【2015年 第3回 「配偶者控除」が見直しされるとどうなるの? これからの働き方について考えてみませんか?】子育て主婦のためのマネー講座
合田 菜実子 (ゴウダ ナミコ)
みなさんこんにちは! マイアドバイザー®jp登録ファイナンシャルプランナーの合田菜実子です。 今回は 「子育て主婦のためのマネー講座」 “家族のことで毎日忙しくて、お金のことを考える余裕がない” という方のために、知っておきたいお金の話を4回連載でお送りします。
第3回目のテーマは 「配偶者控除」
第3回目のテーマは 「配偶者控除」についてです。「配偶者控除の見直し」といった新聞記事などをよく見かけますが、見直しされるとどんな影響があるのでしょうか?
まずは、配偶者控除とは?
専業主婦、パート主婦などをしている世帯で、妻の収入が一定額以下ならば、夫の所得税を計算する際に控除が受けられるため、夫が支払うべき税金の負担が少なくなるというしくみです。
パート等で働く女性たちの間で
「103万円以上働くと税金が多くかかるから、年間でこれをオーバーしないように調整しているのよ!」
という会話を耳にすることあります。
実際そのとおりで、妻の給与収入が103万円を超えると、妻自身が税金を払う義務が発生するとともに、夫の所得から差し引いてもらえる配偶者控除が受けられなくなるため、妻も夫も税金が増え、世帯単位で考えても税負担が大きくなるのです。
最近は、総理大臣の安倍さんが「一億総活躍社会」とか「女性の管理職を増やそう」など声高に
叫ばれていますが、この「配偶者控除」等の制度が、政府の方針である「女性の社会進出の促進」を妨げる要因になっているということで、見直しが検討されているのです。
☆現状の仕組み
「配偶者控除」が受けられないと具体的にはどういう影響があるのでしょうか?実は、妻の収入が103万円を若干オーバーしても、超えた分に税金が課税されるだけですので、ご自身の払う税金が急激に増えることはありません。それ以上に心配なのは、夫の収入に与える影響です。尚、妻の年収が103万円超141万円未満で、かつ夫の合計所得金額が1,000万円以下の場合は、夫の税金を計算する際に、妻の収入が増えると段階的に減っていく仕組みである「配偶者特別控除」を受けることができます。
まずは、現状の仕組みを理解するために、妻の収入が103万円以下の場合と、141万円超の場合で夫の支払うべき税金の額を比較してみましょう。
[基礎控除・配偶者(特別)控除の仕組み(イメージ)]
※税金計算を分かりやすくするために、社会保険料やその他の控除などについては考慮していません。
※所得税の計算式に関しては、国税庁のサイトを参照して下さい。
[給与所得控除]
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1410.htm
[所得税の速算表]
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm
妻の給与収入が141万円超(B)になると、103万円以下の場合(A)と比べて、夫の所得税が7.6万円(34.85万円-27.25万円)多くなります。
つまり、現状の仕組みでは、
「妻が沢山働くことによって夫の支払う税金がアップする=妻の収入が少ない世帯の方が優遇される」
そんな税制になっているのです。
もし「配偶者控除」「配偶者特別控除」が廃止されたら、「妻の収入が夫の税金に与える影響」がなくなるため(A)(B)パターンのいずれも、夫の税金の額は同じになります。
☆これからの働き方を考えてみよう!
女性の社会進出を促進する政策が進む中、この制度が女性の働く意欲を阻害しているのではないかという認識から、ここ数年、この制度の見直しが検討されています。
これと同じような流れで、企業が専業主婦世帯などに支給している「配偶者手当」(家族手当等)の制度も、トヨタ自動車が廃止するなど、民間企業でも見直しする方向で話が進んでいます。「配偶者手当」に関する配偶者の年収要件は「103万円」や「130万円」など企業によってばらつきはありますが、これらの壁を超えても夫の手取りが減らないような仕組みに変えるように経団連が企業に対して呼びかけています。
「配偶者(特別)控除」「配偶者手当」は、見直し、廃止の方向で進んでいますが、まだ決定事項ではありません。ただ、大きな時代の流れとして「専業主婦やパートで働く人」への優遇策は縮小傾向にあります。
「女性の働き方」は大きな転換期にあります。「優遇策がなくなってからどうしよう?」ではなく、これからの長い人生「自分がどんな働き方をしたいのか?」「どうお金と付き合っていくか?」について、今、皆さんそれぞれがしっかり考えるべきときが来ているのではないでしょうか?
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