に20時間以上、月収8.8万円(年収106万円)以上で社会保険に加入しなければなりません。

つまり、130万円未満に抑えて扶養の範囲内にとどまっていたとしても、パート先で加入基準を満たせば、社会保険に加入しなければならないのです。

「130万円未満だから夫の扶養のままでいたい」という話は、通用しなくなります。

新しい基準が実施される当初は、従業員501人以上の企業が対象となっていますので、多くの中小企業で働く人は対象になりません。しかし、この基準も近いうちに見直しするとなっています。やがて大半のパートタイマーが社会保険に加入するようになるのであれば、先を見越して、しっかり収入を得られるようにして準備しておくことが、のちのちプラスになるのではないでしょうか。

完全な専業主婦であれば収入は入ってきません。自分の夢、家族の夢を実現していくにしてもお金は必要です。やりくりをして残すお金と積極的に増やすお金について考えてみましょう。厚生年金加入で年金を増やすことも、今後のプラスになります。

専業主婦はお得、パートで働く方がお得という時代はだんだんと変わっていくものと思われます。

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