【2013年 第2回 天候相場と需給相場】
リカが教える♪金融商品としての「穀物」
三次 理加 ⇒プロフィール
大豆やとうもろこし、小麦など穀物の相場は、「天候相場期」と「需給相場期」に分けられるという特徴があります。
「天候相場?!雨や晴れで相場が上がったり下がったりするのでは、素人にはわからないよ。穀物相場って、玄人向けなのね。」な~んて声が聞こえてきそうですね。
しかし、よく考えてみてください。例えば株式投資の場合、今年が猛暑予想であれば「今年は暑くなるみたいだからビールが売れるだろう。ビール関連会社の株を買おう。」といった投資行動に出るのではないでしょうか?このように考えてみると、天気から相場の将来を予想することについて、さほど難しく構える必要はない、とも思えませんか?
天候相場
穀物の天候相場期における投資行動も、基本的には前述の株式と同様です。ただし、「暑ければビールやアイスが売れる。」と同様に、いつ、どのような天候になれば豊作(または不作)になるのか、といった基本を理解しておく必要があります。
「天候相場期」とは、作付けから収穫までの時期をいいます。この時期は、穀物生産地の天候に一喜一憂する相場となります。(図表1参照)
図表1 クロップカレンダー
作付(黄緑色)と収穫(黄色)の間(白抜き)が「天候相場期」、それ以外が「需給相場期」
資料:「海外食料需給レポート2011」/農林水産省 を参考に執筆者作成
穀物の主要輸出国(注1)は、大豆は米国・ブラジル・アルゼンチン。とうもろこしは、この3カ国に加えウクライナ。(注2)小麦は、米国、豪州、ロシアです。
近年は、南米・ウクライナ・ロシアなどの穀物輸出量が増える一方、米国の穀物輸出量は鈍化傾向がみられます。とはいえ、米国は、依然として世界最大の穀物生産・輸出国。特に、米国におけるとうもろこし・大豆の生育期にあたる6月から9月半ばまでの日照時間と降水量によって世界が豊作にも不作にもなる、といっても過言ではありません。この時期に十分な日照と降雨に恵まれれば豊作の期待が高まり、相場は下落する傾向があります。逆に、長雨、日照不足、低温などの天候不順に見舞われると、不作見通しから相場は上昇する傾向があります。
また、米国中西部の農家は、大豆・とうもろこしを輪作します。加えて、大豆、小麦、とうもろこしは、競合作物の関係にあります。そのため、たとえば天候不順により、とうもろこしの作付けが遅れ大豆への転作予想が生じれば、大豆の作付面積増加予想からとうもろこし高・大豆安となります。
注1:資料「海外食料需給レポート2011」/農林水産省
注2:以前は、とうもろこしの世界輸出トップ3は、米国・アルゼンチン・ブラジル。しかし、ウクライナは、とうもろこし及び穀物全体で史上最高の豊作となったことから、輸出量が前年度より2.4 倍となり、2011/12年度にブラジルを抜き、米国、アルゼンチンに次ぐ輸出国となる見通しである。
需給相場
穀物の収穫がピークを迎え、市場に出回る時期になると「需給相場」がスタートします。
この時期は、需給バランスで相場が変化していきます。収穫が完了した段階で、供給量はほぼ決まっています。その収穫された穀物を、次の作付時期までにどれだけ消費するのか、輸出されるのか、在庫がどれだけになるのか、が変動要因となります。天候相場が生産高、つまり供給主導の相場であるのに対し、需給相場は消費・在庫主導の相場であるといえます。
また、米国農務省(USDA)が毎月10日に発表する世界需給予測が重要となります。同予測には、世界中の市場関係者が注目しています。
なお、本来、穀物の需要は大きくは変動しないものでした。ところが近年は、とうもろこしから作るバイオエタノール燃料、大豆から作るバイオディーゼル燃料向けという新たな需要が生まれました。また、アジア・アフリカなど途上国の人口増加や経済発展に伴う食料需要の増加傾向に加え、肉類消費量の増加に伴う飼料用穀物消費量の増加傾向がみられるなど、穀物の需要面が大きく変動しています。
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