【2015年 第6回定年退職後は年金だけで生活していけるの?】
年金の疑問 なんでも相談
菅野 美和子 ⇒プロフィール
57歳のA子さんは、仕事にやりがいを感じていますが、親の介護もあり少し疲れぎみで、早目の退職も考えています。定年を前に早期退職した先輩から、「退職して3年で1,000万円の貯金がなくなった」との話を聴きました。定年後は年金だけでは生活できないのでしょうか。共働きのA子さんは、給料を夫婦それぞれが使うというスタイルですので、このままでやっていけるのかしらと、定年後の生活が急に心配になってきました。
二つの財布に分けてみる
定年後の生活を考えるとき、二つの財布に分けてみるとわかりやすいです。
一つめの財布は日常生活費を出し入れする財布です。
現役時代は毎月、給料が入ってきます。その給料のなかでやりくりしていれば、財布の中にお金は残るはず。お金が残っている人は、やりくりができている人で、不足してどこかからお金を足している人は、給料の範囲内でやりくりできなかったということになります。
定年退職後は、この給料に当たるものが年金です。年金額は、ねんきん定期便などで見込額がわかります。
自分の見込額で、毎日の生活をやりくりできますか?
また、年金の支給開始はいつからですか? 60歳から年金を受け取れない人が60歳で仕事を辞めてしまうと、収入がなくなるので、一つ目の財布は機能しなくなります。A子さんの先輩のように、年金受給開始前に退職して、まったく収入が入らなくなれば、3年で1,000万円の貯金がなくなるということも起こるでしょう。
二つ目の財布は、大きな出費に備える財布です。住宅の修繕やリフォーム、冠婚葬祭、大型家電の買い替え、旅行、病気や介護など、臨時にまとまったお金が必要になります。一つ目の財布でまかなえない大きな出費は二つ目の財布から出します。
二つ目の財布(貯蓄や保険など)にどのくらいのお金があるでしょうか。二つ目の財布が大きな出費をカバーしてくれれば、一つ目の財布に影響はありません。
現役時代は、ボーナスが二つ目の財布の役割を果たしていました。教育費がかかるときは子どもの授業料をボーナスで支払ったり、家電や家具はボーナス時で購入したり、旅行にいったり、貯蓄にまわしたり、いろいろと活用できたでしょう。
退職後はこのボーナスがなくなります。定年前に、しっかり二つ目の財布を用意しておくことが必要です。
気をつけておきたいのは毎月の不足分。一つ目の財布に毎月不足が生じれば、二つ目の財布から補充していくことになりますので、しだいに二つ目の財布も危うくなっていきます。
定年後の暮らしを考えるときには、一つ目の財布に入ってくるお金(=年金)、二つ目の財布に入ってくるお金(貯蓄など)をしっかり把握しましょう。
まずは、年金の範囲内で生活していけるかどうかです。共働き家庭、会社員と専業主婦の家庭、シングルの人など、それぞれで環境は違いますが、入ってくる年金を確認しましょう。
公的年金については、今後、年金の水準が大幅に伸びていくことはないと思われます。なぜなら、平成27年度から「マクロ経済スライド」が導入されて、平均余命が伸び、保険料を負担する若い世代が減少すると、年金額が下がる仕組みになっているからです。
当分の間、物価の上昇に合わせての年金額増は期待できないと思います。年金以外に、一つ目の財布に補充できるものを検討し、二つ目の財布に、安心できるような金額を確保しておくことが必要です。
「老後の生活が心配」と言われる人も多いですが、どこから考えてよいのかわからないということもあるようです。こんなふうに整理して、退職後の準備をはじめませんか。もうすぐ60歳でまにあわないと思う人も、働く期間を延ばせば、かなり改善できるはずです。
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